AI利用は天気のように移りゆく

つとむュー

AI利用は天気のように移りゆく

「乾杯」

「かんぱーい!」


 金曜の夜の高級レストランで、私は大学時代の友人、茜とグラスを重ねる。お互い就職してから三年目。毎週金曜日はこうして二人で美味しい食事を楽しんでいる。ぶちまけるのは決まって仕事の不満や上司の悪口。そうでもしなきゃ社会人なんてやってられん。

 でもこの日は、茜の相談から始まった。


「ねえ、蒼織。AIについて教えてほしいんだけど……」


 神妙な面持ち。なにか深刻な理由でもあるのだろう。

 茜は派遣会社勤務だから、きっと派遣先で「AIを使え」とか理不尽なことを言われたに違いない。そこまでの能力は求められていないはずなのに。

 それこそIT関係者の出番。蒼織様が助け船を出してあげるか。


「茜が言うAIってきっと生成AIのことだと思うけど、生成AIにはテキスト生成とか画像生成とか、他にも動画や音楽などいろいろあるのよ」

「うーん…………。たぶんテキストや画像って感じ?」


 すらっと回答できなかったということは、本当にAIのことを知らないのだろう。

 私はスマホを取り出し、画面を茜に向ける。


「じゃあ、これ読んでみて」


 画面に並んでいるのはメジャーな生成AIの名前。

 この中で知ってるものがあれば、それについて教えてあげればいい。


「えっと、ChatGPTっていうのは聞いたことがある。他は、ジェミニ? コピロット……?」


 まあ一般人のAI知識ってそんなものよね。

 とりあえずChatGPTについて教えてあげるか。


「ていうか、AI使って何するの?」

「それで国家資格を取りたいの」

「ブブっ!」


 いやいや試験中にスマホは使えないよね?

 AIに解かせれば合格できるかもしれないけど、厳しく監視されてるはずだし見つかれば即刻退場じゃね。

 咳き込む私に、茜は慌てて取り繕う。


「ちょ、ちょっと蒼織。試験中に使うわけじゃないよ、受験に必要ってことなんだから」

「だよね、試験中になんて使わないよね」


 危ない危ない、一杯千円もするシャンパンを吹き出すところだった。


「でも受験に必要って、どういうこと?」

「試験問題に、AIの使い方についての追加の設問があるらしいの」

「AIの使い方についての設問? 過去問にって、それがないってことなのか……」

「そうなのよ。次回の試験に追加されるらしくて試験対策テキストもそれに追いついてない」


 へぇ、今の国家資格ってそんなことになってんだ。

 まあ、AI利用って急激に広まったからね。ついに官公庁も積極的に取り入れることになったし。最初は仕事で使っちゃダメなんて言ってたのに。

 最近のAI利用は天気のように移り変わりが激しい。


「ネットに公開されている大量のデータを解析して、テキストや画像に加工する。それをどのようにAIに指示するのかって問題が出るらしいの」

「というと、プロンプトの書き方が肝だね」

「そうそう、それ! そのプロなんとかについて教えて欲しいの」


 茜の瞳が輝く。ようやく意図することを分かってもらえたという感じで。

 それくらいだったらお役に立てるかも。散々仕事で書いてるから。


「ところで、その国家資格ってなに?」


 ずっと気になっていたことを訊いてみる。

 ネット上の大量のデータ解析って何だろう? フィナンシャル・プランニング技能士とか? 中小企業診断士かもしれないけど。


「気象予報士なんだけど」


 マジか。

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