好きな人と共有したいこと|百合恋愛
岡山みこと
好きな人と共有したいこと|百合恋愛
日曜日の午前七時。
涼しい気候の中、私は鼻歌混じりで散歩をしていた。
早朝の透明な空気と世界の始まりを告げる鳥のさえずりが好きなんだ。
最高の気分のはずだけど、少しだけすぐれない。
ピコンピコンと、さっきからスマホが震えているから。
私はSNSが苦手だ。
自分のどうでも良いことを人と共有する意味がわからない。
嬉しいことも悲しいことも、自分と大切な人だけが知っていれば十分。
付き合いで入れてるSNSで友達が、"おはよう"とかを投稿する時間。
……どうでもいい。
友達は好きなんだけど、だからこそ会ったり通話したりしたいな。
その時、線の雨が降り出した。
空は雲一つ無い晴天。
狐の嫁入りってやつかな?
寒くなるほどではないかと私は散歩を続けた。
青空と雨。
こんな素敵なこと、文字や写真じゃ伝えきれない。
私の鼻歌が少しだけ大きくなった。
雨は予想通り大地を湿らすくらいで止んだ。
楽しかっただけにつまらないなと思ってしまう。
けど、空はかわりに大きなプレゼントをくれた。
「うわぁ」
驚かせたことを謝るように、大きな虹がかかっていた。
世界の端から端をつなぐ色は私の心を叩いた。
さすがにこれは共有したい。
焦ってスマホを取り出した。
---------------------------------------------------
朝早く、私は歯を磨いていた。
外からは雨の音。
天気予報アプリは晴れとなってるし通り雨かな。
友達からの通知に適当にイイネをつけながら顔を洗う。
人と会う予定はないし化粧はやめとくか。
鏡のつまらなさそうな自分をちょっと嫌いになってから部屋に戻ると、友人から着信が。
嬉しいことがあると電話してくるあいつだ。
「おはよ。え?外?ちょっとまって」
カーテンを開けると大きな七色の橋。
「うん、綺麗だね。うん、そうだね。教えてくれてありがとうね」
はしゃいでいる友だちと少しだけ話して私は通話を切った。
窓のむこうには鮮やかな世界。
一枚写真を撮った。
AIに補正され、本物より美しく切り取られた偽物の虹。
本物のほうが私は好きだな。
君が教えてくれたものだし。
ふと自撮りをしてみると、つまらなそうな自分はいなかった。
休日がステキな日になる予感。
ぼそっと届かないお礼をあの娘に言った。
---------------------------------------------------
短い電話が終わった。
嬉しいことがあると共有したくなる大切な人。
私が綺麗だと感動したものを見てほしい。
だからわがままを言うと、できるだけ近くにいてくれたら嬉しい。
でもそれはまだ贅沢だから、こうやって繋がりを求めてる。
嬉しいを、幸せを、共有したい。
「うん、これが私のSNSだね」
結局自分も繋がりを求めてることがくだらなくて、声に出して笑って散歩を続けた。
君だけへの一方的な通知だから、いつかハートをつけてほしいな。
好きな人と共有したいこと|百合恋愛 岡山みこと @okayamamikoto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます