EARTH BORN
Isuka(交嘴)
第1話 EARTH BORN
プロローグ 空は僕らの上にある
世界が終わる、という知らせが来た日の夜。
人は案外、泣かない。
泣くより先に、スマホの電池を気にして、充電器を探して、窓の外を見て、空がまだ普通の色をしていることに腹を立てる。
「……ほんとに?」
僕が聞くと、彼女は小さく頷いた。
「ほんと。あと二十四時間。正確には二十三時間と……五十分くらい」
彼女は、いつもみたいに数字で言う。
不安をごまかす癖だ。数字にすると、感情が遅れる。
遅れている間に、息ができる。
「原因は?」
「太陽。っていうか、観測上は太陽に見える何かが、こっちに――近づいてる。地球の軌道とか磁場とか、そういうの、全部壊れるって」
彼女は理系の言葉を並べた。
僕は理系じゃないから、半分くらいしか理解できない。
でも、理解する必要はなかった。
「つまり」
僕は言う。
「明日には、全部終わる」
「うん」
彼女は、笑おうとした。
笑えてない。口角がほんの少し上がっただけで、目が笑ってない。
僕は、彼女の手を取った。
冷たい。彼女の手は、いつも冷たい。
心臓が頑張っている時ほど、冷たくなる。
「……どこか行く?」
聞いた瞬間、僕は自分の声が子どもみたいだと思った。
大人ならもっと賢い提案をするはずだ。
避難とか、備蓄とか、家族とか。
でも、この状況で避難に意味はない。
備蓄にも意味はない。
家族は――大事だ。でも。
彼女が、僕の顔を見た。
その視線に「君と」が含まれているのがわかった。
「森に行こう」
彼女は言った。
「朝の森。昔、話したでしょ。小さい頃、迷子になった森。あそこ、まだ残ってる」
「……うん」
「それから海。午後は海辺。水が青いところ。波が過ぎて、地平が広がるところ」
彼女は、息を吸って、続けた。
「最後は……戻ろう。地面に。土の上に。……そうしたい」
言い終わって、彼女は少し震えた。
怖いのだと思う。怖いのに、ちゃんと決めている。
僕は頷いた。
「行こう。君が行きたいとこ、全部」
彼女は、やっと少しだけ笑った。
今度は目も笑っていた。
「……じゃあ、朝まで寝よっか。寝ないと、明日がもったいない」
終わる世界で、もったいない。
それが可笑しくて、僕は笑った。
彼女も笑った。
笑っているうちに、少しだけ泣いた。
僕らは、泣きながら笑って、互いの額を合わせた。
窓の外で、いつも通りの夜が息をしている。
星がまたたく。
月が揺らぐ。
まるで、明日も来るみたいに。
1 朝の二人は森で
朝は、驚くほど普通に来た。
目覚ましは鳴らなかった。
セットしていないから。
世界が終わる日に、アラームなんて鳴らしたくなかった。
でも、カーテンの隙間から光が差した。
薄い金色。
太陽がいつも通りの角度で、部屋の壁を撫でている。
「……ねえ、起きて」
彼女が僕の頬を指でつつく。
その指先がまだ冷たいのが、なぜか安心だった。
冷たいということは、彼女がここにいるということだ。
「おはよう」
僕が言うと、彼女は少し困ったみたいに笑う。
「おはよう。……最後のおはよう、かも」
「言わないで」
僕は即座に言って、彼女の唇を指で塞いだ。
子どもっぽい。分かってる。
でも、言葉にすると現実になる。
現実は、今は遅れていてほしい。
「ごめん」
彼女はその指にキスして、謝った。
僕らは、リュックを一つだけ持って家を出た。
必要なものは少ない。
水と、甘いものと、ブランケットと、スマホの充電器。あと、彼女のノート。
「ノート?」
って聞いたら、
「最後まで、メモしたい」
と返ってきた。
彼女らしい。
終わりの日まで、世界を理解しようとする。
理解したいというより、理解しないと怖いのだと思う。
怖さの正体を言葉にできれば、少しだけ小さくなるから。
電車は走っていた。
人もいた。
いつもより少ないけど、ゼロじゃない。
みんな目が赤い。みんな声が小さい。
でも、誰も騒いでいない。
「変だね」
僕が言うと、
「人って、ほんとに駄目な時は暴れないんだよ。暴れるのは、まだ間に合うと思ってる時」
彼女は淡々と言った。
森に着くまで、僕らはほとんど話さなかった。
話すと、何かが崩れる気がした。
崩れる前に、景色を目に焼き付けたかった。
森は、ちゃんと森だった。
木々の蒼さに、たたずむみたいな静けさ。
湿った土の匂い。
光が葉の隙間で細かく割れて、地面に水玉模様を作っている。
「……あ」
彼女が足を止めた。
「ここ」
「覚えてる?」
僕が聞くと、彼女は頷く。
「うん。ここで迷子になった。泣きながら、木の根っこに座って……」
彼女は、木の幹に手を置いた。
掌が樹皮に触れて、少しだけ温まる。
「木って、あったかいね」
「昼になったらもっとあったかい」
「……今日、昼まであるかな」
彼女は言いかけて、首を振った。
「違う。ある。昼は来る。来るって、決まってる。だって朝が来た」
彼女は自分に言い聞かせるように言う。
僕は、その横顔を見て胸が痛くなった。
森の奥へ歩く。
小鳥の声がする。遠くで水の音もする。
こんな日に、こんな普通の音がするのが、腹立たしいくらい美しい。
「ねえ」
彼女が言った。
「もしさ。全部終わらなかったら、どうする?」
僕は少し考えてから、正直に答えた。
「……困る」
「困る?」
「うん。今日のこと、全部恥ずかしくなる。世界が終わるからって言い訳して、君に甘えてるみたいで」
彼女は一瞬、ぽかんとした顔をして、それから笑った。
「なにそれ。かわいい」
「かわいくない」
「かわいいよ」
彼女は僕の腕にそっと指を絡めた。
体温が伝わる。
僕の方が熱い。彼女は冷たい。
でも、その温度差が今は必要だった。
「ねえ、傷つける人ってさ」
彼女が、突然話題を変える。
「気付かないんだよね。自分が誰かを傷つけてるって」
「……うん」
僕は思い当たる節があった。
今まで、僕だって誰かを傷つけた。
無意識に。悪意なく。
それが一番たちが悪い。
「だから、最後の日は」
彼女は森の光を見上げて言う。
「せめて、輝いたものだけが届けばいい。悪意じゃない、嘘じゃない、ちゃんとした光だけが」
言葉が、胸に落ちた。
彼女が何を言いたいのか、分かった。
「君に届いてほしい?」
僕が聞くと、
「うん」
彼女は頷いた。
「君に届いてほしい。君の元に、ちゃんと届いてほしい」
その言い方は、まるで祈りだった。
森の中で、彼女の祈りは静かに浮かんで、葉の間に吸い込まれていく。
僕は、彼女の肩を抱いた。
強く抱くと壊れそうだったから、軽く。
でも、離れない程度に。
「届くよ」
僕は言った。
「君の言葉は、いつも僕に届く」
彼女は少しだけ目を伏せた。
「それ、世界が終わるからってサービスしてない?」
「してない」
「ほんと?」
「ほんと」
彼女は、ふっと息を吐いた。
それが笑いの一歩手前の息だった。
森の中で僕らは立ち止まって、ただ光を見ていた。
葉が揺れて、光が揺れて、影が揺れる。
世界は、揺れている。
でも今だけは、それが壊れる揺れじゃなくて、生きている揺れに見えた。
2 天は僕の上にある
森を出る時、彼女は振り返った。
もう一度だけ、木々の間の薄い光を見る。
「朝って、こんなに優しかったっけ」
「普段は見ないからね」
僕が言うと、彼女は小さく頷いた。
「普段は……急いでる」
僕らは駅へ戻り、海へ向かう電車に乗った。
窓の外の景色は少しずつ変わっていく。
住宅地から、工場地帯、そして開けた空。
空が広い。
「空って、ずっと空だったんだね」
彼女が言う。
「変わらないって、すごい」
「変わるよ。今日」
僕が言いかけて、飲み込んだ。
言葉にしたくなかった。
でも、彼女は気づいている。
「……うん。変わる」
彼女は目を閉じた。
まぶたの裏に空を焼き付けているみたいに。
海辺に着いたのは、午後の前だった。
潮の匂いがする。
波の音がする。
砂が靴に入る。
いつもなら面倒なことが、今日は全部「生きてる」証拠に思えた。
「青い」
彼女が言った。
海は青かった。
空も青かった。
青が二つ重なって、その間に僕らがいる。
「天は僕の上にある」
彼女が、ぽつりと呟いた。
何かの詩みたいな言い方。
「海は僕の足にある」
続けて言って、彼女は笑った。
「なんか、言ってみたくなった」
「いいじゃん」
僕は言う。
「どこまでがどこからかって、分からないくらい広い」
彼女は海を見つめたまま頷いた。
「……ねえ」
「ん?」
「今日さ。僕ら、喧嘩しないでいられるかな」
彼女が急に不安そうに言う。
僕は笑ってしまった。
「最後の日に喧嘩したら最悪だね」
「最悪だよ。絶対やだ」
彼女は本気の顔をした。
その本気がかわいくて、胸がぎゅっとなる。
「じゃあ約束しよう」
僕は言う。
「喧嘩しそうになったら、キスして黙る」
彼女は一瞬固まって、それから耳まで赤くなった。
「……それ、ずるい」
「ずるくていい。今日くらい」
彼女は口を尖らせて、でも小さく頷いた。
僕らは海沿いを歩いた。
波が寄せて、引いていく。
波が過ぎるたび、地平が広がる。
「地平ってさ」
彼女が言う。
「広がるのに、届かないんだよね」
「うん」
「それ、恋愛っぽい」
「どこが」
「好きって言っても、全部は届かない。だから言い続ける」
彼女はさらっと言って、砂を蹴った。
僕はその言葉に、少しだけ息が詰まった。
彼女は普段、こういうことを言わない。
照れるから。
怖いから。
終わりが近いから、言える。
それが嬉しくて、同時に怖い。
終わりがあるから言える言葉なら、終わりがなければ言えなかったのか、と考えてしまうから。
「ねえ」
僕は言う。
「終わりがなくても、言えたと思う?」
彼女は、少しだけ考えてから答えた。
「……言えたと思いたい」
正直だ。
彼女はいつも、正直だ。
「でも、今日言えるなら、今日言う」
彼女は言った。
「言わないで後悔するの、嫌だし」
僕は頷いた。
「じゃあ、僕も言う」
「なに」
「好きだよ」
あまりにも直球すぎて、自分で笑いそうになる。
でも笑わない。笑ったら軽くなる。
彼女は、目を細めた。
水の青さに目を細めるみたいに。
「……私も」
それだけ言って、彼女は僕の手を握った。
強く。
喧嘩できないくらい強く。
3 今だけの救いなら
空の色が、少しずつ変になってきたのは、その後だった。
最初は夕焼けが早いだけだと思った。
でも違う。
色が違う。
赤が、濃すぎる。
赤の奥に黒が混じっている。
空が、燃えているみたいだ。
人々がざわめき始める。
スマホで空を撮る音が増える。
誰かが泣き始める。
「来た」
彼女が言った。
声が震えていないのが逆に怖い。
「……観測通り」
僕は空を見上げた。
太陽の輪郭が、どこか歪んで見える。
大きい。近い。近すぎる。
「怖い?」
僕が聞くと、彼女は一瞬だけ迷って、頷いた。
「怖い。でも……」
彼女は僕を見る。
「君がいるから、怖いままでも立っていられる」
僕は胸が熱くなった。
同時に、喉の奥が痛くなる。
泣きそうだ。
「じゃあ」
僕は冗談みたいに言う。
「怖い時は、喧嘩ルール適用ね」
彼女は笑った。
泣きそうな笑いだ。
「うん」
僕らは、キスをした。
海の匂いと、塩と、涙の味。
終わる世界の味。
キスを終えると、彼女が小さく言った。
「……今だけの救いなら」
「うん?」
「灰になって飛んでいけ、って言葉。なんか、昔から好きだった」
僕は彼女の言葉の意味を理解するのに少し時間がかかった。
「灰になって……飛ぶ?」
「うん。燃え尽きるなら、せめて飛びたい。落ちるんじゃなくて、飛んで消えたい」
彼女は空を見た。
空は赤い。赤いというより、命の色だ。
「……でも」
彼女が続ける。
「私、飛べない。灰にもなれない。怖いの、嫌だし」
「人間だもん」
僕が言うと、彼女は笑った。
「そう。人間。だから」
彼女は僕の頬に触れた。
「君の手が必要」
僕は頷いた。
「じゃあ、飛べない代わりに」
僕は言う。
「最後まで、歩こう。地面の上で。君が言ってたみたいに」
彼女の目が、少しだけ潤んだ。
「うん。戻ろう。地面に」
その言葉が、奇妙に強い意志に聞こえた。
終わる時こそ、地面に戻る。
空じゃなく、海でもなく、土の上へ。
それは、逃げじゃない。
ちゃんと“生き物”として終わる選択だ。
「……帰ろう」
僕が言うと、彼女は頷いた。
僕らは海辺を離れた。
背中で波の音が遠ざかる。
代わりに、街の音が近づく。
泣き声、叫び声、エンジンの音。
世界が壊れ始めた音。
4 Back to land
地面は、想像より冷たかった。
街の公園。
芝生の上に僕らは座った。
ブランケットを敷いて、その上に並んで座る。
空は赤いまま。
太陽は大きいまま。
でも、地面は地面だった。
土の匂い。草の匂い。
指で触れると、ちゃんと湿っている。
「……生きてる」
彼女が言った。
「地面、まだ生きてる」
「僕らも、まだ」
僕が言うと、彼女は頷いた。
「まだ」
その“まだ”が、悲しくて、強い。
周りには人がいた。
泣いている人、祈っている人、誰かに電話している人。
でも僕らは、他人じゃなく、互いを見る。
世界が終わるなら、世界に向かって何か言うより、君に言いたい。
「ねえ」
僕は言った。
「僕、君のこと救えないかもしれない」
彼女は首を振った。
「救わなくていい。救うって、間に合う時にすることだよ」
「じゃあ、何をすればいい?」
彼女は少し考えてから言った。
「届けて」
「……何を」
「輝いたもの」
彼女は言った。
「私の中に、輝いたものだけ残して」
その言い方が、怖い。
まるで自分が消える前提で話している。
でも、そうなのだ。消えるのだ。
僕らは消える。
「どうやって」
僕が聞くと、彼女は自分のノートを開いた。
そこには、朝からのメモが書いてある。
森の匂い。
葉の光。
波の音。
君の手の温度。
キスの味。
空の色。
「こうやって残す」
彼女は言う。
「残したら、届く。君の中に。私が消えても、君の中に、私の光が届く」
僕は息を呑んだ。
彼女は、最後まで理系だった。
最後まで、言葉で世界を掴もうとする。
「……僕も書く」
僕は言った。
彼女のノートの隣に、僕のスマホのメモ帳を開く。
僕が書けるのは、上手い言葉じゃない。
でも、書く。
届くように。
僕は、指が震えながら文字を打った。
君の笑い方。
君が困った時に眉が少し下がる癖。
君の手の冷たさ。
森で見上げた光。
海の青。
喧嘩しない約束。
泣きそうなキス。
彼女が、それを覗き込んで笑った。
「……下手」
「うるさい」
「でも、いい」
彼女は僕の肩に頭を預けた。
空が、さらに明るくなる。
赤じゃない。白い。
焼ける白。
「mortal sun」
彼女が小さく英語を呟いた。
それが何を意味するのか、僕は知らない。
でも、死すべき太陽、みたいな響きがある。
太陽さえ死ぬ。僕らも死ぬ。
そういう世界。
「怖い?」
僕がもう一度聞くと、彼女は頷いた。
「怖い。でも……もう、逃げない」
「うん」
僕は言う。
「逃げない」
空が、音を立てた気がした。
実際には音なんてしないかもしれない。
でも、空気が震えた。
耳の奥が痛くなった。
遠くで誰かが叫んだ。
彼女は僕の手を握る。
「ねえ」
彼女が言う。
「君に会えてよかった」
僕は、喉が詰まって言葉が出ない。
だから頷いた。
頷いて、彼女の手を握り返した。
「ねえ」
彼女が続ける。
「私たち、間違ってたこともあるよね」
「うん」
「傷つけたこともある」
「うん」
「でも」
彼女は僕を見る。
「最後の日に、君と一緒に森と海を見た。それだけで……私は救われた」
救い。
救いは、間に合う時にするものだと言った彼女が、救われたと言う。
それは、救いが“未来”じゃなく“今”にあるということだ。
「今だけの救い」
僕は呟いた。
彼女は頷く。
「うん。今だけの救い。でも、今だけでいい」
空が、さらに明るい。
目を開けていられないくらい。
皮膚が熱い。
髪が揺れる。風じゃない。熱が揺らす。
「……最後に、お願い」
彼女が言った。
「何でも」
僕が言うと、彼女は小さく笑った。
「名前、呼んで」
「……え」
「普段、あんまり呼ばないでしょ。照れるからって」
確かにそうだ。
僕は照れ屋で、彼女の名前を呼ぶのが苦手だった。
名前を呼ぶと、好きが露骨になるから。
でも今は最後だ。
露骨でもいい。
最後なら、全部いい。
僕は息を吸って、彼女の名前を呼んだ。
彼女は目を閉じた。
それだけで泣きそうな顔をした。
「もう一回」
「……もう一回?」
「うん」
僕はもう一度呼んだ。
二度目の方が、声が震えた。
震えたのを、彼女は嬉しそうに受け取った。
「……ありがとう」
彼女は言った。
「届いた」
「何が」
「光」
彼女の声は小さくて、でも確かだった。
空の白が、世界を塗りつぶしていく。
音が消える。匂いが消える。
自分の体の輪郭が曖昧になる。
怖い。
本当に怖い。
でも、彼女の手がある。
手の温度がある。
それだけで、立っていられる。
「Back to land」
僕は、意味も分からないまま呟いた。
彼女が笑った気がした。
「うん。戻ったね」
地面に。
土に。
草に。
人間に。
最後の瞬間。
彼女の声が、僕の耳元で囁いた。
「空が空であるように」
続きは聞き取れなかった。
でも、それでいい。
言葉は全部届かなくていい。
届いたものだけが、僕の中に残る。
最後に、彼女の手が少しだけ強く握り返してくれた。
それは、たぶん。
「生きて」という意味じゃなく。
「ありがとう」という意味だった。
エピローグ 輝いた光だけが
世界が終わったのかどうか。
それを誰が確認できるのか。
白の中で、僕は一瞬だけ、森の光を見た気がした。
葉の隙間に割れて落ちる光。
水玉模様。
彼女の横顔。
次に、海の青を見た気がした。
波が過ぎて広がる地平。
目を細める彼女。
塩の匂い。
最後に、彼女の声が聞こえた気がした。
「届いた」
それだけ。
たぶん、僕はもう言葉を返せなかった。
でも、返せなくてもいい。
輝いた光だけが、届けばいい。
君の元に。
僕の元に。
そして、もしも。
もしも、何かが次に生まれるなら。
それはきっと、地面からだ。
土の上からだ。
灰の上からだ。
EARTH BORN。
僕らは、地面に戻って、そこで終わった。
だから、そこで始まる。
君の光が、僕の中でまだ揺れている限り。
EARTH BORN Isuka(交嘴) @k-tsuruta
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