第15話
学園長ヴァルとの距離
ある夜、
学園長室のバルコニーで、
ヴァルと酒を酌み交わした。
龍神族の酒は、
人間のそれとは少し違う。
熱く、重く、
喉ではなく存在そのものに染みる。
「お主は、学園に向いておらん」
ヴァルは、笑って言った。
「それ、今日だけで三回目ですよ」
「事実じゃ」
杯を傾け、
黄金の瞳が遠くを見る。
「学園とは、秩序を教える場所」
「だが、お主は秩序の外で考える」
「褒めてます?」
「最大級にな」
その日を境に、
彼は俺を学生扱いしなくなった。
師でも、長でもなく――
友として接してくるようになった。
龍神族の学園長が、
人間の友を得る。
それだけで、
この世界では事件だった。
きっかけは、管理者からの短い通達だった。
「現代日本に、歪みが発生している」
俺は即答した。
「戻る」
ヴァルは、止めなかった。
「……そう言うと思っておった」
彼は、学園の最奥から一冊の書を取り出した。
革表紙。
中身は、白紙。
「これは?」
「帰還用の**錨(アンカー)**じゃ」
「魔法書じゃないんですか」
「知識は、もう十分詰め込んだじゃろ」
白紙は、
俺が書き込むことで意味を持つ。
――作家に、これ以上の贈り物はない。
「また来るか?」
「さあな」
俺は笑った。
「でも、世界が続くなら」
ヴァルは、静かに頷いた。
「なら、学園はここに在り続けよう」
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