視点

隼(ハヤブサ)

視点

「お前、あいつんとこから抜けろ。そんで、コンビニのバイトやれ」


ぼくらの窃盗グループから足を洗った先輩は、補導されたぼくにそう言った。

先輩は、コンビニ、ドラッグストア、本屋のバイトを掛け持ちしている。


「…え?なんでっすか」

「接客業はいいぞ。今まで見えなかったものが、見えるようになる。…特に、俺たちのような人間にはな」


先輩は、過去を恥じるようにうつむいた。

そばではすっかり顔なじみになった警官が、強くうなずいている。


元々ぼくは足手まといの部類だったから、グループを抜けるのにさほど問題はなかった。

大変だったのは、コンビニのほうだ。


目を合わせるのも苦手、大声を出すのも苦手、重いものを運ぶのも苦手なぼくがコンビニで働くなんて、適材適所の正反対だ。


はじめは最悪だった。

レジを間違え、品物を落とし、柄の悪い客に怒鳴られる。


だんだんコツをつかんできた頃、裏の防犯カメラを凝視していた店長が、店内に飛び出した。

一緒に見ていたぼくも、後を追う。


「放せ!放せよ、クソオヤジ!」

「万引きは犯罪なんだよ。警察に通報する」


店長に取り押さえられているのは、かつての仲間だった。

ぼくに気づいた仲間は言う。


「てめえ、こんな所でいい子ちゃんぶって働きやがって」


そして唾を吐いた。


仲間を裏へ引きずって行く店長が、

「お前、二度とこうなるんじゃないぞ」

「…はい」

ぼくは低い声で答えた。

ぼくはもう、かつての仲間とは違うんだ。






「先輩、わかりましたよ」

「おう、やっとお前にもわかったか」


先輩は歯を見せた。





「先輩、バイト始めてから、一度も捕まっていませんよね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

視点 隼(ハヤブサ) @hayabusa_0201

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ