ロイタース城脱獄作戦
何もない牢獄の中で、私はひたすら瞑想とトレーニングだけを続けてきた。
それが何の意味もなさないことは分かっている。
なぜなら、私に課せられた刑期は禁錮400年。太陽の光を拝むことは二度とないのだ。
体を鍛えることも、何かを考えることも、無駄な足掻きに過ぎないのかもしれない。しかし、じっとしてはいられなかった。そうしなければ狂ってしまいそうな程に、牢の中は暗く冷たかった。
何も変わらない、地獄のような日々が続いた。
牢に入って何年目だ。もう日付も、季節も、時間も分からない。
「おい、飯だ!」
いつもの通り、見張りの兵士の一人が、食事を運んできた。
だが、何かが変だ。
いつもなら飯を置くと、私の顔を見るのも嫌だと言わんばかりにすぐ立ち去るはずの兵士が、今日はじっとこっちを見つめている。
フルフェイスの兜で表情は窺えないが、その奥にある真剣な瞳だけが見えた。
「なるほど。痩せてはいるが、いい面構えじゃないか」
そう言ったかと思うと、兵士の男は牢の鉄柵に、何か赤い液体を一滴垂らした。
さらにその上から、もう一種類の青い液体を重ねる。
途端、「ポン!」という音と共に小さな爆発が起きた。
自分でやったくせに、男は驚きの声をあげた。
「……っ、大丈夫か? この爆発音」
見ると、頑強なはずの鉄柵が根本でポッキリ折れていた。
「多少の音は仕方ねえか。よし、さっさとやっちまえばいい話だ」
男は平然としている。私は戸惑いながら男に問うた。
「……何をしているんだ、お前は」
「ああ? お前を逃がそうとしてんだよ。いいからお前は今のうちに飯を食ってろ。これから大変になるんだ、少しでも力をつけておけ」
言っている意味が分からない。
「お前は城の兵士だろう。私を脱獄させたとなれば、死刑は免れないはずだ」
「俺が城の兵士なら、そうだろうな」
男は兜を脱いだ。
「俺の名はゼンジロウ。反勇者軍のリーダーをやってる。まあ、悠長にくっちゃべってる暇はねえんだけどよ」
男が「ポンポン」と連続して液体を垂らすたびに、鉄柵が次々と壊れていく。
「ひぃー、耳がキーンとするぜ」
数本の柵がひん曲がり、人が通れる隙間ができた。だが、いくら痩せているとはいえ、背の高い私が出るには少し狭い。
「おい、できればもう爆発はさせたくないんだが、何とか出てこられないか?」
確かに無理をすれば出られるかもしれない。だが、そもそも脱獄すべきなのか。
迷う私の心を見透かしたように、ゼンジロウは言った。
「400年の罪だったっけ? 下らねえ。そんなものは勇者と世界が勝手に決めた『正義』だ。お前はあんな奴の決めた正義に従って、この檻の中で骨になるまで過ごすつもりか?」
その言葉に、ジンと心臓が熱くなった。
あんな男に……私は人生を決められたくない。
私は一歩踏み出し、左手の拳をそっと折れ曲がった柵に当てた。投獄されてから、1日も欠かさず鍛え続けたこの拳。
「ふん!」
私が折れた柵に向け正拳突きを放つと、壊れた鉄柵は「ギィン」と音を立てて吹き飛んでいった。
「ヒュー。やるねぇ」
ゼンジロウが感嘆の声をあげる。
私は広がった隙間から一歩外に出る。
「私の名はコウだ」
「知ってるぜ、有名人。さあ、仲間が待ってる。行こうぜ、コウ!」
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