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その質問にヴィルヘルムが誇りを持って答えた。


「ジーク叔父上から、舞踏会の主役である僕の従妹の護衛を頼まれたんだ」


胸を張るヴィルヘルムに対してジェラルドは冷ややかに鼻で笑う。


「つまるところ、そいつのお守りか」


「彼女の世界は自分の家が全てだったからね。そのせいでとても人見知りが激しいんだ。

 一応ソルもいるけど、僕もいた方が安心するだろうって叔父上の優しい配慮さ。君もナズナと話す時はくれぐれも優しくしてやってくれよ」


 ソルーシュも来る、と聞いてジェラルドは苦い顔をした。彼も一応ソルーシュと面識はあるものの、あの飄々とした女好きはどうも苦手なタイプである。

それにジェラルドの性格上、優しく話してやるというのも難しい話だ。だがここで前向きな返事をしないと面倒だと思い、ジェラルドは億劫そうに返事をした。


「…なるべく努力する」


「ミッターマイヤー家のご子息とあろう者が、女性に優しく出来ないと君の兄上に笑われるよ」


「兄のことは言うな」


 空気の読めないヴィルヘルムがさっそくジェラルドの地雷を盛大に踏んだ。それにより、彼の機嫌が目に見えて悪くなる。

彼は自分の兄のことがあまり好きではないのだ。地雷を踏んだ当人であるヴィルヘルムはきょとんとした表情でジェラルドを見る。

本人は至って悪気はない。だから余計に始末に負えないのであった。

ここで彼に八つ当たりしても仕方ないと溜息を吐き、ジェラルドは気持ちを切り替える。


 彼には本日の舞踏会に当たって、不安要素が二つあった。件の兄と、そして自分の姉妹達である。

彼らは自分の身分を傘に着て、宮廷内でやりたい放題をしていた。もし彼らに目をつけられたら、ヴィルヘルムの従妹は可哀想な目に遭うだろう。

一応同僚のよしみもあって、ジェラルドはヴィルヘルムに忠告しておいた。


「それよりも、私の兄妹に気をつけろ」


「君の兄妹?何で?兄のエミール殿はともかく、姉君や妹君は僕にとてもよくしてくれるよ?」


それはお前が姉達のお気に入りだからだ、という言葉を飲み込んでジェラルドは噛んで含めるように忠告を繰り返す。


「とにかく、気をつけろ」


 念を押してくるジェラルドに首を傾げながらも、ヴィルヘルムはしっかりと頷いた。身内である彼がわざわざ忠告してくるのだから、よほどのことなのかもしれない。

そんなジェラルドもヴィルヘルム同様騎士の任を解かれてミッターマイヤー家の一員として参加するようだった。二人は別れ、今夜の準備のためにそれぞれの部屋へ戻っていく。

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