800字短編小説

Leehepa

第1話 隣のお兄ちゃん

「わあー、あー、ああー」


回っている扇風機に口を当てて声を出すと、機械のように変調された声が返ってきた。昨日見たアニメに出てきた悪役ロボットの声みたい。それが不思議で面白くて、ホンセは何度も扇風機に話しかけた。わあー、ああー、パク・ジョンチャンの、ばーか、まぬけ、とんちんかん、おたんこなすー。


「ホンセ」


扇風機に向かって、幼稚園で自分をいつもからかってくる男の子の悪口を言っていたホンセが振り向いた。ホンセの後ろには、この家の息子であるユリブが立っていた。ユリブは両手に持っていたお盆をホンセの隣に置いた。お盆には、ブドウジュースとお菓子屋さんで売っているクッキーが載っていた。


「これ、食べて」


ユリブはそう言ってソファに座り、ホンセが来るまで読んでいた漫画本を手に取った。ホンセはブドウジュースの入ったグラスを両手で持ち上げた。先週遊びに来た時はトマトジュースだったのに。あの時、ホンセがトマトジュースを飲んで「うえっ、まずい」と言ったのを覚えていたみたい。ブドウジュースは、ホンセが一番大好きな飲み物だった。


ホンセは口にコップを運んだ。ゴクッ、ゴクッ、と液体が喉を通る音がした。「ぷはぁー」。


少女の軽快な感嘆の声に、いつの間にか彼女を見ていた少年が思わず笑い声を上げた。ユリブが笑うと、ホンセもつられて笑った。ブドウジュースで作った紫色のヒゲをつけて、へへへと笑った。ちらりと見える前歯は、二本も抜けていた。ユリブは漫画本を置いて、ティッシュでホンセの口元を拭いてあげた。口元に浮かべた微笑みと同じくらい、優しい手つきだった。


ホンセはユリブお兄ちゃんが好きだった。家に遊びに来るたびに甘いジュースを出してくれるのも良かったし、静かに本を読む横顔が綺麗なのも好きだった。ユリブお兄ちゃんは、ひまわり組のいたずらっ子、パク・ジョンチャンとは比べものにならないくらい大人だった。


どうしてお母さんは、ユリブお兄ちゃんを産んでくれなかったんだろう? 彼女は時々、少年の妹になりたいと思った。そうして、この家で一緒に暮らしたかった。そうすれば、お兄ちゃんと毎日毎日遊べるのに。


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