17歳男子高生と32歳主婦の境界線

みさき

第一章:インスタグラムの向こう側

32歳のカレンは、結婚して6年目。子供はいない。夫とは穏やかで、時に物足りなさを感じる日々を送っていた。趣味はインスタグラムでのコーディネート投稿。フォロワーはそこそこ多く、コメントやDMが届くのは日常茶飯事だった。


ほとんどが「美人ですね」「スタイルいい」といった、下心が透けて見えるような容姿を褒めるものばかり。彼女はそれに慣れ、むしろ空虚さを感じていた。


そんなある日、一人のユーザーから、いつもと違うコメントが届いた。


晴人:「今日の弁当、彩りが素敵です。きっと手間かけて作られたんですね。器も可愛い。」


弁当? カレンは投稿したコーディネート写真の隅に写り込んだ、手作りのお弁当に気づいた。誰も気に留めないような部分を、丁寧に褒めてくれた。珍しい。彼女は思わずプロフィールを覗いた。晴人(かなた)。20歳、大学生。投稿は少なく、風景や読んでいる本の写真が中心。爽やかで、どこか大人びた印象を受けた。


何気なく「ありがとうございます。お弁当作るの、私の癒しなんです」と返信すると、すぐに返事がきた。


晴人:「料理が好きなんですね。僕も最近、自炊を始めました。カレンさんの投稿、いつも楽しみにしています。服のセンスも素敵ですが、そういう生活感のある部分が、とても魅力的だと思います。」


心の琴線が触れた。コーディネートではなく、「カレン」という人間の一部分を見てくれている気がした。


メッセージのやり取りは、日を追うごとに増えていった。料理の話、好きな音楽、読んだ本の感想。彼は驚くほど感受性が豊かで、会話が尽きなかった。


カレンは、久しぶりに心が躍るのを感じた。夫との会話では失われていた「知りたい」という欲求が、晴人とのメッセージの中で甦った。


メッセージだけでは物足りなくなった。会いたい。そう伝えると、晴人もすぐに同意した。


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