第4話 匿われてから10年後

とある和風民家の縁側に座って佇んでいる少年が1人。


ここには俺以外居ない。俺だけの場所。俺だけの世界。俺だけの・・・


「ここにかくまわれてから10年目になるかぁ・・・・」


俺がこの神々の世界・・・・・・《神界》に匿われてというか神界と下界を行き来して10年の年月が経った。


爺ちゃんが俺の事をかくまってくれてから、婆ちゃんに言われた通りに一生懸命に俺が赤ちゃんの時にアソコに捨てられていた訳を探してくれたんだ。


俺がアソコにいた理由なんだけど、俺は世界で有数の経済力を持った子供だったみたい。


すぐに俺の出自を当てた後、爺ちゃんと婆ちゃんが母さんと父さんの元に連れて行ってくれて今の状態があるらしいんだ。本当、爺ちゃんと婆ちゃんには感謝だね。


今、自分は爺ちゃん達各神話の最高神達が創ってくれた日本建築の民家にいる。そして、民家の縁側に座ってポケーとしている。


「たまにはこういう日があってもいいよねぇ〜」


齢10歳が放つ言葉とは到底思えないことをともなく呟き、風に流される。


下界と違い風が吹いているわけじゃないけど、俺は風を感じるかのようにして目を閉じる。

これが下界だったら鳥のさえずりとか人の声とかが聞こえるんだろうなぁと思いながら。


そうして流れに身を任せていると急に後ろから誰かに触れられた感じがした後、前のめりに押し倒される。


「ふぎゃっ!?」


俺は変な声を出して座っていた状態からうつ伏せに倒れる。


「相変わらず神威くんは可愛いね〜」


押し倒してきた人物はうつ伏せ状態になった俺の頬を指でフニフニとつつきながらそう言ってくる。


「いつもやめてって言ってるよね!?アス姉!!」


俺は押し倒してきた人物ことアス姉にうつ伏せ状態から訴えるように少し強い口調で言う。


「アハハッ。神威くんが怒った〜。けど、やめないよ。だって神威くん可愛いし」

「アス姉・・・」


俺は呆れた声で言いながら起き上がる。


「よく、飽きないね・・・」

「もちろん!だって私にとって神威くんは弟みたいなものだもん!」


そうビシッ!と親指と人差し指を広げて神威に向けながら言ってくる彼女は日本神話の最高神。太陽を司る神として広く人口に膾炙している《天照大御神》。


俺にとって、この神界での姉的存在。自分が日本人だからか日本の神々方とは仲良く出来ていて師弟関係や兄・姉として慕っている神々が多い。


「だとしてもだけど!?」

「あーらら。相変わらずアマテラス様に絡まれてるね、神威」

「まぁ、アマテラスは神威君のこと気に入ってるからね。仕方ないよ」

「ルト!?それにアト兄さんも!?」

「あら?2人とも珍しいじゃない」


俺がアス姉にツッこんでいるとさらに後ろから声が聞こえた。俺は聞こえた方へと体を振り返った。すると、そこに居たのは一番の親友であり相棒的存在のルト。その隣にはアルビノのような白い肌に耳元に蛇のピアスのようなものを付けた人物。マヤ・アステカ神話の最高神。マヤ・アステカ神話の創造を司る《ケツァルコアトル》様がいた。


「ルトが神威に会うと言ったからね。ついでに僕も久しぶりに会おうかと思っただけだよ」

「神威は今、学校の寮じゃなくて家に戻ってるからね。安否確認に近いかな」

「なるほどね。それで2人が一緒に来たわけね」

「来たならアス姉のこと離してほしかったんだけど?」

「ごめん、過去にそれで痛い目にあったから無理」

「こんの裏切り者〜・・・・」


俺は来てくれたらルトとアト兄さんに目で助けれてくれと訴える。けれど、アト兄さんは苦笑いで肩を竦めてルトは前にも助けた時に痛い目にあったから手でごめんと形を作ってバッサリと切られた。俺はそれに対して軽口を叩きながら未だにフニフニしてくるアス姉の手をのける。


「ほっほっほ。神威はアマテラスといると本当の姉弟のように見えるの」

「アンタねぇ・・・・気に入ってるからってここに頻繁に来ようとするんじゃないよ」


またもやこの場にいる4人以外の誰かの声が聞こえる。後ろの方から聞こえたため俺はバッと後ろを振り返ったが誰もいなかった。


「・・・・あれ?い、いない?」

「でも、確かに声は聞こえたわよ?」

「横じゃよ。横」


俺とアス姉は誰もいなかったことに顔を見合わせて首を傾げていた。そして頭を唸って考えていたらまた声が聞こえたため横を見た。そこには縁側に佇んでいる二柱の神がいた。


「って爺ちゃんに婆ちゃん!?」


爺ちゃんと婆ちゃん・・・・・・もといギリシャ神話最高神である天空のゼウスと、その妻であり結婚を司るヘラがいた。



なんでいるの!?いつも来るのはアス姉だけだよね!?今日に限ってなんでこんなに最高神達がこの民家に集まるわけ!?



「ゼウス様にヘラ様じゃないですか。そうですよね!やっぱり私と神威くんは姉弟のように見えますよね!!」

「えぇい!うるさいわい!多少は静かにせんか!神威が絡むと途端ポンコツになるんじゃない!!」

「・・・・・・これぞ正にバ神かな」

「ちょっと!?ルトくん!?」

「言い得て妙だねぇ・・・」

「ヘラ様!?」


アス姉が爺ちゃんに鬼気迫る勢いで迫る。それを見た爺ちゃんが近づいてくるアス姉の頭をポカッと叩きながら落ち着かせる。その様子を少し離れたところでアト兄さんと見ていたルトがボソッと呟いた。そのためで、アス姉がとっかかろうとしたら婆ちゃんがそんな事を言ったが故にアス姉は膝と腕をついてショックを受けている。



仕方ないか。ここは俺が一肌脱ぎますか!それで多少立ち直ってくれたら嬉しいんだけどな。



「そりゃあ、俺だってアス姉達のことを本当の姉や兄とか思ってるから実質、俺にとっては第2の家族で故郷みたいなもんだよ。確かにアス姉達は母国の神話だし親しみもあるから特に仲がいいし」

「神威くん・・・・!」



まぁ、アス姉は他の神達と違ってスキンシップが激しい気もするけれど俺はそれさえも受け入れてるから問題ないし。アス姉がこうやってこっちにいると絡んでくれるからついつい用事がなくても来てしまう。



アス姉は俺からそう言われて目を輝かさせて立ち上がる。すると、手を伸ばしてきてそのまま俺はアス姉にギュウーっと抱きしめられる。


「ちょ、ちょっと、アス姉!!恥ずかしいから!!」

「ダーメっ。神威くんはこのまま私に抱かれているのです」

「なんで!?」

「・・・・珍しいね。神威がここまで誰かにからかわれてるのを見るのは」

「そんなこと言ってないで助けろよ!?」


俺はアス姉に抱きしめられてから顔を真っ赤に染めている。俺が抱きしめて抵抗出来ない状態でアス姉に訴えると案の定アス姉は力を強めてきた。

ルトはさっきと同じように俺らのことを見ながら心底驚いた様子でそんなことを俺に向けて言ってきた。俺はそんなことはどうでもいいと言わんばかりに助けを求めたが顔を逸らされた。



ちくしょう、裏切り者め!



この様子を爺ちゃんはほっほっほと笑いながら見てるしさ!婆ちゃんとアト兄さんはまるで微笑ましいものを見る目で見てくるしなんなの!?俺は愛用動物じゃないから!!いやまぁ、神からしたらそうかもしれないけどさ!



そんな状態で俺は顔を染めて、アス姉になすがままに頭を撫でられたりしながらかれこれ30分くらい経ったところでようやく爺ちゃんが止めてくれた。


「そろそろいいじゃろ?アマテラス。このままやると羞恥でオーバーヒートしてしまうぞ?」

「そうだねぇ。今でさえ湯気が出てもおかしくないくらい真っ赤に染めてるんだしねぇ」

「あぅ、うぅぅ・・・・・・」

「そうですね。名残惜しいですけどもうやめましょうか。これで倒れたら申し訳ないですし」


そうして俺は解放されたが未だに羞恥心は消えず顔を染めたまま俯きしゃがむ。


数分したら顔の熱は収まってきたためようやく顔を上げる。顔を上げたときにはもうアス姉以外は居なくなっていた。


「あれ?皆帰ったの?」

「えぇ。私は一応ね」

「そっかぁ。じゃあ、俺もそろそろ下界におりるね。流石にこれ以上は父さん達が心配するから」

「分かったわ。それじゃあ、またね」

「うん!また来るね!」


俺はそういって服の内ポケットに入れていた宝玉を取り出して上に掲げる。すると俺は光に包まれてその場から消え去る。

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