トゥモロー・ネヴァー・ノウズ/宮野優
作品リンク:
https://kakuyomu.jp/works/16817139557634186477
このレビューは小説のネタバレを含みます。
企画にご参加いただき、ありがとうございます。
まず、書籍化作家の方にご参加いただけるとは思っておらず、典型SFの持つ魅力を改めて実感いたしました。
時間を扱う題材は非常に難しく、特に単一キャラクターによる時間逆行は構造が複雑になりがちです。著名な作品としては『シュタインズ・ゲート』や『Re:ゼロから始める異世界生活』などが挙げられますが、いずれも高度な設計が求められます。
本作は、多視点で時間逆行に向き合うという大胆な挑戦を行っており、視点切り替えによって新鮮さを保ち、ループ疲れを軽減できる一方で、論理の自己整合性に対する難度を大きく引き上げています。まさに inferno 級の難易度だと感じました。
読者として最も強く心を掴まれたのは第一話です。
世界観そのものがキャラクターを前へ押し出し、後戻りできない状況へ追い込んでいく構造が非常に印象的でした。私自身、娘を持つ父親として、強い没入感を覚えました。もし自分が同じ立場に置かれたら、理性を保てる自信はありません。
一方で、犯罪描写のスケールについては考えさせられる部分もありました。描写があまりに生々しいと、模倣犯を生むのではないかという懸念を抱いたのも事実です。ただ、その点については書籍化の際に修正が加えられていることを後から知りました。
つまり、作家と犯罪者の間には紙一重の距離があるのではないか、と個人的に考えたこともありますが、父親という立場からすれば、「それでもこうあるべきだ」と思わされる説得力がありました。
一点、第一話で違和感を覚えた部分があります。
タクシー運転手は異変に気づいているにもかかわらず、事件現場である病院の職員たちが特に異常を察知していないように見えた点です。
あるいは、ためらいを見せていた看護師はすでに気づいていて、あえて演技をしていたのかもしれません。
または、運転手の言葉どおり、「距離が近い者から同化されていく」という解釈も成り立ちます。
そうした疑問を抱えたまま第四話を読み進め、「37回目」でようやく病院関係者も同化されていくことが示唆され、相対的に運転手の気づきが早かった一方で、病院側の描写が控えめだった点が少し気になりました。
運転手が言及していた「ニュースで誰かが飛び降りた」という話から、すぐに主人公の自殺との因果関係を連想できたのも非常に印象的で、この種の“循環”の使い方はとても好みです。
結末の収束については、第一話と比べると、視点が「死の天使」に移ったことで、全体としてとても柔らかい回収になっていたと感じました。
ただ、第一話で提示されたスケールの大きさを踏まえると、個人的には、
いつか世界が正常に戻り、全員の記憶が完全に同期した結果、
狂ってしまう者、改心する者、日常に戻れない者が現れ、
そして最後に、屋上の縁に立つ主人公だけが残される――
そんなオープンエンドも見てみたいという気持ちがありました。
本作はすでに書籍化という形で高く評価されている作品ですので、あくまで世界観に強く惹かれた一読者としての小さな想像にすぎません。
もし将来、映像作品としてのメディア展開があるとすれば、その方向性も一つの可能性として面白いのではないかと思います。
失礼にあたりましたら、どうかご容赦ください。
改めて、企画へのご参加に感謝いたします。
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