第2話 森の修行


森の奥に入ると、空気はひんやりと静かだった。

風が木々を揺らし、葉のざわめきが耳に心地よく響く。

追放の痛みと怒りが胸に残るが、ホルスは足を止めた。


「ここなら、誰にも見られない……」

彼は地面に膝をつき、手のひらを広げた。

心を集中させ、スキル「強化」を自分にかける。

小さな光が手のひらに生まれ、静かに揺れた。


最初は微かに体が温かくなる程度だった。

だが、次第に力が体中を駆け巡る感覚があった。

心臓の鼓動が早まり、視界の端が鮮やかに広がる。

「……な、なんだこの感覚……!」


ホルスは驚きと興奮で声を上げた。

これまで弱いと嘲られた自分が、少しずつ変わっていく。

力の波が体を包み、腕の筋肉が小さく震える。

手にした小枝さえも、握るだけで重みが増したように感じた。


「これなら……戦える!」

心に炎が灯る。怒りと希望が混ざり、強烈な決意となった。

森の中で、一人、ホルスは何度も「強化」を重ねた。

そのたびに身体は軽くなり、動きが鋭くなる。


やがて、彼は跳び上がり、地面に着地した。

衝撃は小さな石を砕き、葉を散らした。

笑みが自然と零れた。「俺、強くなってる……!」

これまでの屈辱が、少しずつ力に変わっていった。


時間を忘れ、ホルスは森で自分を試す。

枝を振り、跳び、回避し、思いのままに力を使う。

心地よい疲労が体を満たし、満足感が胸に広がる。

「誰も俺を馬鹿にできない……」


小鳥のさえずりが祝福のように響き、

木漏れ日が体を優しく照らす。

孤独な修行の中、少年は自分の可能性を知った。

力を信じること、それが何より大切だと。


「さあ、世界よ……覚悟しろ」

ホルスの目は輝きを増し、力強く前を見据える。

追放された少年の旅は、ここから本格的に始まった。

孤独も、痛みも、全ては未来への布石に変わったのだ。

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