青い鳥

三田静香

第1話

私は息を切らしながら車両に乗った。


間に合った…


今日の1限の授業を受け持つ教授は、親子関係の心理に精通している方だ。授業には絶対に遅れたくない。


ガラガラの車内を見渡し、朝日が眩しく差し込む方向に目を向けると、1羽の青い鳥が頭を傾けこちらを見つめていた。


「電車発車します」


ぶっきらぼうな車掌のアナウンスが流れ、ぐらっと身体が歪んだ。


よろけた勢いでいつもの座席に座る。

ドスンと私の身体より先にパンパンに詰め込んだリュックが音を立てて座席に着き、リュックの中の水筒がカチャン鳴った。


まだ胸が上下する。呼吸が浅い。朝日に目がくらくらする。目眩の奥で、あの美しかった青い鳥が目に焼き付いている。


小学校の卒業式の日、母の支度に痺れを切らし玄関を飛び出した。見慣れないローファーを履いた自分の足がとてもオシャレに感じ、お姉さん気分で門柱に寄りかかり、少し気取りながら眩しい朝日に手をかざす。


ふと我に返り、照れながらまた目線を真新しいローファーに戻すと足元に青い鳥が止まっていた。

びっくりしたと同時に足を動かさないように必死に止めた。

小首を傾げ青い鳥は朝日に照らされ、柔らかい羽毛はキラキラと輝き、深い瞳に釘付けになった。


「真澄!!!!!!!」


と私を探す母の声にハッとし、慌てて足元に目線を戻したが、青い鳥はいなかった。


母が死んでから今年で5年。


私は分厚い参考書を取り出し、電車の揺れに身を任せながら本の虫になる。

来年には院生だ。今は兎に角勉強だ。


朝日に照らされ、参考書の文字が黒く光っていた。

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青い鳥 三田静香 @sizuka_mita

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