Sランク少年

シバカズ

Sランク少年

 Sランクとは、Aランクより上位に位置する順位や等級であると認識されている。

 Sランクの「S」とはゲーム関係からきており、Special(特別)もしくはSupreme(最高位)のSだという。

 補足だが、「S S」とはSuper(超)が頭に付いたもの。

 しかし、これはゲーム世界の話ではなく、現実に起こっていることだ。

 寿太郎じゅたろうが生まれた時からこの国の人々にはAからFまでランク付けがされている。

 よくFランクの大学は学費を払うまでもない底辺大学と揶揄やゆされるが、Fというランクを与えられる人間がまさにこれである。

 ランクは国家繁栄の貢献度によって決められる。

 よってAランクを所有する者は世界最高賞のノーベル賞受賞者を始め、アスリートなどスポーツで偉業を成し遂げた者。発明家、政治家、実業家、各分野の有識者などに優先的に与えられた。

 彼らには生涯安定が約束されるだけでなく、様々な特権が与えられる為、下位ランカーは1つでも上のランクを掴み取るのに必死であった。

 そんな国を作り上げた大人たちに、寿太郎は疑問と不満を持っていた。

 それは寿太郎が13歳となった1982年の少年の主張の場において発表された。

 タイトルは『真実の追求について』、出だしはこうだ。「なぜテレビや新聞などのマスメディアは真実を報道しないのか僕にはずっと疑問でした——」

 後に、全国民を巻き込む大混乱のきっかけを少年は未定ランカーの立場から主張した。

 ランク制度の始まりは1950年といわれているが、この3年後に開始される新たな情報ツールの下準備ともいえた。

 1953年、テレビ放送の始まりである。

 寿太郎少年はかたよった報道や規制について語った。

 あれらが全て虚言きょげんであるとしたら、僕たちは何を信じて正しい情報を手に入れればよいのか。それには自分たちの足で現場に行き、自分たちの目で真実を見極めるしかないと、少年は熱く語った。

 当時、この主張を聞いていた教師や生徒たちのほとんどが、そんなことは不可能だと決めつけていた。

 それから5年の歳月が過ぎ、少年の主張は誰の記憶からも風化していた。ただ1人、寿太郎本人を除いては——。

 1987年、一昨年の法律改正によって小型電鈴こがたでんりんが広まりつつあった。

 これは無線呼び出し端末であり、電話回線から登録してある電鈴番号へ発信すると、小さな液晶にこちらのプッシュした番号が通知される受信専用機器であった。

 サービス開始当時、この端末はさほど注目されなかったが、寿太郎は通信機と名の付くものに人一倍の興味を持っていた。

 そして、この年に「1335」が完成したのである。

 ランク制度は未だに健在だった。

 一般人には高額な収入や莫大な資産がうらやましく思えるだろうが、Aランク所有者には、与えられる特権にこそ真の価値があった。

 財力では動かせない絶対的権力が世の中にはいくらでもあることを大人たちは知っている。

 そんな不動の力さえくつがえしてしまうのが、Aランク保持者というレッテルだった。

 そして、その横並びの人脈が今の国民を引っ張っている。

 その最たる例がテレビ局にある。各局の主要株主はAランク保持者であり、流すCMや起用する出演者は全て彼らが決定権を持つ。

 そして、テレビの次に影響力のある新聞は、あるAランク保持者が運営する通信社からニュースソースを受け取り、記事にしている。

 ローカル新聞などは独自取材が許されているが、その内容にも通信社のチェックが入る。

 つまり、ランク制度開始から37年間、国民には許された情報のみが伝達され、知るべきではないと判断された情報は揉み消されるという暗黙の了解がマスメディア業界で蔓延まんえんしていた。

 新聞、雑誌、ラジオ、テレビとその情報管理は徹底しており、世論の誘導など造作もないことだった。

 そんな魔窟まくつの業界から、突然あるニュースが報じられた。

 内容は「1335」という意味不明の文字の羅列だった。

 しかし、一部ではこれらの暗号を理解した者たちもいた。

 その者たちの連携によって暗号の輪は全国に広まった。

 やがて寿太郎の元には膨大な情報が集まってきた。

「◯◯政治家の発言1335」

「◯◯新聞の一面1335」

 寿太郎は忙しく情報を処理していった。

 現在、Aランク保持者の悪行が次々に露呈している。

 発信者はもちろん寿太郎だが、情報提供者はAランク以外の全国民であった。

 1987年に広まった小型電鈴は、数字しか相手に送れないが、寿太郎はシンプルな数字の変換表を作り出した。

「11=あ、12=い」というように最初の数字が「あかさたな」を決め、次の数字が「あいうえお」を選びだす。

 これにより次々と「嘘」が発覚し、ランク制度は上位から崩壊していった。

 今、嘘で塗り固められた国家は、転覆しようとしている。

 Aランクを超越したSランク少年の手によって。


                    完

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Sランク少年 シバカズ @shibakazu63

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