パート4 九郎、公彦、『八つ墓村』か『鬼首村』に行く?
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「なんだ?何処かへ旅行に行くのか?」
と、美雪が尋ねた。九郎の部屋。大きなボストンバッグに、着替えの衣装を詰めているところだった。
「また、屋根瓦を越えて、窓から入って来たんですか?大家の婆さんに見つかったら、下宿を追い出されますよ!」
「あんたがわたしの部屋に侵入したら、ね!わたしは公認なのさ!出来の悪い従弟を監視するよう、母親に頼まれている!って婆さんには伝えているんだよ!」
「出来の悪い従弟?まあ、当たらずとも遠からず!か……」
「そんなことより、わたしの質問に答えろ!何処へ行くんだ?」
「九州です!大分と熊本の県境に近い、山村らしいです……」
「殺された、佳奈子と志奈子の故郷に行くのか?お前、本当に探偵をするつもりか?陰陽師の修行は、どうするんだ?」
「修行?師匠からは、普通の学生生活をしていろ!と言われていますよ!しかも、一般人の行動や考え方を注意深く観察しろ!とも……。探偵は、その指令に合致していると思うんですけど……」
「お前に探偵の素質がないから、心配しているんだ!それで?ひとりなのか?」
「例の刑事の甥の友達も招待されていますよ!」
「招待?誰かに誘われた?しかも、佳奈子か志奈子の関係者から……?誰だ?」
「上城由布子です……、ふたりの高校時代の同窓生で、大学の助教授の上城真弓の妹ですよ!一昨日、学食に現れて、招待されたのです。探偵としてか、容疑者としてか、は曖昧でしたけど、ね……」
「上城助教授の妹?ああ、『似ていない妹』と評判で、長い髪の、かなりの美人!男子のミス・コンで、わたしと争った!って噂だね!」
「ええっ?そんなミス・コンがあったんですか?しかも、ミユキさんがトップ……?」
「ミユキ!って呼ぶな!体育系の学生のお決まりの、新入生歓迎の催しの中さ!今年の新入生のミス・コンって、勝手に投票するんだ!名簿の写真なんかを参考にして、ね……。それで、助教授の妹がなんで見ず知らずのお前を招待するんだ?名探偵『神津恭介』の親戚だ!と、勘違いしているのか……?」
※
「それが……、例のK様ですよ……」
と、ボストンバッグに荷物を詰め終えて、九郎が言った。美雪は勝手にお茶と、かりんとうを見つけて、ちゃぶ台に並べた。
「K様?」
「後藤佳奈子の日記に、K君という男性がたびたび登場するそうです!最初は、校内ですれ違った!次は、食堂……。会話をして、芝生に並んで腰をおろし、映画を観に行く約束をしたらしいんです……」
「お前!心当たりがあるのか?」
「ありませんよ!名前も顔も知らなかったんですよ!」
「なら、なんでお前を招待するんだ?K様かK君か知らないが、お前ではない!と説明すればいいだろう?」
「日記に書かれていることが現実のことなら、僕でも公彦でもないですね……。由布子さんが言うには、佳奈子が男子学生と芝生で並んで会話したことも、映画鑑賞の約束をしたこともないはずだ!と……。つまり……」
「日記じゃなくて、佳奈子の妄想?メロドラマの小説!ってことか……」
「そう!で、僕と公彦という、刑事の甥が招待されたのは、その妄想か小説かに出てくるK君の容姿に僕らが似ているようなんです!背が高くて、長髪で、彼女がいないのか、いつも男友達と一緒にいる……」
「なるほど、イケメンだけど、彼女の影がない!か……。モデルにするには、うってつけだな!」
「公彦も僕も頭文字が『K』ですから、ね……、どちらが佳奈子の言うK君かわからないんですよ!」
「しかし、犯人か、その近しい人物は、お前を『K様』と呼んでいる!あの投げ文では、ね……」
「あの投げ文ですけど、あれが僕宛てに書かれたものかは、疑問ですよ!公彦は、豪邸に住んでいますから、投げ文は、ほぼ不可能ですから……」
「なるほど、投げ文をしやすい環境だね!この下宿は……。それで、招待された山村って何という場所なんだい?わたしも夏休みは、宇佐神宮や大宰府辺りを巡る予定なんだよ……」
「確か?桐山村とか……」
「霧山?霧島じゃなくて?」
「霧島は、鹿児島県ですよ!キリは樹木の桐ですよ!下駄の材料にする……」
「ああ、そっちか?山に桐の木が沢山あるんだろう、ね……」
「ええ、桐の大木があって、御神木として祀られているそうですよ!二本あって、上と下に二つの神社があるそうです。上賀茂神社と下鴨神社みたいですね……」
「上と下?桐山に上が付くのかい?」
「そうですね!桐山神社だから……」
「つまり、『上桐山神社』、髪切り山とも聞こえる、ね……」
「ま、まさか……」
「九郎!お前か友人の公彦かは、わからないが、罠に導かれているよ!連続殺人の犯人に仕立てあげよう、という思惑がありそうだ!犯人か、その近しい人物にね……」
「ミユキさんの予言ですか……?」
「ミユキ!って呼ぶな!予言じゃなくて、推理だよ……」
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