4-15

ほっとした笑みを浮かべる神威にメルセデスの顔はますます赤くなり、小さく悲鳴を上げた。

察しのいいソルーシュはメルセデスが神威に対してどういう想いを抱いているのか、一連の行動を見て瞬時に理解した。だがそういう方面に疎いナズナとヴィルヘルムは不思議そうに顔を見合わせ、首を傾げる。


 メルセデスが落ち着いた頃を見計らって、三人と精霊メルセデスは車座になって改めて自己紹介をした。


「あの…初めまして。私がこの記憶の欠片の持ち主のナズナ=フォン=ビスマルクと申します。

 えっと…この度は…」


『初めまして、ナズナ様。どうか普通にして頂けますか?』


穏やかな声で挨拶を返しながら、メルセデスは人好きするような柔和な笑みを浮かべた。

彼女の穏やかな声と笑みにナズナは少しだけ楽な姿勢になる。それでも気持ちの方はそうはいかない。自分の記憶の欠片のせいで彼女を巻き込んでしまったのだから。俯くナズナの肩のメルセデスは優しく手を添えた。


『ナズナ様、どうかそんな申し訳なさそうになさらなくても大丈夫ですよ。

 私は自ら望んで貴方の記憶の欠片の守り役となったのですから』


「でも…」


『確かに、いざお会いして欠片を渡そうとした時に何かの力が働いて暴走してしまったのは予想外でしたけど…。

 神威さんの主である貴方なら大丈夫だと信じていましたから』


心の広いメルセデスにナズナは感激し、それ以上何も言えずにただ彼女に向かって頭を下げ続けた。メルセデスはナズナの肩の添えていた手を彼女の頭に移動させ、優しく彼女の黒髪を撫でる。その暖かい感触にナズナは余計に胸が詰まった。

 ソルーシュはナズナが落ち着くまで待とうとしていたが、ヴィルヘルムはそうせずにメルセデスに臆することなく話し掛ける。


「あの…メルセデス殿は欠片の守り役を自ら望んだとのことですが、何故一度も面識のないナズナのためにそこまで出来たのですか?」


『そ、それは…』


メルセデスはほんのり頬を染めてちらりとナズナを見下ろす。俯いていたナズナは彼女の視線に気づかなかったが、鋭いソルーシュは彼女がそうした理由を何となく理解した。ヴィルヘルムはやはり分からないようで再び首を傾げている。


『魔界の王であるエリゴス様が教えて下さったのです。

 ナズナ様の記憶の守り役としてこの灯台にいれば、私が密かに想う方が喜ぶだろうと』


夢見る乙女の表情で語るメルセデスは大変美しいが、やはりエリゴスが一枚噛んでいたことにナズナの中にいた神威と、ずっとエリゴスを不審に思っていたソルーシュが憤る。

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