第2章 蒼き刺客

2-1

 トランペットによる高らかなファンファーレが鳴り響き、それと同時に王とその家族達がホールに入ってくる。

王と王妃、その子供達計七人だ。彼らを全員が立って出迎える。舞踏会の開始を王が宣言し、そして本日の主役であるナズナの名を呼んだ。いよいよ彼女の出番である。

 呼ばれたナズナは自分の席から立ち上がり、しずしずと王の元へ歩み寄り一礼した。

王は頷き、そして彼女の手を引いて自分の横に立たせて自らナズナの紹介を観衆に向かってする。


「彼女の名はナズナ=フォン=ビスマルクだ。この国を守護する四大将軍の一人であるジークフリート=フォン=ビスマルク公の愛娘である。

 本日をもって彼女を一人前の淑女とし、この宮廷内の出入りを認めることとする!」


 王の宣言に会場にいる全ての貴族達が割れんばかりの拍手で応えた。今度は貴族達に向かって優雅にナズナが一礼する。ますます強くなる拍手に、第一印象は概ね好印象だったことが窺えて一安心した。

全体の顔見せが済んだところで今度は個別に挨拶に向かわねばならない。

王が席に戻ったところでワルツの音楽が流れ、本格的に舞踏会が始まる。ナズナの元にソルーシュとヴィルヘルムがやってきて彼女の後ろに影のように付き従った。


 王と王妃に挨拶を済ませ、次はその子供達の方へ足を向ける。

兄妹を代表して第一王子のスティーブ=キッツ=ノイシュテルンがナズナに挨拶をした。

彼はナズナの手を取り、その甲にキスを落とす。王子はナズナの二つ年上だが、その所作は王族らしく堂々としており、優雅なものだった。


「ようこそ、ナズナ嬢。一人前おめでとうございます。今夜は楽しんでいって下さいね」


「ありがとうございます、殿下。私のためにご出席頂き誠に恐縮ですわ。

 最初に殿下とダンスを踊る名誉を後程頂きに参りますね」


「ふふ…貴方のような可愛らしい方と踊れることこそ、光栄の至りですよ。それではまた後程」


お互いに一礼し、別れる。ソルーシュの表情を見るに、挨拶の出来はなかなか好評のようだった。さて、次は五大貴族へ挨拶に出向かなければならない。

 五大貴族というだけあって、特にこの中に序列があるわけではない。だが貴族達の暗黙のルールで最初に挨拶をしなければならないのはミッターマイヤー家からだった。

先程の不穏な視線もあり、何となく行き辛いが務めは果たさなければならない。しっかりとした足取りになるよう心がけながらついにナズナはミッターマイヤー家のテーブルへと辿り着いた。

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