工業高校VTuber闇を出す
窓際開拓工房長
第1話 「配信、切れてないですよ」
「……今日も、ダメだったな」
神狼零は、ヘッドセットを外しながら椅子に深くもたれかかった。
ゲーム配信は無難に終わった。事故もなく、噛みもなく、炎上もなく。
――そして、盛り上がりもなく。
「同接三桁いかねぇの、もう慣れてきたのが一番ヤバい気がする」
画面にはすでに配信終了画面が映っている。
少なくとも、零本人はそう思っていた。
零は何気なくブラウザを開き、同期の配信を覗く。
まずは女子Vtuberの枠。
明るい笑い声、流れるようなコメント、飛び交うスパチャ。
「……なんであんなに雑談だけで人来るんだよ」
次に男Vtuberの枠。
操作は荒い、トークも適当、それでもコメントは止まらない。
「俺の方がよっぽど真面目にやってるだろ……」
そこで、ぽろっと本音が落ちた。
「はぁ……伸びねぇなぁ」
――コメント欄が、動いた。
【配信切れてないですよ】
【零くん?】
【今の独り言?】
「……ん?」
零は気づかず続ける。
「毎日時間作ってさ、学校終わってから準備してさ……
工業高校の実習で指ボロボロになっても配信してるのにさ……」
【工業高校!?】
【初出情報来た】
【企業Vtuberの学生設定ガチだったんだ】
「周りは機械音うるさいし、油の匂い取れねぇし、正直『Vtuberやってる』なんて言える雰囲気じゃねぇし……」
【急に愚痴枠始まって草】
【雑談力、今が一番高い説】
【これ切り忘れ事故?】
「ていうか、工業高校ってだけでさ……『どうせ就職でしょ?』みたいな目で見られるのも地味にキツい」
【急に重いけど言い方が淡々としてて草】
【零くん、語り口が深夜ラジオ】
【このテンションの方が好きなんだが】
そこでようやく、零は画面の隅に流れる文字に気づいた。
「……あ?」
マウスを動かす。
コメント欄。
動いている。
明らかに、生きている。
「……え、ちょ、待っ」
【気づいたwww】
【おかえりなさい】
【切れてませんでした、はい】
「うわああああああ!!」
ヘッドセットを慌てて被り直す。
「な、なんで誰も言わなかったんだよ!!」
【言ってた】
【最初から言ってた】
【零くんが無視してただけ】
「最悪だ……企業案件じゃなくてよかった……」
【工業高校の愚痴、普通に共感した】
【陰キャ工業民ワイ、涙】
【零くん旋盤触ってそう】
「触ってるわ!!」
【即ツッコミ助かる】
【今のキレ良かったぞ】
【素の方が面白い説、証明される】
零は額を押さえる。
「……これ、アーカイブ残るよな」
【残る】
【しっかり】
【切り抜き職人、もう動いてそう】
「やめろ!!」
【タイトル案「配信切り忘れて本音出る工業高校生Vtuber」】
【再生数伸びそう】
【これで伸びたら草】
零は一瞬黙り、そして小さく笑った。
「……まあ、たまにはいいか」
【その開き直り好き】
【次から愚痴枠定期でやろう】
【工業高校ラジオやれ】
「検討はする……検討はな」
画面の向こうで、コメントは相変わらず流れ続けている。
いつもより、ずっと速く。
神狼零は気づいていなかった。
一番伸びていたのが、今この瞬間だということに。
――配信事故は、時に才能を暴く。
お読みいただきありがとうございます
これを書いている作者も今現在、工業高校で高校生をしていますがとても学校と言えたところではありません私は情報系(パソコンを主に)ですが授業でパソコンを使うことなどなく少しかじる位しかしないくせに3年になると急に卒業課題を作れだの言いだすのとても闇深いです。
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是非、次の話や、同者の別作品を読んで見て下さい。
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