透明
@komaryo1121
透明
・緑
舌先で、鮮やかな甘さが弾ける。
グラスの曇りを、指の名残りが滑る。
喉を焼き、へばりつく。
埃が薄く積もる、窓際の硬い緑。
向かい合うが、主語のない言葉を放り合う。
青いラインが入ったストローには、いくつも歯型が付き、ズー、ズーと震える。
ブブン、ブブ、ブブン...。と、グラスの中が波立つ。
並ぶ数字に、さめた緑。
喉が凍みる。
二度、咳が白く宙に浮かぶ。
ぬめる額を手のひらで拭うと、肌が痺れる。
指先から、それが延びていく。
・黄
淵が、にぶく光る。氷が崩れる。
熱を帯びた手のひらが湿る。
種ごと断たれた、レモンを搾る指に震えと毛穴、
短く太い毛に付く水滴と銀が白く光る。
声と笑いが、空気にひそむ。
クリーム色のそれは、
酸味を残して白い陶器の淵に佇む。
短針が、垂直に近づく。
透き通る苦みをあおると、
奥からの生温かさで、視界が涙でにじむ。
手のひらが汗ばむ。
・青
ベッドに抜け殻。コーヒーを下り落とす。
画面に顔が映る。
少し遅い始まり。薄い青が広がる。
舌が何かに触れる。
指の腹に乗る、青を失った、千切りキャベツのかけら。
それを、流し込むコーヒーに喉が縮む。行方を知る。
テレビを消す。
グレーのカーテンが揺れる。
青は濃くなり、湿った白が淀む。
『ひさしぶり〜
元気?』
飲み切り、サナギに戻る。
それが内側から侵蝕を始める
・赤
7 2 5 4…。
× ÷を与える。8 5 2 3...。
手のひらの窪みが円を圧し、湿る。合皮に指の腹がぬめる。
2台が過ぎる。
視界を赤が塞ぎ、思考を塗り潰す。
垂れる夜に、白が散らばる。
ガラス、排気音とハネの震え。
左、濁ったカフェオレの匂いが、
鼻奥の粘膜を乾かす。
喉の震えが、耳の奥に直に落ちる。
指が、デジタルの鼓動を追い越す。
青に、足が沈む。
赤に、足の裏が湿気る。
8 ÷ 3 1 +
・白
ふくらはぎに凹凸が赤らむ。
髪の隙間から横顔。26番。ハ行。
扉の音を合図に、部屋は静まる。
前、初めての声と名前。
粉っぽく淀む空気越しに、凹凸をなぞる。
揃わない拍手が、視線を上へと戻す。
誰かのくしゃみと、それを小さく笑う声が耳をくすぐる。
反射で白く光る時計を確認するよりも早く、
始まりと終わりのチャイムが響く。
紺の靴下を引き上げる仕草を、目に留める。
白い光が顔に刺さり、歪む。
隠れた太陽に、人影がざわめく。
振り返る視線と重なり、
強張る指が寝ぐせを探す。
影は、誰にも留まらない
透明 @komaryo1121
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