指2本の幸福
岩館
個人的ノーベル賞
私は高校で部活動をやっている一般人です。その何気ない日々の中で、幸福を得たお話。
-指2本の幸福-
ある冬の寒い日のこと。
いつもと同じように学校が終わり、部活が始まる時。
練習着はあるが、ウィンドブレーカーを忘れたことに気づく。
仕方なく半袖長ズボンの装備で練習をすることにする。
今日は特段に寒い。
それに外で行う部活なので風も冷たい。
いくら運動部といえど、発熱量と外から奪われる熱の量が違い、体温が少しずつ下がっていくような気がする。
また、私は末端冷え性とかいう冬に相性が最悪の人なので、手足の指先の感覚がなくなってきた。
全ての指が痛い。
寒い。
カイロなんかもなく、体を動かしてなんとか耐え凌ぐしかない。
こんなに寒く、指の感覚もない状況で塾に行く気力もなく、家に帰ることにする。
これが地獄の始まり。
家まで約10km。学校との高低差が150m以上。
そんな帰路をクロスバイクで泣く泣く帰る。
もちろん、自分の近くの家の人らは電動自転車。
なぜクロスバイクにしたのかと、過去の自分に文句を言いつつペダルを漕ぐ。
クロスバイク。
片道50分。
山道。
この3コンボ。これは通常通り。
冷え性も相まって、足の感覚が痛みしかない。
霜焼けかなと思い、見てみると内出血。
おそらく血管が寒さで切れたのだろう。
痛い。
向かい風。
内出血。
部活での疲労。
この三重苦。
家まで残り2km。痛みがひどいので自転車を降りて歩くことを選択。
最後の上り坂2km。あと100m+α上らなければならない。
ローファーとの圧迫感も相まって、痛みはヒートアップ。体温はヒートダウン。
上り坂のせいで足が進まない。
一歩一歩進むたび痛みが走る。
コンビニで暖まろう。そう決意しなんとか足を進める。
なんとか登りきり、家から500mぐらいの最寄りのコンビニに迷うことなく入る。
一直線に。
入ったのはいいものの、何を買うか。
アイス? ドリンク? 論外。
冬だぞ。
温まるものを買いたい。
ふとレジを見る。
そこに見るからに温かそうなチキンが置いてあった。
かの有名な黄色のストライプの袋のチキン。
食べたい。
齢17年、初コンビニチキンの購入を決意。
手ぶらでレジにつき、店員にチキンを購入することを伝える。
お金を払う。
店員さんがチキンを取る。
受け取る。
暖かい。
店内のイートインスペースで食べようか悩んだが、歩きながら食べよう。
右手に自転車。
左手にチキン。
袋を開け、一口。
揚げ物のテンプレである
「サクッ。ジュワッ」を実感。
「ホクッ。」も実感。
手袋越しに伝わる温もり。
左手の指の感覚が戻ってくる。
美味しい。
温かい。
幸せの味がした。
でも足の指は痛い。
それ以上においしくて涙が出た。
「うまい。おいしい。あたたかい。」
泣きながらこれを繰り返し、食べながら歩いていた。
2時間弱の苦難の末、チキンを食べ1人泣きながら家に着いた。
チキンのおかげで無事、家についた。
家に帰って激痛の原因の指を確認。足の指が内出血。
しかも2本も。
この指の痛みは生涯で初めて。
そして、チキン。
この味は一生忘れられない。
言葉にするには勿体無い。
でも、強いて言うなら辛いことを乗り越えた安堵と、チキンと出会えた多幸感。
指の痛みをこえる幸せ。
このためなら指2本は安い。
ただ、また犠牲にして味わいたいか?
と、聞かれるとNoだけど、これを超える幸福はないと思う。
コンビニをここに支店に出そうと言った人。
ありがとう。
コンビニのチキンを発明した人。
ありがとう。
ノーベル賞ものだと思う。
指2本の犠牲で得た大きな幸福。
-Fin-
読んでいただき、ありがとうございました。
指2本の幸福 岩館 @peteron
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます