不完全な俺を照らしてくれた君という光

桜庭 結愛

プロローグ——カンペキで天才の俺

 カンペキ――何度そう言われただろう。

 勝手に期待され、勝手に希望を押し付けられ、挙げ句の果てには「当たり前」で片付けられる。

 俺の努力は誰も見てくれない。結果が全てだった。


「なぁかける。この間のテスト何点だった?」

「……100点だよ」

「やっぱさすがだな!天才はいいよなー」


 天才――この言葉を言われて本当に喜ぶやつはいるのだろうか。俺は全く嬉しくない。やはり、俺の努力は誰にも伝わらないものなのだ。

 確かに、俺は人より優れているものが多い。運動しても勉強しても――何をしても求められている以上に成果を出す。そんな生まれ持ったスキルがあった。

 だけど、初めは"ただできる"だけ。"カンペキ"ではない。カンペキにするために何度も努力を重ねているのだ。

 そんな密かな努力は誰も知らない。だから天才って言葉で片付けられる。


 でも――ただ一人だけ俺の努力を見てくれている人がいるのだ。

「駆くんまた100点だったの!?ほんとすごいね!」

 初めはみんなと同じ類だと思っていた。どうせ結果だけを見ているのだと。でも彼女は違った。

 

 あの日、俺は彼女と二人で帰っていた。ひんやりとした風の中を並んで歩いている。不意に俺はぽつりと言葉をこぼした。

「俺は天才らしい。だからなんでも出来て当たり前なんだ」

 彼女はその言葉を聞いて目を大きく見開いた。そして息をふーっと吐いて、小さく小さく言葉にした。

「天才かー……私その言葉好きじゃない」

「え?」

 彼女の言葉に今度は僕が目を見開いた。

「だってさ、それじゃ駆くんの努力を知らないのと同じじゃん」

「努力……」

「私、知ってるよ」

 俺は彼女の言葉に首を傾げた。すると彼女は優しく微笑んで、合図のように頷く。

「駆くん、家でもずっと勉強してるんだって私のお母さんが言ってた。それにね、体育祭の前、駆くんが公園で一人練習してるところを見たことがあるんだ」

 俺は予想していなかった言葉に思わず歩みを止めた。彼女は少し先のところで足を止めて振り返る。

「これだけは覚えといて。私は駆くんのこと天才だと思ってないよ。もちろんすごいとは思ってるけどね」


 あの日から俺は、彼女だけを特別な存在として認識していた。隣に座る彼女の席だけ輝いて見える。彼女の存在が一際目立って見えた。

 ――ほんと、"光"そのものだなぁ。

 クラスメイトに囲まれている彼女を見ながらそう思うのだった。

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不完全な俺を照らしてくれた君という光 桜庭 結愛 @Yua_Sakuraba

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