日曜日

隼(ハヤブサ)

日曜日

鈴木は苛立っていた。

行こうとしていたレストランが、閉まっていたのだ。


当然、彼女はおかんむり。

「前から思ってたけど、鈴木君って段取り悪いよね」


デートプランを全部俺に丸投げしてきたくせに、何言ってんだ。

そうぶつけないだけの自制心はあったが、顔には出ていたらしい。彼女は「私、今日は帰る」と言い、ヒールの音を響かせて去って行った。


彼女の背中が見えなくなるまで待ってから、鈴木は苛立ちに任せて小石を蹴飛ばす。

が、その直後に青ざめた。

目つきの悪い、ヒゲを生やした、スキンヘッドの男ー要するに最も喧嘩を売りたくないタイプの人間に、その石が当たったからだ。


「オイコラお前!そこのお前だよお前!悪いことしといて、謝ることも出来ねぇのか!?何とか言え!!」


鈴木はすっかり慌てふためき、「す、すみませんでした」と口の中で呟くと、一目散に駆け出した。


走って走って、地下鉄への階段を駆け下りる途中で足を踏み外し、派手に転んで足をくじく。

気の毒そうな顔をした駅員に肩を貸してもらって地上まで戻ると、タクシーを捕まえて家に帰った。


予想外の閉店。予想外のトラブル。予想外の怪我に予想外の出費。

「本当に、最低な日曜日だ」








佐藤は目を見張った。

行こうとしていたレストランが、閉まっていたのだ。


「まあ、仕方ない。今日は1人だし、せっかくだから、この辺をぶらぶらしてみるか」


10分ほど散策すると、雰囲気のいい居酒屋を見つけた。

メニュー表に大好物の「ワカサギのフライ」と書いてある。

佐藤の心は躍り、早速中に入った。


「ワカサギのフライ1つ」

「あー、すみません。今日、もう切れちゃったんですよ」


すっかりワカサギの口になっていた佐藤の顔が曇る。

「じゃあ、今日のおすすめは?」

「今でしたら、寒ブリの照り焼きがおすすめですよ」

「じゃあ、それと熱燗ね」


寒ブリが運ばれてきて、一口食べてみる。

「…うまい」

今まで、あまり食べたことがなかったけど、こんなにうまかったのか。


気づいたらたくさん食べ、たくさん飲んで、伝票を見てびっくり。

「1人でこんなにすることある?」


店を出て駅に行くと、人だかりができていた。

「人身事故により運転見合わせ」の文字が、電光掲示板で踊っている。


佐藤は、明日仕事だ。あまり遅くなりたくはない。

「…タクシーで帰るか」

タクシーの中では、酔いも回って寝てしまった。


帰宅後、佐藤はぼんやりと一日を思い返す。

新しい店を見つけて、美味しい照り焼きを食べて、心地よいタクシーで帰ってきた。

佐藤はにこりと笑う。

「本当に、いい日曜日だったな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日曜日 隼(ハヤブサ) @hayabusa_0201

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ