夜になると、消えちゃいます。

@mnmD

第1夜

「この街に冒険団が来る!?」

そう大きな声で叫ぶのは親友のエバ。

エバはキラキラした真っ直ぐな目で僕を見つめる。

「そうらしいよ。僕、さっき教会のおじさんに聞いたんだ。」

僕はそう言った。聞いた、というか盗み聞きだが。エバはくぅ~っと顔を縮めて喜んでいる。

「本当にすごいよ!どんな冒険団かなぁ。」

エバは期待にあふれた瞳で街を見回している。この街は周りは山や海で自然に恵まれている。ここの近くには未開拓の山はなかったはずだが、なんで冒険団が来るのだろうか。僕がそう思考をめぐらさていると、エバはにっこりとして僕に言う「ねぇ、モシュネ!!冒険団の人たちにいろんな事を聞いてさ、それで、私達も冒険団になろうよ!」

エバの期待に満ちた声が辺りに響く。そばを通る人達の視線など意に介さずに言った

「モシュネは冒険団には興味ないの?」

「僕は、あんまり。」

エバは僕の言葉に唇をとがらせるが、直ぐに機嫌をケロッとなおす。

「まぁ、いいや!モシュネ、教会に行こうよ!」

「エバ、待ってよ…」

僕の事を手招きして走るエバに若干呆れながらも僕はエバを追いかける。胸の中で少し期待している僕がいることは少しだけ、無視して。


教会の中をチラチラと2人で伺う。

中には教会のおじさん。多分冒険団の人たち。

「モシュネ、あそこの人たちが冒険団かな…」

「多分。見たことない顔。それに異人もいる。」

異人とは、獣人や人間ではない人型の種族を指す。

「あの異人。メデューサかな。」

エバはキラキラとした瞳でまっすぐに冒険団を見つめているから、バレてしまいそうで少しドキドキする。

「エバ、バレないようにね。」

僕は小さく注意すると、エバはにっこりと笑って了解、とでも言うように僕にウインクをした。

しばしの間、そうしていただろうか。

エバが焦ったように言った

「モシュネ、こっちに冒険団の人たちが来る。隠れないと!」

「なんで急に!?」

モシュネとエバの小さな声。冒険団の近づいてくる足音。エバが焦って動揺しているなか、僕はエバを置いて逃げようと考えている。

「エバ、ごめん。」

僕は教会のおじさんに叱られるのは嫌だし、冒険団に何を言われるかも分からない。冒

僕はその場から走って逃げる。エバも追いかけようとするが、足がほつれて転んでしまっている。そんなエバをクスクスと影で僕は笑って見ていた。少し、自分ながら性格が悪いと思ったが、まぁ仕方あるまい。

エバの後ろには先程のメデューサの異人が立っていた。目を合わせないようにしているのか目には包帯が巻かれていた。

「おい、貴様。そこで何をしている。」

早速エバは話しかけられると、動揺で手足をバタバタと動かしているのが滑稽だ。

「ぁ、あ、の!ぇぇ、と。わ、悪気はなくて!」

エバの必死の弁解にメデューサの異人の後ろにいた少年と少女がクスリと笑う。まるでエバをからかうようなその笑みをメデューサの異人はそちらを見る。雰囲気からしてこのメデューサの異人は怖いタイプの人だ。

「おい、笑ってるんじゃない。はぁ、全くだ。この街のガキはこんなにも未熟者なのか。」

エバは後ろにいる僕を一度睨見つけてから言う。

「す、すみません!私、エバと申します!よ、よければ冒険団の事について教えてください!」

エバの唐突な質問にメデューサの異人、後ろの少年と少女も顔が一瞬止まる。

「教える理由などない。とっとと帰れ。」

メデューサの異人の強い一言にエバは失礼しましたっ!と頭を下げてから僕の方に逃げてくる。僕はエバの必死の形相を見てクスクスと笑う。

「エバ、ごめんってば。」

「モシュネの事、絶対に許さなぁい!」

二人の声が街の夕焼けに消えるころ、街の灯りがポツポツとつき始めた。エバはもう帰る時間かぁ。と大通りに出る。エバとモシュネの家は隣同士のため、同じ道を歩いて帰る。この時間のおしゃべりが僕は大好きだった。

「エバ、また明日。」

「モシュネ、またね。」

二人が家に入ったころ、空は黒い闇に覆われていた。

僕は母さんに言われたとおり、手を洗ってから夕食を食べる。僕が帰るのが遅くなったせいで、僕より先に母さんと父さんはご飯を食べていた。

僕は一人でご飯を食べながら、ドアの入り口にドリームキャッチャーをつける父さんの背中を見つめていた。



メデューサの異人、ナーガは今日の事を思い出していた。話しかけてきた、慌てた少女。

確か、エバと名乗っていたか。

ナーガは目の包帯を取り、窓の外を眺める。暗闇の空は深淵のようで、冒険団にとってはそそられるものだ。ナーガはソファに深く背を預けると、蛇のような瞳を閉じる。


「あァ、ナーガ。私の可愛いナーガ。どうか、夜になったら光と共に過ごすのよ。」

お母さんの優しい声がナーガの脳内を木霊する。

そう、夜になると光が必要。どんなに強くても、夜には抗えない。

ナーガはパチリと目を開けて、暗闇を睨見つけた。

「暗闇で光を近くにないまま過ごすと、消えてしまう。」

ナーガはそっとため息をついた。これがこの世のルールで変えることは出来ないのだろうか。

誰もがこのルールを解き明かそうと暗闇に挑んできた。誰もが皆、未開拓のこの世界の暗闇を解き明かそうと、そう願った。このロマンあふれるルールは神のいたずらだろうか。

ただ一つ、最近解明された病が暗闇に関わりがあるとされている。それが記憶病。記憶が星となり、空の暗闇に吸い込まれていく。そんな苦しい病。

ナーガはこの好奇心を胸に刻んで、冒険団として旅立った。ナーガは窓際に近寄り、空の暗闇を眺めた。時たま何処からか光り輝く星が暗闇の奥に消えていった。

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