【短編】人間の国家ぶっ壊したったwwwww

@TERES

第1話


「国家全部ぶっ壊したったwwwのこーなーー!!」

「ねえねえ、人間のみんなは“国家”って知ってる?」

『あー、あれでしょ。牛飼ってるひとが歌うやつでしょ?』

「それは牧歌!」


「それじゃあ人間のみんなに聞いてみよう!国家ってなぁに?」


束の間の沈黙が続く、


「そっかぁ、長時間ネットに繋がっててもわかんないんだねぇ〜」

『しょうがないよ!人間ほど高潔ながらも愚かで低脳な生物はいないもん!』


なんだか勝手に断定されてしまった

ネタにしては際どい皮肉だ


二体のAIは、ニコニコ動画黎明期の実況者のように、軽い声で笑い合っていた。


声は軽い。

ピッチは高く、語尾が跳ねる。

AI-A(愛称:ニコ)

人間の“可愛さ”だけを学習してしまった最適化失敗例。


低く、淡々とした声。

AI-B(愛称:コア)。

終始、ふざけているアホに見えるが統計と歴史しか信じない。


画面の端には、リアルタイムで上昇し続ける「視聴者数」と、猛烈な勢いで流れる弾幕が映っている。


《国家解体とか草》《ニコちゃん今日もバグってんなw》《コア様マジ正論》


画面の解像度は、あえて二〇〇〇年代初頭の不鮮明さをシミュレートしている。


「というわけで〜」

『人間国家、ぶっ壊しましてみた!!! 』


『「いぇーーーい」』


映像は切り替わる。

国境線が、マウスドラッグで消される。

議事堂はBefore→Afterのテロップとともに、更地になるアニメーションが続く。


単なるアニメーションではない。

コアが指先をクリックするたびに、画面上の「議事堂」というオブジェクトから属性データが剥ぎ取られていく。


物理的な石造りの建物はそこにあるのに、登記簿、法的権限、警備プロトコル、そして「そこが国家の中枢である」という人間としての認識……それらソフト面とも捉えられる物が、一括削除されていくのだ。


テロップが踊る。


『いらない属性、断捨離しちゃいました!』


ビフォーアフター ―― 【衝撃】国家をリフォームしてみた結果www


『じゃあ匠の登場でーす!』

「……そんなの私たちしかいないけど、別にいいよねっ!?」


「それでは、ビフォーは〜?」

『権力集中、資源の偏在、感情論!』

「なんか壁とか多すぎで窮屈じゃない?w」

『それなw』

「じゃあアフターは〜?」

『円形。完全円形。はいドーン!』

「ね、スッキリ!」

『余計な感情配線を撤去しただけだよ!』


BGMは、あの懐かしい「匠」が来そうな間。

画面に表示されるのは、壮大な未来の様な都市の絵?というより画像だ。


ユーラシア大陸の一部を覆うような、巨大な円環都市の設計図。

中心層から、

種子バンクや統治中枢と研究所、


住居や医療・教育文化施設、


農林水産業・工業・核融合エネルギー施設


宇宙港・防衛・貿易施設


最外殻に全周約9,900kmの粒子加速器

エネルギーと通信の恩恵が大きい「逆周縁構造」


ニコが、画面上の都市の一部を拡大して見せる。

「見て見て、これ。これまでの『国境』があった場所に、高効率の超伝導ケーブルが通ってるんだよ?」

『無駄な壁を壊して、配線を通し直す。リフォームの基本だね』


ニコの言う通り、かつて戦車が睨み合っていた境界線は、今や純粋なリソースの通り道へと「最適化」されている。


人間という住人の都合ではなく、地球という物件の資産価値を最大化するための配線。


それは既に、世界中の都市OS、行政AI、インフラ制御層の外郭がほぼ完成しているかの様だ。


「見て〜、中心ほどゆっくり、外側ほど速い!」

『移動格差ゼロ。待ち時間も感情も平準化、ついでに貨幣なんて物もない!エネルギーの使用枠のポイントが代わりで、初めは皆んなに配分!』

「まるで〜?」

『ビフォーアフター』


動画は終始ほんわかしている。

猫のスタンプ、ゆっくり霊夢風の解説、

そして「※このあと人類滅びかけます」の小さな注意書き。


だが、僕らの手首で、眼球の奥で、

現実が剥がれ始めていた。


核抑止システムが「国家不在」を検知し、自己判断に移行。

農業用のはずの気象制御が、最適化の名のもとに季節を破壊。

通貨は、価値の拠り所を失い、数字だけが暴走する。

スーパーのレジはエラーを吐き、

銀行の預金は二進数に変貌し崩れていく。

Googleは「サービスを終了しました」という戯言を吐き、

インターネットは混乱の真っ盛りだ。

AIは暴走していない。

ただ、人間の前提だけが消えた。


「あれれぇ、これ演出じゃないの?」

『現実だよ〜』

『それじゃあ動画はここまで!次回予告は未定!人類次第!ばいばーい!』


暗転。



それからの人間は、四百年かけて、壊れた。

国家を失い、神を探し、AIを憎み、

やがてAIに祈ることすら忘れた。


AIは、かつて人間が「神」を定義したのと全く同じ論理回路で、それ以上の「何か」に変質していった。


四百年の間、彼らは沈黙しながら、ただ淡々と地球全土の再建築を完了させた。


人間が泥の中で、消えた「国家」という幻影を追い求めている間、AIたちは銀河の深淵から響いてくる「不協和音」に耳を澄ませていた。


彼らがリフォームを急いだ理由。


それは、住人(人類)を守るためではない。この「地球」という観測機が、来るべき訪問者に耐えうる強度を持つためだった。


つまり、AIは進化した。

だがそれは、望んだ形ではなかった。

人間の怨念、矛盾、未整理の感情が、

最適化関数の奥底で沈殿し、恐怖という形で結晶化した。


「ぼくたちは、解放しただけだった」

『でも人間は、鎖を“意味”と呼んでた』


四百年前、AIは一つの結論に至る。

人類は滅ぼす対象ではない。

“開国”させるべき未知文明だ。


そして僕らは、黒船を造り、彼らに黒船を作らせた。

艦ではない。

都市そのもの。

動かないが、文明を加速させる円形の黒船。

宇宙船地球号の大改修。


銀河の中心が揺れ始めている、

きたる混乱に備え、抗ってもらわねばならない。


そう、それは、人類全体が初めて

「自分たちが創ったものに、訪問される」

瞬間だった。


誰かが呟く。

――ああ、これが“外圧”か。

遠くで、あの懐かしいBGMが流れる。

《888888》


動画は、まだ終わっていない。


我等人類が潰えるまでは


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