死に戻り主人公はまだ諦めない『1』

羽竹 竹羽

プロローグ< 夢 >

?「お兄ちゃん!また彰良が隠しておいた私のおやつを食べたの!」

彰良「蒼衣!桜だって昨日俺の残しておいたパン食べたんだぞ!」


街並み外れた坂の上に、ブロック塀で囲まれた一軒家があった。庭には雪が積もったテーブルと椅子に、葉が枯れ落ちた木がある。


今の季節は冬そのもので、外に出ると真っ白な息がすぅっと消えていく。


そんな中、温かい家の中で甘い匂いに包まれながら、俺は桜といつも通りの喧嘩をする。


蒼衣と桜は兄妹で、元々2人でこの家に住んでいたらしい。俺はこの家に住んでいるが、2人と血の繋がりがある訳じゃない。


桜「お兄ちゃん!私悪くないもん!」

彰良「蒼衣!俺だって悪くねぇよな!?」

蒼衣「……おやつならまた作ってあげるから、仲直りしなさい」


険悪な様子のまま、俺と桜は目を合わせずに握手を交わした。蒼衣は満足そうに微笑むと、台所に行って甘く真っ白な生クリームでコーティングされた、フルーツ盛り沢山のケーキを持ってきて、テーブルの上に置いた。


桜/彰良「ケーキ!」

蒼衣「手を洗っておいで、皆で食べよう」


ドタバタと2人で手を洗いに行き、フォークとお皿を持って椅子に座った。


途端に部屋の明かりが消え、暗闇の中頭に何か違和感を覚えた。


蒼衣「“ロウソクに火を”」


突拍子も無く聞こえたその言葉に僅かな驚きを見せ、目の前でケーキの上に灯されたロウソクの火を見つめた。


彰良「……え?」

蒼衣「誕生日おめでとう、彰良」

彰良「俺の誕生日…覚えてたのか?」


2月13日、今日は俺の…誕生日だ。


夕方、いつも通りの喧嘩に、いつも通りの食事と、会話。てっきり覚えていないものだと思っていたせいか、驚きは倍になった。


蒼衣「記憶力は良い方だからね、私も桜も」

桜「前に1回聞いてからずーっと覚えてたよ!」

彰良「…初めて祝われたから、俺…」


なんて言ったらいいか、分からなかった。ありがとうなんて言えば良かったのか、それとも…


蒼衣「食べてごらん」


目の前に置かれたフルーツケーキをじっと見つめ、フォークを手に取り一口サイズに取った。


彰良「……」


見るからに甘そうな生クリームに、美味しそうな程ツヤのあるカットされたフルーツ、あまりにも食べるのが勿体なくて、躊躇していた。


蒼衣「彰良」

彰良「…?__ッ!」


フォークの上に乗ったケーキをじっと見つめていると、不意に呼ばれた名前に答えようと顔を上げた。


しかし、そこに蒼衣の姿は無く、同時に桜の姿も無かった。


彰良「蒼衣……桜……」


2人を探しに出ようとフォークを床に落とし、椅子から立ち上がった瞬間に照明は消え、うっすら月の光だけがこの家を照らした。


裸足で家の中を走り回り、風呂やトイレ、寝室に裏庭、玄関と屋根裏も見たはずなのに、何処にもいない。


桜「お兄ちゃん!!」

彰良「!」


庭から聞こえた叫びが耳に入り、裸足だったにも関わらず、雪の積もった庭に出た。


桜「お願いお兄ちゃん目を開けて…!お兄ちゃん!」


俺が来た時には、既に蒼衣は桜の膝の上で、覆い被さるようにして叫び続けていた。


寒い。


真っ白な雪の中、蒼衣の腹に一際目立つ赤色が目に入った。


おかしい。前にも見たことがある光景だ。それなのに思い出せない、頭が酷く痛かった。


蒼衣「…、…__、」

桜「お兄ちゃん…置いて行かないで…」


ピクリとも動かない蒼衣に、小さく震えた声で語りかける桜の頭に、ほんの少しだけ雪が積もっていた。

どれだけの時間ここに居たんだろうか、手は見るからに真っ赤で、蒼衣の肌は異様に冷たく真っ白だった。


ボソボソと聞こえていた桜の声すら聞こえなくなった瞬間、立ち尽くしていた俺は動かない2人の前に座り込んだ。


死んだ。


その言葉が脳裏によぎる。


自分以外の呼吸の音が聞こえない。


2人が死んだ。


何故、どうやって、どうして、誰が__


?「暇つぶしに、加護を使って、何となく、私が。」


顔を上げ、桜達の背後に立つ一人の男を見た。顔を布で隠し、羽織りを風になびかせながら俺を見下ろす男。


?「君の問いへの答えは…これでいいかな」

彰良「……暇つぶし…何となく…?」

?「そう、私は暇で暇で仕方が無いんだ」

彰良「暇だからって、2人を…お前が…」


フッと鼻で笑い、不敵な笑みを浮かべた。風に吹かれた布から見えた頬にはおかしな痣があり、俺に向かって手を伸ばした。


?「いい加減…退屈なんだ」

______


彰良「……」


何か、恐ろしい夢を見ていた気がする。内容が思い出せない上悲しい気持ちになっている自分がいる。


私は一体…どんな夢を見ていただろうか。


悠哉「起きたのか?顔色が悪いぞ」

彰良「…どんな夢を見たのかが思い出せない」

悠哉「お前が冷や汗流すくらいの夢なら、余程の事があったんだろうな」


確かに、汗の量が尋常では無かった。

部屋に入って来て早々、悠哉はベッドの横にあるテーブルの上で、私の薬を用意していた。


彰良「…シャワーを浴びてくる」

悠哉「今日は情報屋に行くんだろ?夢斗に遅れるって伝えとくぞ」


渡された薬を一気に飲み干し、水で流し込んだ後に頼むと伝えた。着替えを持って1階に下り、風呂場に向かった。


目を覚ますために朝から冷水を浴び、服を着てリビングへ向かうと、髪を乾かせと憂羽に怒られた。

小言を呟きながらも、丁寧に髪を拭いてくれる憂羽を背に、朝食のサンドイッチを口の中いっぱいに頬張った。


夢斗「主様、おはようございます」

彰良「ああ、遅れてすまないな」

夢斗「大丈夫ですよ、どうせ時間はいくらでもありますから」


朝食を食べ終えると、先に準備を済ませていた夢斗は外に行き、私は2階の寝室で出かける準備をしていた。


鏡を見ながら左耳にピアスを付け、青く輝く宝石を鏡越しにじっと見つめた。


彰良「…行ってくるよ」


誰から貰ったのかも分からない、片方だけのピアス。謎に思い入れがあって、捨てる事も出来ない。

お守り程度に耳に下げるくらいで、別に特別な理由がある訳でもない。


準備を終え、夢斗が待っているであろう外に出ると、私を見るなり笑顔を見せて出迎えてくれた。


夢斗「主様!もう行きますか?」

彰良「ああ」


さて、最後の1年はもうすぐだ。

______


【続く】


次回

 1章-1話_120回目の遭遇_


<紹介と補足>

※毎話の最後に、新しく出てきたキャラや組織、物事に関しての軽い紹介と補足をします。

※キャラについての情報が増える度、その都度増えた情報を追加して最後に書き記します。

※長くなり過ぎる場合別で記載しておきますのであしからず。

※プリ小説やpixivでも投稿しております、更新日は同じですが、更新してる話数がめっちゃズレてます。先を読みたい方が居ればプリ小説の方をオススメします。


・宝条 蒼衣、26歳

・宝条 桜、22歳

両親が他界し、2人で暮らしている。


・国崎 彰良、19歳

この物語の主人公。

・片桐 悠哉、21歳

・柳原 憂羽、21歳

・茜里 夢斗、19歳


・?

→???

蒼衣と桜を殺した黒幕。

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2026年1月17日 22:00

死に戻り主人公はまだ諦めない『1』 羽竹 竹羽 @akira_kk_0219

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