携帯電話の待ち受け画面

ちあきっこ

1話完結

本日といえば成人式。

女の子は振袖に身を包み、男の子は一張羅を着て、久しぶりの旧友たちと再会し、きっと大騒ぎしていることだろう。


さて、私の成人式からは、もうウン年が経った。

今日は、そのときの話をしようと思う。


当時、私は今とは違い、もっと海の近くに住んでいた。

ちょうどその頃、母方の祖父ががんを患い、私の住む市のがんセンターの評判が良いということで、愛知県から祖父母がやって来た。畳の一室に、しばらくの間、居候することになったのだ。


成人式当日。

私は辛子色の振袖を着て、高校時代の友人たちと再会し、キャイキャイと戯れていた。普段はナチュラルメイクの私も、この日はプロの手にかかり、


「ここまで違うんやねぇ」


と、コスメに詳しい友人と一緒に驚いた。

目が大きいから化粧映えするらしい。もっとも、本人にその気がなければ、普段はすっぴんに近いままだ。休日、大切な人と会う日は、きちんとベースメイクからするのだけれど。


式では、中学生の頃に好きだった男前と、その相棒にも再会した。

後に夫婦となるその相棒と、私の親友やっちゃんを含めた四人で写真を撮る。

キューピッドは私だ。少し、鼻が高い。

ちなみに私は男前にあっさり振られて、今ではいい友達になっている。


式典が終わり、夕方からは打ち上げ。

それまでの時間、みんなは街へ繰り出し、プリクラを撮ったりしていたけれど、私は「ごめん!打ち上げには出るから〜」と言って家に戻った。


振袖姿を、祖父と祖母に見せたかったのだ。


「わぁ、べっぴんさんだがねぇ〜」

「これ、紅型いう模様かね?」

「ちあきの晴れ姿が見られるんやったら、来てよかっただなぁ」


二人は本当に嬉しそうだった。

その顔を見て、私はそっと振袖を脱ぎ、夕方の打上げへと向かった。


――それからしばらくして、祖父は闘病の末、帰らぬ人となった。


祖母ひとりになった愛知の家は、主人を失い、静まり返っていた。

距離があるため頻繁には通えなかったが、長期休みには祖母のもとを訪ねた。祖母は畑仕事をし、野菜を作っては私の家に送る。それが生きがいになっていた。


ある日、祖母の家で、祖父の使っていたパカパカの携帯電話を見つけた。


「お父さんは使っとったけど、私はよう触らんでね」


「ちょっと、見てもいい?」


そう言って開いた携帯電話の待受画面には、私の成人式の写真が映っていた。


涙腺が、一気に崩壊した。


「おじいちゃん……」


セントレアで撮った、帽子をかぶって笑っている祖父の遺影に向かって、


「ありがとう。ありがとう……」

――立派に育ててくれて、ありがとう。


それ以上の言葉は、出てこなかった。


母方の実家は遠い。

祖母ももう亡くなり、今は叔父が住んでいる。


――実家は、近い方がいい。

そう、あとになってから、しみじみと思わされた出来事だった。

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