絶叫しながら引き金を引け! 極度のビビりな俺、異世界で寄生体に囲まれるも、恐怖で脳汁が出すぎて銃火器無双してしまう ~聖女を抱えて翔べ~

ベジタブル

​第1話:死にたくないので全力で引き金を絞ることにした

​「――あっ」

​ 深い霧の立ち込める森で、ボクはふと思い出した。

​ ここは前世でやり込んだ超高難易度サバイバルホラーRPG『バイオ・ファンタズム』の世界。

 しかもボクは、特殊部隊出身の超絶イケメン主人公「レオルヴィ」……じゃなくて。

​ 序盤で敵キャラに惨殺される、噛ませ犬の元教官・カイに転生してしまった。

​ そんなとんでもない事実が、驚くほどすんなりと頭に入ってきた。

 ……いや、すんなり入ってきちゃダメでしょ!?

​「……マズい。いや、マズすぎる。詰んだ。これ完全に詰んだよぉおおおおおッ!?」

​ ボクの原作知識が正しければ、このカイという男は、この後「寄生体に身体を乗っ取られて、クリーチャーの素体にされる」という、目も当てられない最悪のデッドエンドが約束されている。

​「ひぃっ、嫌だ! 死にたくない! 痛いのと怖いのは、絶対に、何が何でもお断りだぁあああッ!!」

​ 絶叫しながら、ボクは震える手で腰のホルスターを確認する。

 そこには、カイが独自に作り上げた「魔導銃」が収まっていた。

​(……そうだ、ボクには『原作知識』がある! これさえあれば、死亡フラグを根こそぎへし折って……ッ!)

​ そのためにはまず、目前の危機を回避しなければならない。

​「……ギ、ギチ、ギチギチ……」

​ 霧の向こうから、不快な音が響く。

 泥にまみれた衣服を纏い、目は濁り、口からは正体不明の触手が蠢いている村人が、鍬を振り上げてこちらを凝視していた。

​「ひぎゃあああああああッ!? 出たぁあああああッ!!」

​ ボクは情けない声を上げながら、反射的に魔導銃を抜き放った。

 怖い! 死ぬほど怖い! バイオは画面越しにプレイするから楽しいのであって、実写(しかも自分)でやるもんじゃないんだよぉおおッ!

​「くるな! あっちいけ! バカ! ボケ! おたんこなすぅうううッ!!」

​ 目をつむりそうになるのを必死で堪え、銃口を村人の頭部に向ける。

 

 ――見る前に翔べ、か。

​ かつてカイが教え子に説いた、格好いい名言が口を衝いて出た。

 でも今の心境を正確に翻訳するなら、「見る前に(怖すぎて頭が真っ白になったからとりあえず)翔べ(撃て)」である。

​ ズドォォォォォンッ!!

​ 魔石のエネルギーを火薬に変換する独自システムが火を噴き、金属弾が村人の頭をスイカのように粉砕した。

​「……は、はぁ、はぁ、はぁ……。た、倒した? ボク、倒したよね!?」

​ 腰が抜けて、その場にペタンと座り込む。

 銃声が森に響き渡る。……しまった、これじゃあ他の村人(ガナード)に位置を知らせるようなものじゃないか!

​(……落ち着け、冷静になろう。ボクは元特殊部隊員(の身体に入った一般人)だ。ポテンシャルだけは最強のはず……ッ!)

​ ステータスウィンドウを出そうとしたが、やはり出ない。

 この世界は、地道な『練度』がモノを言うリアル志向のクソゲー……もとい、神ゲーなのだ。

​ ふと、地面に転がった死体から、一通の手紙と写真がこぼれているのが見えた。

 そこに写っていたのは、宝石のように美しい瞳を持つ少女――聖女リディアーヌ。

​「……そうだ。今回の依頼任務ミッションは、彼女の救出。ここで逃げ出したら、どのみち教団に消される運命なんだっけ……」

​ ボクは絶望に顔を曇らせながら、立ち上がる。

 膝はまだガクガクと笑っているけれど、この「魔導銃」の反動だけは、驚くほど手に馴染んでいた。

​「やるしかない。リディアーヌを助けて、ついでにボクの生存ルートも確保する!」

​ そのためには――。

​「――泥臭く、死ぬ気で努力して、生き残らなきゃな……ッ!」

​ ボクは服の皺を伸ばし、震える手で次弾を装填した。

 

 村の奥から、ボクの絶叫に呼応するかのように、無数の足音が聞こえてくる。

 

(怖い……! 正直、今すぐ全速力で逃げ帰りたい……ッ!)

​ でも、ボクは知っている。

 この先に待ち受けるのは、ただのホラーじゃない。

 最高にエキサイティングで、そして残酷な、運命との戦いだということを。

​「見る前に翔べ、か。……全く、誰が言ったか知らないけど、無茶苦茶な理屈だよ……ッ!」

​ ボクは霧の向こう、狂気が渦巻く村の中心へと、半泣きになりながら一歩を踏み出した。

​【作者からの一言】

主人公のカイは、原作知識と特殊部隊の技術があるはずなのに、中身が極度のビビリなので常に絶叫しながら無双するという、一番タチの悪いスタイルで戦い抜きます!

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