第2話 魔法の儀
スタンピードは父達ベスティア家の兵士と地元の冒険団によって何とか食い止められた。
しかし、街は完全に無傷とはいかなかった。
怪我人、そして外壁の傷。とはいうもののほかに目立った被害はなかったので軽微だったと言えるだろう。
最初はぎこちなかった街の住民たちも2週間も経てば、いつもの活気ある街並みに戻っていた。
しかし、ベスティア家は慌ただしかった。
――というのも後処理、王国への報告など、貴族としての対応で山積みだった。
父は王都にでかけたりと大変だったが、その風どこ知らず。
私にとってはいつもと変わらない日だ。
今日も鍛錬に裏の森へと向かった。
ひとつスタンピードの被害があったとすれば、私の庭にすっかりとモンスターが減ってしまったことか……
森の木を蹴りながら、探索を続けていた。
周囲を回っているとそこにいた――――
「見つけた!!」
久々の獲物に思わず笑顔となった。
獲物の正面に着地した。
そこにいたモンスターは巨大なイノシシ。優に高さだけで5mはあるだろうか?
グレートボアというモンスターである。
正面にどうどうと着地したからか、すぐにグレートボアはこちらに気づく。
というか意図的に気づくように着地したのだが……
グレートモアはすでに臨戦態勢でセフィーリアを威嚇していた。
大きな雄たけびを上げる。
セフィーリアは構えをとる。
グレートボアはそのまま猛突進――
セフィーリアは軽くジャンプして、額に蹴りを叩き込む!!
グレートボアはその蹴りの衝撃で吹き飛んだ。
しかし、すぐに起き上がる。
「さすがに頭蓋は丈夫か」
再び起き上がり、グレートボアは再突進――
「所詮は獣か……」
セフィーリアはグレートボアの方へと走り、そのまま下をくぐるようにスライディングをする――
腹部あたりでセフィーリアの蹴り上げる。
グレートボアは宙へ飛ばされた。
セフィーリアは飛び上がり、グレートボアの腹部に思い切り、拳を叩き込んだ。
その拳はグレートボアの体内に伝心し、体内に渦を作っていく。その渦が無数に広がっていき、グレートボアは空中で飛散した。
飛散した血肉が雨になって、セフィーリアに降り注いだ。
「うむ。まぁまぁだな!!」
そうだ。肉はちゃんと持って帰らないとな。フィリニャの機嫌が良くなるかもしれないし。
そう、殺生をしたからには糧にするべきだ。
手刀で肉を切り裂いていく。その肉をある程度の大きさにして持って帰る。
いつものように塀を飛び越えて、屋敷にもどる。
着地した瞬間――
「ばれちゃったか……」
「ばれちゃったかじゃありません! また勝手に森へ行きましたね!?」
着地地点のすぐそばに仁王立ちでフィリニャが待ち構えていた。
「は、はい……」
「その真っ赤な姿は何ですか!! 常軌を逸してますよ!! 普通の子供なら泥だらけとかなのに…… お嬢様は血みどろです」
「てへっ!」
「てへっでごまかさないでください! いいですか? お嬢様! あなたは伯爵家の令嬢ですよ? この国の領主の娘です。そんな人が毎日血みどろでいるところがすっかりと噂になってしまっていますよ……」
「噂……?」
「うちの領主の令嬢は血だらけの殺人狂ではないか……とか」
「そういうのは気にしない」
「普通は気にしないとダメなんです!」
「あ~~~、これ旦那様に何て報告すれば……」
「落ち着いて、フィリニャ、これあげるから」
「何ナチュラルにモンスターの肉を渡そうとしてるんですか!! ってどこからつっこんでいいか分からないじゃないですか!」
フィリニャが苦労していることは分かった。だが、私にとっての第一は鍛錬。
これだけは譲るわけにはいかない!!
「フィリニャが何と言おうと私は行く」
「――はぁ。じゃあ、次からは、せめて私を連れて行ってください? それならぎりぎり許可します」
「いいの?」
「お嬢様を止めるのはもう諦めました。勝手にいかれるよりは100倍マシです」
「わかった。これからはよろしくね」
「はぁ……。全然わかってくれてないなぁ……」
フィリニャは頭を抱えるのであった。
――――――
――――
――
その日父が帰ってきた。
そして久しぶりの家族での夕食の団欒となる。
父と母――、2人の兄とセフィーリアは食事の為、席についていた。
遠征に行っていた父をねぎらってだろう。従者から腕によりをかけた料理が運ばれてきた。
スープなども父の好物が作られていたが、父が特に気に入ったものは――
「ほぉ、今日の肉はうまいなぁ。この肉はいったい何だ?」
アダンが口を開く。その言葉に母や兄たちは硬直した。
「ん――――?」
場の空気が何かおかしいことにアダンは疑問を浮かべた。
しかし、この空気の言うままにはいかない。
しぶしぶ、母のアリシアが口を開く。
「グレートボアです……」
「ほぉ、滅多に手に入らないグレートボアの肉を使うとは贅沢な――、このような上質な肉は店には滅多に並ばない。っとなるとギルドに依頼して確保したのか?」
「………………」
「――ん?」
「せ……、セフィーリアです」
「どういうことだ?」
「だから、この肉を仕入れたのはセフィーリアです」
「ほぉ、良くこんな肉を仕入れたな。我が子ながらすごいぞー」
しかし、その言葉をかき消すぐらいにアリシアは言った。
「だから――――、グレートボアを仕留めたのはセフィーリアです!!」
「はっ?」
「しかも、仕留めただけでなく解体も……」
「何の冗談だ。グレートボアを仕留めるのはそこそこ強い騎士が数人がかかりでやっとというものだぞ?」
「冗談ではありません……、今日だけではなく、ここのところ毎日魔獣の肉を持って帰ってきます。血だらけになって……」
アリシアはそう話しながら、セフィーリアに視線を送った。
「セフィーリア、本当か?」
「はい……」
「あはははっ、これは笑うしかない!」
「あなた! これは笑い事じゃありません!! セフィーリアが街で何て呼ばれているかわかります?
「まぁ、子供の頃はお転婆なことはよくあることだ。魔法の儀や社交デビューすればある程度は落ち着いてくるだろうさ」
「はぁ………………」
アリシアは頭を抱えていた。
――――――
――――
――
ある日のことだ。
セフィーリアはめずらしく、座っていた。
「お嬢様、何をなさっているのです?」
フィリニャが近づいてきた。
セフィーリアの視線の先をフィリニャは見た。
「騎士団稽古ですか。お嬢様って剣術にも興味があるのですか?」
「んー、一応はね」
フィリニャはセフィーリアの横に座って一緒に眺めていた。
………………
しばらくして、騎士団の指南役がセフィーリアの元に近づいてくる。
「これはこれは、お嬢様。騎士団に興味がおありで?」
「えぇ、ぜひとも体験させていただきたいわ」
「お嬢様、なりません! 怪我などをしたら――」
「お付きのメイドの方、それは大丈夫だと思います。せいぜい素振り程度ですので……」
そんなこんなでセフィーリアは騎士団の剣術訓練にまざるのだった。
お嬢様、まずはこの木剣を振ってみてください。
セフィーリアは借りた木剣を振り上げて、振り下ろす――
ただ、それだけの行為。しかし、剣術指南役が目を輝かせていた。
セフィーリアの剣を一刀振る姿を剣術指南役は感嘆していた。何一つ無駄のない動き、これほどの動きをできるものはここにいるだろうか?
それほどに洗練されていた。何十年振るったらこの領域に達することができるのだろうか?
剣士としての天才――
「お嬢様!! ぜひともお願いがあります。うちの騎士と試合をしてみませんか?」
「なりません! それは――」
「えぇ、ぜひとも!」
フィリニャは頭を抱えた。
そしで、あっという間に試合へとなった。
騎士は6歳の少女が相手だ。さすがに甘く見ていた。
周りからは「ケガさせたら死罪だぞ」などというヤジも入っている。
「双方、構え――」
2人は木剣を構える。そして――
「始め――!!」
舐めていたのだろう騎士は気迫に押されていた。
そして――
セフィーリアがわずか数秒で面をとる。
周りの騎士の面々は信じられないという顔をしていた。
――――――
――――
――
セフィーリアは7歳の誕生日を迎えた。
これにより、魔法の儀を受けることとなる。
魔法の儀――――7歳になったときに必ず行われる儀式だ。
この儀によって、魔法の開花、才能の有無などが分かるようになっている。
それよって、今後の実の振りが大きく決まる者が多い。
この世界は魔法で全てが成り立っている。つまり、全ては魔法次第でなんともなる世界である。それこそ、1代で貴族になることも可能である。
「私の娘だ。魔法力はそこまで強くなくてもいいと思うが、実に楽しみだ」
父アダン、母アリシアが外出用の服を着ている。
そして――、セフィーリアも余所行きのドレスを着せられた。
正直、フリフリは得意じゃないのだが……
そして、魔法の儀を行う教会へと向かった。
教会につくと、特に人はいない。
父が協会の関係者に話をすると中へと案内された。
貴族という立場だからだろう。中に特に他に儀式を受ける子はいなかった。
「さぁ、神父の元へ――」
まっすぐと歩いていき、奥にあるステンドグラスの光が入る場所。
祭壇に神父が立っていた。
「さぁ、手をかざして――」
神父がそう指示をだす。目の前には水晶が置いてあった。
セフィーリアは神父にいわれるがまま手をかざした。
全身が光に包まれた――
そして――
光は消えていく。
しばらく、神父は無言になっていた。
「神父――、うちの娘はどうでした?」
「………………」
「神父様!!!」
「えっ……はい、なんというやら……」
「どういうことです?」
「実は……魔法適性……ゼロでございます……」
「そんなはずは!?」
「いいえ、ゼロとなります。こんなの見たのはわたくしも初めてでして……」
「そんな……」
どうやら私の魔法適性はゼロのようだ。
使ってみたかったのに残念。
私としては大した問題ではなかったが、周囲の空気はかなり悲壮な顔を浮かべていた。
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