極光の薔薇〜箱庭令嬢は、記憶の欠片を集める〜
西カナタ
第1章 予兆
1-1
『さあ我が花嫁、目覚めの時間だ』
窓から差し込む朝日を受けて少女…ナズナ=フォン=ビスマルクはベッドから身体を起こして大きく伸びをした。
今日は生まれて初めて家の外に出られる日。だからだろうか、窓から見える庭もいつも以上に輝いているように見えた。
ナズナは顔を洗い、腰まである黒い真っ直ぐな髪をブラシで梳く。そして父親が見立て、用意してくれた青いドレスを身に纏い銀の髪飾りを着けて自室を出る。
その後を半透明の白い執事服を纏った青年…
『ナズナ、まだ少々髪が乱れていますよ』
「え?本当ですか?」
神威に指摘されてナズナは立ち止まる。慌てて手櫛で直し、神威の方を見て大丈夫かと小首を傾げる。すると神威は半透明の姿から実体化してナズナの髪に直接触れて直してやった。
「あ、ありがとうございます…」
『どういたしまして。さあナズナ、参りましょう。父君がお待ちですよ』
「はい」
*
ここはレガシリアのブリューテ大陸にあるノイシュテルン王国。
賢王ユーリ=アルノー=ノイシュテルンの名の元に統治される雪が舞う国だ。ナズナはこの国の貴族令嬢であり、ノイシュテルン王国騎士団四大将軍の一人ジークフリート=フォン=ビスマルクの愛娘。
物心ついた頃から外の世界を知らずに育った箱入り娘だ。唯一、外の知識を得ることが出来るとするならば、本や礼儀作法を教える家庭教師、時折訪れる父の部下やナズナの従兄とその友人くらいなものである。
本日はナズナの十六の誕生日であり、社交界デビューの日。
本来ならもう少し早い歳でするのだがナズナの父親が頑なに外へ出すことを渋り、ナズナの従兄やその友人、そして神威ともう一人の精霊が必死に彼を説得してこの晴れやかな日を勝ち取ったのである。
あまり人と関わってこなかったため、人見知りが激しいナズナは緊張しているものの、新たなお友達が出来るのではないかと内心楽しみにしている。
食堂に入ると、すでにナズナの父であるジークが席に着いて愛娘を待っていた。それなりに歳を重ねているが、彼の外見はまだ若い青年である。
それは彼に妖精の血が混じっているためだ。彼の中に流れる妖精の血が肉体の時間を緩やかなものにしている。
灰色の短い髪を揺らし、ナズナと同じ紅い瞳が優しそうに細められている。
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