全校放送で告白したら、拍手された。
波崎 亨
第1話
告白は校舎裏でするものだと、私は信じていた。
全校放送でするものではない。断じて。
なのに私は、校舎裏に立っている。
手にはマイク。説明は省略する。したくない。
「……聞こえてます?」
聞こえていなかったら、今すぐ逃げたい。
願いは届かず、校舎中から自分の声が返ってきた。
背後で誰かが叫ぶ。
「マイク切れー!」
こっちが知りたい。
目の前には、告白予定の相手。
固まっている。気持ちは分かる。私もだ。
逃げようとして、失敗する。
足が動かない。青春は足から奪ってくる。
私は深呼吸した。
スピーカー、真似しなくていい。
「あの、その……」
今さら丁寧語が役に立つと思った私を叱りたい。
「好きです!」
言った。
勢いは正義、理性は不在。
校舎が一瞬だけ静まり返る。
心臓がうるさい。代わりに黙ってほしい。
次の瞬間、拍手。
誰だ最初に叩いたの。ありがとう。家まで送る。
相手は一拍置いて、困ったように笑った。
「返事、今?」
選択肢があるだけでありがたい。
全校放送なのに。
放送室の窓が開く。
友人が土下座している。
あとで話そう。じっくり。
「じゃあさ」
相手が一歩近づいた。
「続きは、放送切ってからにしよ」
校舎裏に歓声が落ちてくる。
うるさい。でも、嫌じゃない。
恥ずかしい。
けど、たぶん一生ネタにできる。
青春って、そういう保険が付いている。
全校放送で告白したら、拍手された。 波崎 亨 @h626
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます