手向け


私は、もうそこには居ません。


貴方は些かの寒さを感じたのでしょう。それは貴方に向かって吹いてきた風のせいでもあるし、貴方が抱える寂しさのせいでもあるでしょう。それでも、貴方は花を手向けてくれました。


貴方は些かの淋しさを感じたのでしょう。ただ、時が何もかもを癒すかのように、あの時の手向けの時より少しだけ悲しさが抜けたような気がします。それでも、貴方の淋しさは計り知れません。


貴方は些かの懐かしさを感じたのでしょう。生きている貴方の元には変化が絶えず起こっているのでしょうけれど、花の手向ける此処にはなんの変化も無い。貴方はその不変に、安らぎを感じるのでしょう。


貴方は些かの思いがあるのでしょう。もう何十年も前の出来事なのに、未だに貴方は寂しく思うでしょう。貴方の手の皺が多くなる度に、貴方はあの頃を懐かしむのでしょう。そして、貴方に贈ったブレスレットを見る度、貴方は私を、強く思うのでしょう。



貴方は、もう此処には来れないのでしょう。貴方が去年手向けてくれた花は風に靡いています。

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