勇者を目指してるのに、パーティメンバーに止められるんだけど!?

薄明常世

第1話

朝は、いつも通りに来た。


だから僕は、その日が特別だなんて思いもしなかった。宿屋の天井を眺めながら、昨日のことを思い返す。


成り行きで組んだパーティだけど、雰囲気は悪くはなかったと思う。むしろ、僕としては上出来だって思った。


金髪武闘家のリーズ。

黒髪魔法使いのミリア。

銀髪僧侶のセリス。

そしてリーダーの僕。


良いバランスだと思うし、これなら冒険者ギルドの依頼もこなすことができる。


そう思った。


「……起きてる?」


宿屋のドアが控えめにノックされて、声がかかる。

この声はリーズだな。


「はいよ。起きたからいま出るよ」


そう返した瞬間、何故か扉の向こうで小さく息を呑む気配がした。

……僕の気のせいかな?


流石に女の子を待たせてはいけないと思って、素早く身支度を整えて部屋を出ると、廊下には昨日パーティを組んだ3人が並んでた。


「おぅ……みんな待ってたんだ。待たせてごめん」


精一杯の申し訳ないという表情をした僕に対して、


「…………」


みんな僕を見て固まっている。


「えっと……どうしたの?」


リーズが一歩近づき、俺の腕を掴んだ。


「え?」


強いっていうか痛い!!

驚いて視線を向けると、彼女は僕の顔をじっと見つめている。


目の動きが……まるで生きているかを確認するみたいに。

ミリアやセリスも同様に僕をジロジロと見ている。


「……っ」


はっとしたように手を離し、彼女は俯いた。


「ごめんなさい……その……」


「いや、いいけど」


首を傾げる僕の横で、ミリアが静かに言う。


「朝食、もうすぐ。早く行こう」


声音は落ち着いている。でも、その手は微かに震えているように見えた。


食堂に向かう途中、セリスが不意に言った。


「……今日は、無理しないでください」


「?」


「昨日は初めてのパーティで消耗したと思うんです」


「いや、そうでもないけど」


昨日と言えば、パーティを組んだから、森の手前で試しで戦ったんだった。


初めてだったから最初は噛み合わなくてぎこちなかったけど、戦闘を重ねて帰る前には、声をかけながら動くことができていた。


自分としてはあまり疲れてなかったから、正直に答えたけど、彼女の表情が一瞬、歪んだ。


「……そう、なんですか」


それ以上、何も言わない。

でも、その距離はやけに近い。


食堂で席につくと、三人は自然に僕を囲む位置に座った。

逃げ道を塞ぐような、そんな配置。


「……昨日はありがとう」


ミリアが、唐突に頭を下げる。


「え?」


「パーティを組んでくれて」


「ああ。別に大したことじゃ」


「違う」


彼女は、かぶりを振った。


「……本当に、ありがとう」


その声には、重すぎるほどの感情が滲んでいた。


何だ、この空気。


「なあ」


僕は少し冗談めかして言う。


「まだ一日目だから、そんなに改まらなくても……」


その瞬間、三人の表情が、同時に強張った。


リーズが、唇を噛む。

セリスは、視線を逸らす。

ミリアは、卓の下で拳を握り締める。


……地雷、踏んだ??


「なんか……ごめん」


そう言うと、リーズが慌てて首を振った。


「ち、違うの! そうじゃなくて……」


「……いい」


黒髪の少女が遮る。


「朝食、冷めるから、先」


ぎこちない空気のまま、食事が始まった。

食べながら、僕は考える。


昨日まで赤の他人だったはずなのに、朝の彼女たちの態度はまるで……長い間、僕を知っているみたいだった。


ぎこちない食事の後、外に出るとリーズが僕の前に立った。


「今日の予定だけど……前に出るのは、私たちがやるから」


「えっ、僕も……」


「ダメ」


即答だった。


ミリアが続ける。


「あなたは後方待機」


「いやでも、それじゃ」


「いいから」


ミリアの声は、静かだが有無を言わせなかった。


「なんだそれ……まるで僕が……」


言いかけて、やめた。

なぜか、その先を口に出してはいけない気がした。


三人の視線が、一斉に僕に集まる。

その視線がとても怖い。


「……僕って信用ないのかな?」


冗談のつもりだった。

なのに。


「違う!」


リーズが、声を荒げる。


「逆! 逆だから!」


「……あなたは」


ミリアが、絞り出すように言う。


「自分が思っているより、ずっと……」


そこで言葉を切り、彼女は深く息を吸った。


「……何でもない」


沈黙。

僕は肩をすくめ、


「分かった。今日は後方で待機するね」


そう言うと、三人は同時にほっとした顔をした。


それを見て、胸の奥がざわつく。


(……なんなんだ)


まるで僕がいなくなる前提で扱われているみたいじゃないか。


そんなはず、ないのに。パーティを組んだのは、昨日だ。

今日が始まりのはずだ。


なのに……それなのに彼女たちの目には終わりを知っている人間の色が宿っていた。




【あとがき】

ちょっと前から出してた新作をタイトルからあらすじからなんから修正して出してます。

1週間は毎日投稿できますが、それ以降の更新頻度は自分でも分かりません。

よろしくお願いします。

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