豆苗
沼瀬葉太郎
豆苗
豆苗は見ていた。この部屋に住む人間を。
豆苗は置かれた、日当たりのいいキッチンの窓辺に。この部屋はキッチンからリビングまでが見渡せる。
豆苗は切られた、自分の分身がツナサラダの一部になっているところを見下ろしながら、後2回の命を悟った。
豆苗は成長していた。
豆苗は見ていたキッチンから見えるリビングでの食事、夫婦の中むずまじいい会話を
豆苗は見ていた、夫の帰りを嘆く妻の姿を。
豆苗は見ていた、夫を貶す妻の姿を。
豆苗は切られた、自分の分身が大根とのサラダにされている姿を、自分の分身と大根をあえる人間を。
豆苗はまた成長していた、自分の命が後一度だと悟りつつ、水も与えられぬ乾いたトレーを眺め崩壊を悟った。
豆苗は見ていた、夫婦の怒鳴り合いを
豆苗は見ていた、夫婦の激化する怒鳴り声を
豆苗は見ていた、夫が不倫をしてると怒鳴る妻の姿を
豆苗は見ていた、夫が妻を突き飛ばす姿を
豆苗は見ていた、夫がこちらへ近づいてくる姿を
豆苗は見ていた、夫が調理用ハサミを取るところを
豆苗は見ていた、妻を刺すところを
豆苗は見ていた、絶望的に叫ぶ妻の口を塞ぐ夫の姿を
豆苗は見ていた、妻の倒れる姿を
豆苗は見ていた、夫が疲れたように笑う姿を
豆苗は見ていた、風呂場の方向へ妻を運ぶ姿を
豆苗は見ていた、寝室へ向かうすがたを
豆苗は見ていた、起きてきた夫が電話をする姿を
豆苗は見ていた、自分を置いた女が家に来る姿を
豆苗は切られた、自分は肉の彩にされていた。
「奥さんサラダばっかだったじゃん」
豆苗 沼瀬葉太郎 @Numase
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます