コミック書評:『昨日から4年後の自分と同居することになりました』(1000夜連続45夜目)

sue1000

『昨日から4年後の自分と同居することになりました』

タイトルを見ただけでは、何の話だかよくわからない。でも読めば、そのちょっと奇妙な設定と、心のどこかをくすぐられるストーリーの虜になる。そんなコミックがこの『昨日から4年後の自分と同居することになりました』だ。


主人公は大学2年生の谷口悠真。ごく普通の男子学生で、将来のキャリアや友人関係、恋愛まで、どこにでもある普通の悩みを抱えている。そんな彼の生活に突然割り込んでくるのが通称「四つ上」、4年後の自分自身だ。


ある日悠真が独り暮らしの部屋に帰宅すると押し入れから物音がする。勇気を振り絞って開けると、なんとそこから自分そっくりの男が。互いにパニックになる二人だが、彼が「4年後の未来の自分」であることが判明するのだ。

"四つ上"は、宅配便を受け取ったり、同級生の佐伯美月に見られたりするので幻覚ではない。だが、彼は透明な壁に阻まれ部屋から出ることができず、部屋に閉じ込められてしまっているという設定だ。


ここからが本作の醍醐味だ。四つ上の悠真は、未来の出来事を直接は語らない(過去に干渉しすぎると自分が元の世界に帰れないことを危惧している)。ただ時折、悠真との会話のなかで、ふとしたアドバイスを投げる。例えば、美月にアプローチしようか迷う悠真に対して、「少なくとも俺は、その選択をしても後悔はしない」と曖昧に背中を押す。その一言がきっかけで、悠真は一歩踏み出す。つまりこの漫画の面白さは、未来を明確に教えてもらう便利さではなく、「少しだけ成長した自分」という存在が見える化されることで、自分自身と向き合うことを表現しているところにある。


サブキャラクターも魅力的だ。悠真の親友・久保翔太は、四つ上と一緒にゲームをするのが好きなお調子者(もちろんその間、悠真は押し入れに隠れている)。ゼミの先輩・藤堂理香は、四つ上の落ち着いた雰囲気に惹かれてしまい、悠真を焦らせる。こうした日常コメディの掛け合いが、作品全体を軽やかに彩っている。


しかし笑いの背後には、読者自身への問いかけが潜む。四つ上はときに、「俺がこの時期にもっと頑張っておけば」と、言葉の端で後悔をにじませる。具体的な失敗は語らないが、その含みが読者に「もし4年後の自分がここに現れたら、なんと言うだろう」と考えさせる。成長を信じる勇気や、自分自身への責任を突きつけられるのだ。


『昨日から4年後の自分と同居することになりました』は、日常コメディの体裁を取りながら、成長のためのマインドセット的な視点を忍ばせた稀有な作品だ。

未来の自分に*答え*を教えてもらうのではなく、「今の自分がどう動くか」を見つめ直すこと。それは誰にでも応用できる考え方であり、読み終えたあと「自分の四つ上」に会ってみたくなるだろう。あるいは「四つ上に胸を張れる生き方をしたい」と思うかもしれない、そんな優しい寓話でもある。


本作は、おそらく『ドラえもん(セワシ君)』をよりリアルな状況に再構成することを意図したコメディであり、同時に青春物語として成立させた作品だ。

ちょっとだけ成長した自分がそばにいるという発想のユニークさと、それを笑いと感傷で包み込むバランス感覚が光る一冊だ。










というマンガが存在するテイで書評を書いてみた。

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