ティーメイドとコーヒーメイド
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第0話
きらきらと輝く午後の光が窓から差し込む中、キッチンでは幼いメイドのトーヴェとヴィヴィカが目を輝かせて、先輩メイドであるシグネの働きを見つめていた。
彼女は卵と砂糖を適量鍋で混ぜ合わせると、それに牛乳と生クリームを入れ、その鍋ごと火にかけた。焦げ付かないように優しくかき混ぜ、わずかに煮立った鍋の中身を、別なボウルに移し替えた。
「氷の蕾よ、花ひらけ。冷やして、固めて、彼方の元へ」
祈るような小さな声だが、カウンター越しに見つめるトーヴェとヴィヴィカはしっかりとその呪文のような言葉を聞き逃さない。二人の瞳はしっかりとボウルを捉えていた。
ボウルは徐々に、その底部から真っ白な、雪のような氷が伸び、花のように鮮やかに咲いた。花はどんどん花弁を増やしていき、やがてボウルをすっぽりと包むほどの大きさにまで成長する。
「わっ……」
トーヴェが静かに感嘆の声をあげる。
ボウルを包んだ花は、今度は逆にボウルの熱に溶かされ、静かに消えていく。熱を奪われ、しっかりと冷やされたその中身は、美しいアイスクリームへと姿を変えていた。
氷の花。それが、シグネのレムナントである。
「はい、あとはこれを盛り付けたら、完成っ」
トーヴェとヴィヴィカと、それからいつの間にか集まっていたのか、彼女たちと同じくらいの年齢のメイドたちが、シグネに拍手を贈った。ちょっと照れくさそうにシグネははにかみ、アイスディッシャーを取り出した。
「ご主人様の分を盛って……それから、お嬢様たちの分」
冷気が白く立ち上がるアイスクリームを、手際よく用意した専用の器に盛り付ける。それを三つ分。溶かしたチョコレートを小さなミルクピッチャーに入れて、これも三つ用意する。ミントの葉っぱも、形の良いものを選んで、丸いアイスクリームの上に乗せた。
「それから今日は……」
視線を近くの壁にかけられた、小さな黒板に向けた。キッチンの中、何ヶ所かにかけられたそれには、珈琲豆と茶葉のその日の値段が書かれていた。
「お茶が少し安いみたいだから、コーヒーを淹れましょう。ヴィヴィカ、豆を挽いておいてくれる? トーヴェは、お湯を用意しておいて」
「はいっ」
「はい」
ヴィヴィカが元気よく、トーヴェが真面目な声で答える。
二人の返事を聞いてにっこりと笑うと、シグネはアイスクリームを真っ白な配膳車に乗せた。あとでコーヒーを取りに来るから、と言付けてキッチンを出ようとする。
「それじゃあ……そうだ」
配膳車を押してキッチンを出る前に、シグネは振り返って集まっていた幼いメイドたちを見た。
「残ったアイスクリームは、みんなで仲良く分けてね」
嬉しそうにはしゃぐ子供たちの声が、明るいキッチンに響いた。
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