脚本 ネザーワールド・リヴァイヴ(冥界蘇生)~二羽の鴉(からす)と神託の遊戯盤~
たくみふじ
第1話 「関ヶ原に堕りた二羽の鴉」
【登場人物】
北條孝子(17):横浜の進学校に通う高校二年生。昭和初期の映画のような古風な言葉遣い。元・地獄の囚人。
高清水凉子(17):神戸の名家令嬢。緩やかなウェーブの栗色の髪。堕天使。神戸お嬢様言葉(神戸弁)を話す。
ガーディ:孝子の相棒。元・地獄の番人。長身痩躯で影のように付き従う。
詫間亨(25):凉子の相棒。若き天才発明家。実業家として凉子を技術支援する。
郷田:関西侠友連合の若頭。白いスーツを愛用する武闘派。
【本編】
〇関ヶ原・旧リゾート施設跡地(夜・雨) 激しい雨が芝生を叩き、闇の中に広大なリゾート施設が沈んでいる。 東から「関東鋭爪会」、西から「関西侠友連合」。 合わせて三千人の組員たちが、日本刀、拳銃、バットを手に殺気をみなぎらせて対峙している。 これは抗争ではない。現代に蘇った「戦」だ。
〇同・クラブハウス・VIPルーム 豪華なシャンデリアが揺れる暗い部屋。 北條孝子が窓の外、雨に濡れる戦場を静かに眺めている。 背後の闇から、長身のガーディが音もなく現れる。
ガーディ「お嬢様。そろそろお時間です」
孝子(優雅に振り返り)「ごきげんよう、ガーディ。外は、ずいぶんと物騒な様子ですわね」
孝子の言葉は、まるで昭和三十年代の映画のようだ。
ガーディ「半径一キロ以内に千五百。連中の親玉は地下のワインセラーです」
孝子(鈴を転がすように笑うが、瞳は冷徹)「結構ですわ。わたくしは、わたくしのやり方で、彼らを『懲らしめ』てさしあげますわ」
孝子は制服のポケットから細い金属の棒――地獄の鉱石でできた「千枚通し」を取り出す。 さらにガーディから受け取ったケースを開け、日本刀の柄のようなグリップを握る。 そこから、圧縮された地獄の炎が「赤い光の刃」となって迸る。
孝子「さあ、始めましょう。わたくしたちの、お遊戯の時間を」
〇同・東棟・スイートルーム 対照的な、ハイテク機器が並ぶ清潔な室内。 高清水凉子がヘッドセットの調整をしている。 栗色の髪を揺らし、高級ブランドの制服を隙なく着こなしている。
凉子「亨さん。先方の配置、もう少し解像度を上げられますこと?」
亨(通信)『御意に、凉子様。サーマル映像を眼鏡の右上に投影しますわあ。主力は中央のクラブハウスですな』
凉子の眼鏡には敵の熱源がグリッド状に表示される。
凉子「屋上プールサイドに遊撃隊が三十……。邪魔ですわねえ。彼らをわたくしのトレーニングの『前菜』にいたしますわあ」
凉子はバルコニーから夜の闇へ、重力を無視して音もなく飛び降りる。
〇プールサイド 下品な笑いを浮かべる組員たち。 そこへ凉子が優雅に舞い降り、一礼する。
凉子「ごきげんよう。皆様には、少々、眠っていただきますわあ」
スカートのベルトから抜いた「ショック棒」の先端を、一番近い男の首筋に当てた。 バチッ!青白い閃光。男は悲鳴も上げず即死する。 凉子はさらに金属製の鞭を振るう。鞭は青い電流を纏い、蛇のようにのたうつ。
凉子「さあ、パーティーの始まりですわあ。悪は即座の『消去』。それが、わたくしの論理ですのん」
〇戦場全域 花火の合図と共に、三千人の怒号と銃声が関ヶ原の夜を支配した。 血と泥の地獄絵図。だが、その中に二つの異質な「死の領域」が生まれる。
(東の領域) 赤い閃光が走るたび、男たちの悲鳴が上がる。 孝子の電光剣は一撃で殺さない。神経だけを破壊し、最大限の苦痛を与える。
孝子「あらあら。皆様、トレーニングにしては少々、張り合いがございませんわね?」
(西の領域) 青い稲妻が奔るたび、男たちは黒焦げになり、苦しむ間もなく消し飛ばされる。
凉子「まあ、これではトレーニングにもなりませんわあ。亨さん、もっと骨のある方はいらっしゃらないのん?」
不意に、二人の少女がそれぞれの超感覚で「対極の存在」を察知する。 孝子は西の空の青い光を、凉子は東の闇から聞こえる低い呻き声を。
孝子「(独り言)あら……あの匂い」
凉子「(眉をひそめ)美しくない音……」
〇夜明け・岡山(桃配山)の麓 霧が立ち込め、生き残った数百人の組員たちが呻いている。 関西侠友連合の郷田が泥にまみれ、眼下の惨状を吐き捨てる。
郷田「地獄やで。……相打ちやない、これは『間引き』や」
テラスで、千枚通しをハンカチで丹念に磨く孝子。血の一滴もついていない。
孝子「ガーディ。西の方から、秩序の匂いがいたしますわ」
ガーディ「恐らくは、天の眷属。我ら地獄とは対極の存在かと」
孝子(妖艶に微笑み)「わたくしのお稽古相手に、相応しいかもしれませんわね」
一方、数キロ離れた高速道路のSA。車内でマドレーヌを食べる凉子。 モニターには、東の陣営で録音された絶叫が流れている。
凉子「……美しくありませんわあ。下品ですこと」
亨『地獄のカテゴリーに分類される呪い。排除すべきノイズですな』
凉子「ええ。次に会ったら、わたくしの雷で浄化してさしあげますわあ」
〇エピローグ的なカット 横浜の平凡な家庭。両親と昭和のドラマについて微笑みながら語らう孝子。 神戸の豪邸。神聖なバッハをヴァイオリンで奏でる凉子。 二人のスマートフォンに同時に、同じ紋章の通知が届く。
孝子「あら、新たなお仕事かしら?」
凉子「……ターゲットは、横浜?」
テロップ:『神託(オラクル)』が導く、遊戯の始まり。
(暗転)
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