ゲーム転生『魔女♡勇者』〜12人の魔女が世界を統べるファンタジーゲームの世界に転生した俺、ゲーム知識と最強職『勇者』で無双し、魔女ハーレムを目指す〜

空花凪紗

プロローグ

 世界を飢えで創った少年は、魔女を全クリする。



 その少年は――餓死した。


 2050年、夏休み。

 冷房の効いた六畳間。カーテンは閉め切られ、床には空になったエナジードリンクの缶。

 少年の名は誰の記憶にも残らない。17歳。


「……あれ?」


 最後に覚えているのは、コントローラーを握ったままの手の感覚だけだった。


 ゲームのタイトルは

『魔女♡勇者 ~12の理と世界の選択~』


 彼はこのゲームを、12本買った。

 理由は簡単だ。魔女が12人いるから。


 このゲームは一つのソフトにつき、一人の魔女しか攻略できない。

 ルート分岐は早く、選択を誤れば即バッドエンド。

 それでも彼は、全魔女ルートを踏破した。


 友情イベント、隠し好感度、死亡フラグ回避、

 裏設定、没ボイス、制作陣の悪意すら把握していた。


 その結果が――この最期だ。


「……腹、減ったな。なんだか、寒いな――」


 それが、人生最後の言葉だった。


 否。


 それは――釈迦の苦行そのものだった。


 極限まで削がれた肉体。

 欲を捨て、執着を断ち、

 ただ一つの“世界”だけを見つめ続けた精神。


 その瞬間、少年は悟った。


「――ああ。そうか」


 目の前に、光が広がる。


「世界って……作っていいんだ」


 彼は、世界を創った。


 ◇


「――起きなさい、勇者」


 鈴の鳴るような声に、アデルは目を開けた。


 そこは草原だった。

 見覚えがある。ありすぎるほどに。


「……チュートリアル草原?」


 思わず口に出る。


「?」


 覗き込んできたのは、白銀の髪を持つ少女。

 ローブ、杖、控えめな胸。

 だがその瞳は、世界を測るように冷たい。


「……第一の魔女因果


 アデルは即座に理解した。


「ようこそ、『理の世界』へ。あなたは――」


「勇者、だろ?」


 少女が目を見開く。


「なぜ……知っているの?」


 アデルは笑った。


「そりゃあな。ここ――

 『魔女♡勇者』の世界だから」


 ステータスウィンドウが展開される。


---


【名前】アデル

【年齢】17

【天職】勇者(※唯一)

【スキル】

・全ルート既知

・イベント予知

・魔女好感度可視化

・フラグ破壊者


---


「……は?」


 魔女が固まる。


 アデルは立ち上がり、空を仰いだ。


 12の理。

 12人の魔女。

 世界を統治する絶対存在。


 だが――


「ゲームじゃないなら、縛りもないよな?」


 彼は宣言する。


「12人全員、救って、愛して、攻略する」


 魔女が息を呑む。


「不可能よ。理は互いに相反する。一人を選べば、他は――」


「知ってる」


 アデルは、はっきりと言った。


「だから――全クリルートを作る」


 これは、

 飢えによって世界を得た少年が、選ばなかった全ての可能性を救う物語。


 勇者は一人。

 魔女は十二。


 そしてこの世界は、彼が“作った”現実だ。


 ――第一の魔女が、微かに微笑んだ。


「……面白いわ、勇者。では、最初の選択を与えましょう」


 世界が、動き出す。

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