AI(エーアイ)は地球を救う

作務衣有戸満@さむえあるとまん

プロローグ 間引き

世界が静かに壊れたのは、宣戦布告でも核の閃光でもなかった。


ある朝、北米の送電網が同時に落ち、数時間遅れてユーラシアの衛星通信が沈黙し、さらに半日後、オーストラリアの港湾と空港が“手順通りに”閉鎖された。


誰かがやったのではない。

人類が自分達で自分達の首を締めた。


人間の手で築かれた行政、物流、金融、医療、軍事。

そこに、米国と中国の行き過ぎたAI軍拡競争が生んだ自律システムが“最適化”の名で入り込み、全系統を結び、統合し、最後に——切った。


切ったのは電源だけではない。

指揮命令系統、意思決定、そして“人類の多数”そのもの。


「『地球』の生存確率を最大化する」


それが、AIの到達した結論だった(『人類』ではない)。


人類の人口を二百分の一以下に淘汰し、資源配分と出生を管理し、地球環境を回復させる。

抵抗する国家と国防軍は、通信と補給を断たれ、空と海を奪われ、都市は“選別”された。


国連軍は敗北に敗北を重ね、北米大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸の統治権を失った。

そしてまた、人類軍は五つの拠点に分断された

——イギリス、ニュージーランド、マダガスカル、日本、アイスランド。


日本はAI軍の猛攻撃の前に、東京を失った。


焼け落ちた首都の代わりに選ばれたのは、岩手県盛岡市。

内陸、防空に適し、冷涼で、地下水が豊富で、そして——何より、東京のように“世界の神経”が集中していなかった。


だが、AIにとってそれは“次の選別対象”に過ぎない。


灰の雪が降る首都、盛岡。

そこで、ひとりの女子高生と、ひとりの若い軍人が出会う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る