3-3. リオへの襲撃

暗殺計画が立てられてから数日後、リオは前線の補給基地で任務を続けていた。その日も、物資の運搬や負傷兵の後送を手伝っていた。


「リオ、外に出ろ。補給物資の確認を手伝ってくれ」


ゼロが声をかけてきた。リオは頷き、天幕を出た。外は冷たく、吐息が白く見える。補給物資の山が並び、兵士たちが忙しなく動き回っている。


そのとき、リオは何か違和感を感じた。周囲の空気が、急に冷たくなった。そして、遠くの森から、黒い人影が見えた。


「リオ、気をつけろ」


ゼロが警告を発した。だが、そのとき既に遅かった。


森の影から、黒い人影が飛び出してきた。彼らは仮面を被り、鎖を手にしている。鎖の先には刃が光り、リオを目がけて襲いかかる。


一人の暗殺者が鎖を振り回し、その鎖が空を切り裂く。鎖の先端がリオの顔面を狙ってくる。リオは身を低くし、鎖の軌道を避けた。しかし、別の暗殺者の鎖がすぐに来る。斜めから横へ、鎖が弧を描いて襲いかかる。


「リオ、後ろに下がれ!」


ゼロがリオを突き飛ばし、剣を抜いた。だが、鎖は彼を弾き飛ばし、リオへ向かってくる。


腰から剣を引き抜き、鎖を払おうとした。だが、鎖は柔軟に動き、リオの剣を絡め取る。鎖が剣の刃に絡みつき、剣を引きずり出す。リオは剣の柄を握りしめ、それでも抵抗しようとした。


「なぜ僕を?」

「お前は死神因子だ。呪詛の使い手だ。だから、殺す」


その言葉に、リオは混乱した。死神因子? 呪詛の使い手? リオは何もしていない。ただ、物資運搬や負傷兵の後送を続けていただけだ。


「僕は何もしていません!」

「嘘だ。お前が切った兵士が、すべて治らぬ傷で死んでいる。お前の力は呪詛だ」


その言葉に、リオの体が凍りつく。リオが切った兵士が、すべて治らぬ傷で死んでいる? それは、本当なのか。リオは剣を握りしめ、それでも戦おうとした。だが、鎖は増え続け、やがてリオを包み込む。


「リオ、逃げろ!」


ゼロが叫ぶ。だが、リオは動けない。鎖に絡め取られ、体が重くなる。鎖がリオの腕に食い込み、血が滲み出てくる。


そのとき、遠くから王国軍の援軍が駆けつけてきた。兵士たちが武器を構え、仮面を被った敵を包囲する。援軍の一人が剣を振り下ろし、鎖を切り裂く。


鎖が切れると、リオの体が軽くなった。


「リオ、大丈夫か?」


ゼロが鎖を切り裂き、リオを引きずり出す。リオは剣を握り直し、立ち上がった。だが、体は重く、動きが鈍い。鎖に絡め取られた腕には、血が滲んでいる。


「ええ、でも……なぜ僕を狙うんですか?」

「お前は脅威だ。敵にとって、最大の脅威だ。だから、殺そうとする」


ゼロの言葉は重く、リオの胸に響く。リオは剣を握りしめ、それでも戦おうとした。だが、仮面を被った敵は既に森の中へ消えている。彼らは目的を果たせなかったが、警告は残した。


「次は、もっと強力な手段を使う。覚悟しろ」


その言葉が、風に乗って聞こえてくる。リオは剣を鞘に収め、基地へ戻った。だが、胸の重さは消えない。


「ゼロ、僕は本当に何もしていません。ただ、物資運搬や負傷兵の護送を続けていただけです」

「分かっている。お前は悪くない」

「でも、敵は僕を殺そうとしています。なぜですか?」


ゼロは少し考えてから、言った。


「お前は何かおかしいと感じていないか?」

「おかしい?」

「ああ。最近、敵兵が治らない傷で死んでいるという噂を聞いただろう。もしかしたら、それと関係があるかもしれない」


その言葉に、リオは少し不安になった。確かに、最近、敵兵が治らない傷で死んでいるという噂を聞いた。そして、あの敵兵も同じ症状だった。もしかしたら、何か関係があるかもしれない。


だが、リオには分からない。リオはただ、物資運搬や負傷兵の後送を続けていただけだ。特別な力など、持っていない。そう信じようとした。


「何かおかしい……」


リオはそう呟いた。ゼロはリオの肩を叩き、優しく言った。


「大丈夫だ。まずは目の前の戦場で生き残ることだけを考えろ。」


その言葉に、少しだけ安心した。だが、それでも不安は消えない。敵はリオを殺そうとしている。それは、戦争のためだけではない。何か、もっと深刻な理由がある。


リオは「何かおかしい」と感じ始めていた。だが、真実は見えていない。ゼロは、リオの疑問に答えられない。なぜなら、ゼロ自身も、リオの力の正体を知らないからだ。


リオは自分の手のひらを見つめた。手のひらには、常に微かな熱が宿っている。その熱が、息をするたびに強まり、リオの胸を締め付ける。


なぜ、自分だけが耐えられるのか。なぜ、治らない傷が増えているのか。その疑問が、リオの心の中で、まるで棘のように刺さっていた。

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