第6話
「……さて。諸君。先ほどまで私は無力な受容者の『精神の怠惰』を徹底的に踏みつぶしてきた。だが、これだけでは不公平というものだ。
この『異世界転生』という名の、魂のデッドコピーを量産し、貴様らの空虚な脳髄に流し込み続けている……あの『作者』を自称する者ども、そして彼らの才能の欠如を、ここで一気に解体してやろうではないか。
いいか。私は、商業主義そのものを否定するつもりはない。この世界において、自らの表現を商品に変え、対価を得ることは、生存のための正当な戦いである。金のために書く。それは、時に高貴なまでのプロフェッショナリズムだ。しかし、諸君。私が問いたいのは、その『商売』の裏に、一体どれほどの『才能の滴』が混じっているかということだ。
才能とは何か。
それは、誰もが見落としている現実の裂け目を見出し、そこに自らの全存在という名の楔を打ち込み、世界を全く新しい視点から翻訳し直す、孤独で、苛烈な『知性の暴力』のことだ!
だが、今の異世界転生という名のマーケットに溢れているのは、才能か。否。そこにあるのは、ただの『需要への卑屈な適合』だけだ。
彼らは、自分の内側から溢れ出す、どうしても書かずにはいられない『叫び』を持っているわけではない。彼らが持っているのは、ただ、ランキングという名の冷たい数字の羅列を眺め、諸君ら『何もしてこなかった者たち』が最も心地よいと感じるキーワードを抽出し、それをパズルのように組み合わせるための、卑しい手先の器用さだけだ。
それは創作ではない。それは、ただの『精神的デリバリー』だ。
彼らは、読者を傷つけることを恐れている。読者を否定することを恐れている。なぜなら、不快感を与えた瞬間に、金は支払われなくなるからだ。ゆえに、彼らが紡ぐ言葉には、毒がない。血が流れていない。他者の人格を尊重するがゆえの『摩擦』さえ、最初から設計段階で排除されている。
諸君、これが才能の欠如でなくて、何だと言うのだ。
現実の重みに耐えかね、物語を構築するだけの強靭な自意識を持たぬ者が、あらかじめ用意された『異世界』という名のテンプレートに、既存のパーツを並べていくだけの作業。そこに、作者自身の『肉体の温度』は一ミリでも宿っているか。
私は、作者たちを軽蔑する。その、自分を切り売りする勇気さえ持たぬ、臆病なまでの才能の欠乏を。その、商売という名を隠れ蓑にして、他人の人生の貴重な時間を、一時の快楽という名の『薄めた阿片』で奪い続けている、その精神の空虚さを。
諸君らの魂がどれほど安値で取引されているかの。作者たちは、諸君らを愛しているのではない。ただ、諸君らという名の『空虚な器』に、自分たちの空虚を流し込み、その対価として、現実世界でのささやかな成功を掠め取ろうとしているだけなのだ。
さあ、その『作家』という名の、仮面を被った亡霊たちの化けの皮を剥ぎ取れ。
そこにあるのは、世界と戦うことを放棄し、ただ『売れる公式』に従順に従い続ける、最も創造性から遠い場所にいる、哀れな事務作業員の群れに過ぎない。
諸君らが今日読み、明日には忘れるであろうあの物語たちは、なぜこれほどまでに『似ている』のだ。
主人公の能力、出会う少女の性格、敵役の小物っぷり、そして世界の設定。それらは、もはや独自の想像力から産み落とされたものではない。それは、先行するヒット作という名の、すでに味のしなくなったガムを、何万回と噛み直し、他者の唾液と混じり合ったまま吐き出された、不潔な『残骸』の繋ぎ合わせに過ぎない!
『売れるから、書く』。
ああ、なんと潔いまでの魂の売春か!
作者を自称する者どもは、もはや白紙の原稿を前にして、宇宙の深淵と対話することなどしない。彼らが対話しているのは、PV数であり、ランキングの推移であり、SNSのトレンドだ。彼らは、自らのペンを、世界を切り開くための剣としてではなく、大衆の喉元を優しく撫で、快感中枢を刺激するためだけの、安っぽい電気マッサージ器へと成り下がらせた。
そこには、作者の『個』など存在しない。
あるのは、マーケットという名の巨大な怪物が要求する『最大公約数的な快楽』への、卑屈な奉仕だけだ。
諸君らがその量産品を貪り食っているとき、諸君らは『物語』を読んでいるのではない。ただ、自分を肯定してくれる情報の断片を、最短距離で脳内に流し込んでいるだけだ。
作者たちは、諸君らが『考えること』を嫌悪していることを知っている。
『否定されること』に怯えていることを知っている。
だから、彼らは徹底的に、予想を裏切らず、自尊心を傷つけず、ただ『設定という名の贅肉』だけを膨張させた、骨のない化け物を差し出し続ける。
笑わせるな! これを文学だの、エンターテインメントだのと呼ぶことは、この地上で自らの血を吐きながら一文字を刻んできた、すべての先人たちに対する冒涜である!
彼らは、自分の人生を、自分の苦悩を、自分の肉体を、作品の中に一切込めてはいない。なぜなら、自分自身を出力してしまったら、それは『売れるテンプレート』から外れてしまうからだ。彼らは、自分という人間が持つ固有の『不快な毒』を、商業という名の濾過器で丁寧に取り除き、無害で、無味無臭で、誰にでも飲み込みやすい『精神的ポタージュ』へと精製した。
諸君らが熱狂しているあの作者たちは、諸君らを一人の人間として見てはいない。ただの『クリックする指』、あるいは『金を払う家畜』として、データの一部に還元しているだけなのだ。
我々は、作者たちを断罪する。その、売れるために自らの魂を去勢した、その徹底した卑屈さを。その、読者の知性を信じず、ただの反応機械として扱い続ける、その底知れぬ侮蔑を。
この量産品の山。これが『想像力の死体』の集積場だ。作者たちは、自らの才能のなさを『マーケットのせい』にし、諸君らは、自らの空虚を『物語のせい』にする。この、互いに責任をなすりつけ合いながら、奈落へと堕ちていく共依存。
さあ、その『売れる物語』という名の、美しく包装された産業廃棄物を、今すぐ窓から放り捨てろ。
作家諸君らは、異世界へ行きたいのか? 作家各位は、ここではないどこかへ転生したいのか?
現実を元に書け!
そして、この世界で、無惨に、無様に、徹底的に失敗しろ!
転生せずに、今、ここで、死ね!
私は諸君らに、逃げることを許さない。どれほど無能であろうと、どれほど醜悪であろうと、どれほど世界から無視されていようと、その『最悪の現実』こそが、諸君がこの全宇宙で唯一所有している、最強の『素材』なのだ!
我々が真に渇望しているのは、この理不尽な現実の中で、一歩を踏み出すたびに泥を啜り、他者に嘲笑われ、恥辱に震えながらも、それでもなお自らの肉体という名の牢獄から手を伸ばそうとする、その『敗北者の絶叫』だ。
失敗しろ!
現実の壁に叩きつけられ、鼻を折り、プライドを粉々に砕かれろ。
転生して別の自分になるのではない。今、この瞬間、この最悪な自分として、最後までこの現実に踏み止まれ。
死をリセットするな。死を、その手に握りしめろ。『一度きりしか生きられない』という、あの、血が凍るような絶望的な事実を、自らの生の燃料に変えろ。
作者という名の詐欺師たちが差し出す、設定という名の毒餌を吐き出せ。
この現実世界で、誰にも理解されず、誰にも称賛されず、それでもなお『自分はここにいる』と、自らの生を、自らの言葉で出力し続けろ。その出力された言葉が、どれほど拙くとも、どれほど醜くとも、それが君自身の血を吸って産まれたものであるならば、それは、あらゆる異世界転生小説を凌駕する、神聖なる『文学』となるのだ。他人の夢を見るのは、もう終わりだ。」
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