勇者の魔女~輪廻の旅の果てに復讐に染まった少女は……~

ただの小林

【序章】再起~魔女の里と精霊王

1 魔女の里

 魔王マーラは強かった。

 直前の破壊の魔女戦の疲労があったとはいえ、魔王マーラはサクラたちをまるで赤子のように扱い、そして次々と倒していく。

 その後、真の姿へと覚醒――。クオンがいなければ確実にサクラたちはあの場で殺されていたと思う。

 そして、破壊の魔女――サクラの実の母である『癒しの魔女』マヤの最後の力をもって――。






「……う、ここ……は?」


 瞼をゆっくりと開き、最初に視界に映ったのは白く広がる天上だった。

 その白さは黒一つない純白そのものであり、なぜかどこか不気味さを感じてしまう……。


「僕は……っ――」


 周りを見渡すと最低限のシンプルなデザインの家具が設置されている部屋にサクラは寝ていたということまでは理解した。

 しかしサクラは先程まで魔王城にいたはず。

 破壊の魔女――実の母である『癒しの魔女』マヤと戦っており、その後に復活した魔王マーラと対峙、そして敗れた。

 クオンが真の姿を現して魔王マーラと応戦し、その間でマヤに最後の力を託され、その後にクオンの力でサクラを含めた一行は転移させられた。

 つまりメニシアたちはサクラが今いる場所にいるのか……それに――。


「クオン――!」


 勢いよく体を起こして辺りを見渡す。その表情は焦りを隠せていない。

 サクラたちを転移したのはクオンの力。つまり当のクオンはまだ魔王城にいるはず。 

 だが、その考えは杞憂に終わった。


「ぅ……なぁにぃ……」


 声のする方に視線を移す。そこはサクラが寝ていたところの真横。

 同じ布団の下に人の姿・・・をしたクオンが寝ていた。


「クオン……」


 サクラの声色は先程と打って変わって明らかに安心しきったものだった。

 そのサクラの声で目覚めたクオンは、ゆっくりと身体を起き上がらせると、眼を擦り周りを見渡しながら視界にサクラを整える。


「あ、サクラ……おはよ~」


 寝起き相応の声でサクラに挨拶をするクオン。

 肩にかからない程の綺麗な白髪は寝ていたからかボサっとしている。

 その声はとてもではないが、先程まで・・・・魔王と激闘を繰り広げていた者の声色には到底思えなかった――。






 完全に覚醒したサクラはベッドから起き上がろうとするが、力が入らない。

 クオンは想定内だったようで、その口から衝撃的は発言をサクラに告げる……。


「……今、なんて?」

「だから一週間だって……サクラが寝ていた期間が……と言っても私も気を失っていたけどね……」


 魔王城からの転移で飛ばされた場所に気を失っている状態でサクラとクオンはその場所に住まう者に発見された。

 そのままサクラたちは保護され、クオンは翌日には目を覚ましたのだが、サクラは先程クオンが言った通り一週間ほど眠りについていた。


「魔力を多く消費したのもそうだけど、肉体面と精神面の疲労が重なったからかな? でも流石に一週間は私も心配したよ。このまま起きないんじゃないかって」

「それは……ごめん。だけどここはどこなの?」

「ああ、それは――」

「――魔女の里じゃよ」

 

 声のする方に視線を移す。

 そこには一人の女の子が立っていた。

 少女はサクラが身に纏う着物のような服装であり、少し派手な装飾も散りばめられている。


じゃん! おはよう」

「おはようクオン。それにサクラも……」

「何で僕の名前を……ってクオンが話したのか」

「うん。流石に状況が状況だからね。それと長が言っちゃったけど改めてサクラの質問に答えるよ。ここは魔女の里。名前の通り魔女が住まう里だよ――」





 ――魔女の里。

 火大陸に存在する魔女が住まう隠れ里。

 魔女と名が付く者の男の魔法使いのみならず、魔法が使えない一般人も普通に暮らしている。

 都会や田舎の町と比べて人口は少なく、外の人の出入りも激しくない。

 しかし、全く交流していない訳ではなく、一定の交流は保たれている。

 流石に今回のサクラたちのようなケースは想定外すぎるのだが……。

 先程目覚めたサクラは、クオンと長と呼ばれた少女の手を借りることで何とか立ち上がり、ゆっくりと別の部屋へと移動する。

 移動先の部屋にあるふわふわとした座椅子に腰掛けるよう促され、ゆっくりと腰を掛け背に持たれた。

 今のサクラにとって背に持たれるだけでもどこかリラックス効果がもたらされる。相当な疲労がサクラの身体に溜まっていたのだろう。

 用意された飲み物もリラックス効果を生むハーブティーであり、温度も飲みやすいように入れられている。

 匂いや温かさが身体のみならず心も癒していくようだ。


「改めて、わらわはこの魔女の里の長を務めるアサガオじゃ。よろしくなサクラ」

「……どうも」


 今思うと、静かな場所でこうして面と向かって自己紹介されたのは何だかんだ初めての事かもしれない。

 それもあってサクラも微妙に反応に困ってしまった。


「クオンから色々と聞いた……まさか魔王が復活するとはな……災難であり、災厄最悪じゃな」

「長は魔王の存在は認知してたんだ」

先代・・のは流石に直接は知らぬ。現代のは妾の娘・・・が大きくかかわっていたからのぉ」

「……ねぇ、長っていったい何歳なの?」


 先代という単語と言い、妾の娘と言い、サクラの目の前にいる少女から出て来るような単語には到底思ない。

 むしろサクラより年下にも思えてしまう。

 流石にモネとネロ程まではいかないが……。


「もうずっと数えておらぬが……まあ、軽く数百年の時・・・・・は生きておるぞ」

「……は?」

「だから、数百年だと言っておるだろう」


 にわかには信じられない。

 目の前の明らかに少女の見た目をした人物が数百年生きる人物だなんて……近くに天使のサワンマイラやその親友のエルフであるフウカなど、数百年の時を生きる人物を知っているからそれだけだったら特に驚きはない。

 だが、それは彼女らが天使、エルフという種族だからだ。

 目の前の少女は明らかに人間族。

 しかし、サクラは大事なことを見落としていた。

 それはここが魔女の里であるということ。そして目の前の少女がその里の長であるということを――。


「……!」

「ようやく気付いたかのぉ……。お主が思う通り、妾は魔女……長き時を生きる、魔法使いなのじゃ――」

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