未完了

活呑

未完了

魔王は倒されたという。

世界も、国も、軍隊も、街や村、人々にはなんの変化も訪れない。


しかし、人類悲願とされたそれは、勇者の手によって成された。


前線に出ていた兵士が戻って来始めた。曰く、前線の土地は生きていくのも厳しいと。


王都はお祭りムードで喧騒の最中にあった。

それは何も、喜びからだけではない。

土地を追われて安全をもとめていた人たちにとっては、一時の楽しさに身を任せるしかなかった。

この先……自分たちの土地に帰ることができるのか。なんの保証もないのだから。


軍によって領土の安全を確認する部隊が新設され、各方面に送られ始める。担当エリアに行き、土地の状況を確認し、帰還して報告すること。王都を中心に徐々に確認エリアを広げていく算段だ。



二人は、担当エリアにたどりついた。戦前は、村だった場所。

火を放たれたらしく、建物は崩れ落ちているものが多い。

「それで、確認項目は?」

「はっきりとは決まってないさ。

ここの村人が帰って来て、生きていけるかどうか、かな。」

ため息。

「俺も村育ちだ。大体の匙加減は分かるが…チェック表でも考えてもらうか。仕事のやり直しになるのはごめんだ。」

「そうだな」

井戸がある。水は…飲めそうだ。

あとは畑や用水路、か。

こんな調子じゃ、戻って来ても次の収穫まで食べるものもない。

「水路の方はなんとかなりそうだが、畑は今年は無理だな」

「生きていけるかどうか、か…」

「できると思うか?」

「できない。だが、戻ってこなければこの先もない」

口笛

「酷い話だぜ、まったく。報告はどうする?」

「帰還は可能。ただし1年分の生活物資が必要」

「多分、どこの報告書もその言葉の山だぜ?」

「判断するのは上の仕事だ。

 今の俺たちは、この仕事で帰って来たい人の背中を押すだけさ」


二人は馬に乗り、王都へ向かって駆け出した。


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未完了 活呑 @UtuNarou

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