3-2
それと、とヴィルヘルムは目を伏せて言いにくそうに続けた。
『王と議会がナズナに王宮へ参内するよう伝達がありました』
「そうだろうと思っていた。それは私が代わりに出ると伝えてくれ。
そしてヴィル、お前は旅装束に着替えて私の屋敷に来い」
『へ?』
突然何を、とヴィルヘルムは目を丸くした。それに構わずジークは通信魔法を解除する。ジークの横顔を見て、ソルーシュはヴィルヘルムをナズナの護衛としてこの旅に同行させるつもりだろうと予測した。
確かにヴィルヘルム程の剣の腕があれば、あの青年が再び襲撃してきた時の対処がかなり楽になる。ただ、ソルーシュ個人としてはナズナと二人きりでもよかったのだが。
ソルーシュの邪な気持ちを父親の勘で察したのか、じろりと棘のある視線が投げつけられる。ごまかすように口笛を吹きながら窓の外を見た。
曇天の空から白い雪が舞い落ちて地面を再び白銀に染めている。
執事が温かい紅茶を持参すると同時にナズナが戻ってきた。
ソルーシュの用意した服を身に纏い、おかしいところがないかとしきりに自分の身体を気にしている。
「お、お待たせ致しました」
ソルーシュがナズナの姿を見る前に神威がその身を挺して遮った。
『ソルーシュ殿?』
神威はにこやかに微笑んでいるのに声がとても冷たい。ナズナの横にいた執事は突然現れた神威に内心驚きつつも、平静を保ったまま紅茶の入ったカップをテーブルに置いて退出した。
神威に冷たく名を呼ばれたソルーシュは首を傾げた。
「おいおい神威、何でそんなに怒っているんだよ?」
『怒りたくもなりますよ。何ですかあのスカートの短さは』
まるで騎士団の服装検査の教官よろしくスカート丈を気にする神威にソルーシュは曇りなき瞳で即答した。
「オレの趣味」
『ふむ、貴様にしては中々いい趣味だな』
「どうも。理解してくれて嬉しいよ」
普段仲が悪いくせに、こういう時だけ息の合うソルーシュとエリゴスに神威は呆れて頭を抱えた。件のナズナは顔をほんのり赤く染めてにこにこと笑っている。
『あのですね、仮にもナズナは貴族令嬢なのですよ?貴族令嬢にこのような服装は…』
『ほほう、ならば小僧。貴様はナズナが気に入ったこの服が似合わないと言うのだな?』
『な、違いますよ!』
神威の苦言に揚げ足を取り、エリゴスがニヤリと笑いながら追い打ちを掛けて行く。
『ナズナよ、この小僧はその服がお前に似合わぬから着替え直せと言っているぞ』
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