物語のカケラには

夜烏

子供でも

「大会おつかれぇ〜!」

髙野の音頭で突き合わせる飲み物カップ

長い時間居たいと思えない学校から遠く離れて、放課後

いつも通り、、、よりかは少し嬉しそうな表情を眺めながらポテトと炭酸ジュースを喉に流し込む。

先日、我々 ”華成学院電遊部” はとある大会に出場。

プロチームに大差をつけて圧勝を決めた。

まだ決勝リーグで勝った訳では無いがたまには贅沢も良いだろう、という部長の我儘を聞き入れて打ち上げを口実に部活を抜け出してきた。

「いやぁー、まさかあの立ち回りで勝てちゃうとは」

目の前に居る普通の男子より顔立ちがよく見える部長の髙野蒼は、炭酸ジュース片手に年相応の笑みを浮かべる。

「あれはもう力技だろお前。後半のキャラコン化物じみてたからな?」

ポテトを持ったままつられて笑う俺、望月愁斗

今回の大会は規模が大きいわけでもなく参加を決めたのも好奇心からだったから、特に優勝を絶対目標としているわけでもなかった。

、、、気が、変わらなければ

”コイツら高校生かよw どんなトンデモプレイ見せてくれるんだか”

嘲笑と、皮肉を混じらせた言葉。

飽きるほど味わってきた苦みを、大好きな世界で味わったあの時間

キレた髙野を止められる権利も技術も、俺には持ち合わせているものがなかった。

「いやー、にしてもおっさん達の顔! 愉快だったなぁ〜w」

「面白かったけどさぁ、、、良いのかね、初出場であんなかき乱して」

見下してた奴らをボコボコにしたときは確かに爽快感抜群だったが、今後も”楽しく”ゲームを続けるなら、媚び売ってでも負けといたほうが良かったんじゃないかなと思ってしまう自分も居たりする。

「、、、そんな生き方、つまらなくねぇ?」

不意に聞こえた言葉、それは自然と下がっていた顔を再び上げさせるには十分だった。

俺とは違った苦しみの中で生きてきた目の前の親友は、年頃の”女子高生”に似合わない勝ち気な言葉を並べる。

「我慢なんてしてたらさ、楽しく、、、自分らしくゲームなんて出来るわけなくない?」

ポテトを持ったままの手でそう聞いてくる親友であり、部長の純粋な想い。

真顔から、静かな笑みへと表情を変えて言葉を続ける。

「子供だからって、周りに媚びる必要なんて無いんだよ」

笑みを携えたままポテトを口に頬張る彼女のことを、多分俺は理解できないまんまだろう。

でも、それでも。

この数ヶ月で変わっている自分が、確かに此奴の隣に居るのも事実で。

「まぁ、、、そんなもんか」

からん、と音を立てて氷の溶けた炭酸ジュースを傾けながら。

重くは考えずに、自分の中での答えを出す。

「軽く考えときゃいーんだよ、大人だって人生一周目だ」

子供の言ってること、なんて軽くあしらうやつはここに居ない。

緩やかな、しかし確かに意味のある時間だけが水のように流れていく。

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