孤独な付与術士、力を超えた日
塩塚 和人
第1話 追放
ホルスは13歳、付与術士として学院にいた。
だが、彼のスキル「強化」は周囲に比べ、あまりに微力だった。
仲間は誰も彼を認めず、冷たい視線を向けていた。
「こんな力では、何もできん!」
師匠の声が、ホルスの胸を深く突き刺す。
クラスメイトの笑い声が耳にこびりつき、
目の前の黒板の文字がぼやけて見えた。
「追放だ」
学院長の言葉は、静かで残酷だった。
その瞬間、ホルスの世界は音を立てて崩れた。
誰も味方はいない。信じてくれる者もいない。
彼の足元から、冷たい風が森のように吹き抜けた。
涙が頬を伝うが、拭う余裕さえなかった。
ただ、胸の奥で小さな炎が揺れた――。
「俺は、まだ終わっていない……」
悔しさと怒りが混ざり合い、鼓動は速まる。
学院の門を出ると、見慣れた景色が歪んで見えた。
すべてが敵のように思えた。
宿屋も町の人々も、ホルスには冷たく感じられた。
だが、ひとり森の方角を見つめ、彼は小さく息を吐いた。
「ここからだ……」
自分にできることを、ひとつずつ試すしかない。
追放された者の孤独は重く、暗い。
しかし、その暗闇の中で、まだ誰も見ぬ力が眠っている。
ホルスは知らなかった。
この小さな少年の内に、世界を揺るがす力があることを。
深呼吸し、彼は歩き出した。
冷たい風が背中を押す。
「強化……俺が、自分を変えてみせる」
森の入口に立つと、緊張と期待が入り混じる。
小鳥の声が遠くで響き、木漏れ日が揺れる。
孤独な追放者の、最初の一歩だった。
誰も知らない、ここから始まる物語――。
笑う者も、嘲る者も、すぐに驚くことになる。
ホルスは拳を握り、心の炎を燃やした。
「もう、負けない……」
13歳の少年が、静かに、しかし確かに決意した瞬間。
未来への第一歩は、こうして始まった。
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