5-7

ここは一気に畳み掛けたいところである。ちらりとソルーシュがヴィルヘルムに視線を送るが、残念ながら幼馴染の騎士はリュウシンを迎え撃つことに集中し過ぎていて、ソルーシュの視線に気づかない。

ヴィルヘルムがリュウシンの攻撃をすれすれのところで避けているところを見るに、彼のスタミナ切れを狙っているようでソルーシュの狙いとは真逆のものだ。

 邪魔なヴィルヘルムをどうにか排除しようとリュウシンも躍起になって対応している。

機械の両腕で繰り広げられる打撃に、ヴィルヘルムも負けじと左手に装備している盾で防ぎ、右手の剣で対抗する。お互い一歩も退かない戦いだ。

後はヴィルヘルムが彼に何か余計なことを言って挑発しないといいのだが。


 ナズナの中で見ていたエリゴスがまどろっこしいヴィルヘルムのやり方に焦れたのか、主が呼び出していないにも関わらず勝手に表に出てきた。


『ええい、たかが一人に何をちんたらしている!

 ナズナ、俺に任せてあいつを下がらせろ!』


 精鋭の集まるノイシュテルン騎士団の者でも、それを束ねる四大将軍でもリュウシンを止めることは出来なかったが、魔界の王であるエリゴスなら彼を止められるかもしれない。

そう思ったナズナはエリゴスの出撃に頷いた。そして彼に魔力を集中させるために意識を研ぎ澄ます。

 彼女を守るようにソルーシュが曲刀を構えて前に立ち、幼馴染に怒鳴った。


「ヴィル!一旦戻れ!エリゴスが出るぞ」


目の前の者を倒せなくて不服そうだったが、幼馴染の商人の呼び掛けに騎士は渋々従い従妹の前に立つ。ヴィルヘルムが戻ってきたと同時に、ナズナの前に現れたエリゴスが愛用の青い槍を携えて駆け出した。


『覚悟するのだな、水妖族の小僧!我が槍を受けて見よ!』


 流石のリュウシンも一旦動きを止めた。異界の王が相手となると、人間相手のように一筋縄ではいかないだろう。ヴィルヘルムを追う動きを止めて、いかなる攻撃にも対応出来るように構えた。

 エリゴスは駆けながら竜のような翼をはためかせ、宙に浮いた。青い槍に紫の炎を纏わせ、リュウシンに向かって急降下を開始する。

獲物を狙う鷹のような速さではあったが、リュウシンの目には見えていたようでエリゴスの槍先を機械の両腕でいなし、擦れ違う時に微かな隙を見つけて彼の脇腹に鋭い掌底をお見舞いする。

普通の人間相手なら結構なダメージを与える掌底だったが、魔界の王には効かなかったようだ。彼はにやりと不敵に笑うと槍を持っていない方の手で拳を握り、リュウシンの腹を打つ。

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