花のように笑う君が好き
ルキ
一章:一本のガーベラ
春風に揺れる、点々と花咲く桜の木。
開花時期をとっくに過ぎ、周囲から見向きもされない木々は、今も風に吹かれて花を散らしていく。僕は足を止め、トートバッグから一眼レフカメラを取り出す。ファインダーを覗き、淡々とシャッターを切っていく。
きれいかどうかはどっちだって良い。ただそこにあるものを正しく写すことができれば、それだけで良いんだと思う。
写真を見返すと、やはり満開だった桜の方が見栄えは良く、桜といえばこっちを指すんだろう。
でも僕は、この咲き終えた桜の方が春を感じる。
始まりよりも終わりの方が、僕にとっては身近にあるからだろうか。
「また写真撮ってんの?」
ひょっこりと顔を覗かせながら、大学の同級生の中沢は首を傾げる。一瞥だけして、僕はまたカメラに目を向けた。
「なんで桜? もう散ってんのに」
「どっちでも良いんだよ、日課だから」
かまわずシャッターを切り続けていると、ふーんと興味なさそうに返される。
「てかさ、この後暇?」
「いや、まだ写真を撮る」
「じゃあ暇だな。この後飲みに行くから、真人も来いよ」
肩を組まれ、逃げ道を防がれた状態になり、僕は悩む素振りを見せる。正直なところ乗り気ではないけど、ここ最近はずっと誘いを断っていた。そもそも僕はそういう場があまり得意じゃなかった。
とはいえ、誘ってくれているのに毎回断るのもどうなのか、という罪悪感もある。だから僕は首を縦に振ってしまった。その選択が過ちだったとも気づかず。
指定された居酒屋に着き、そこでまず一つの違和感。妙に小綺麗な店で、カップルや女性客が多い。いつもなら大衆居酒屋なのに。そして席に着いてみれば、そこには同級生の二人と、見知らぬ女子が三人。思考が停止してしまいながらも、半ば強引に座らされ、その会は開催されてしまった。順番に自己紹介が進んでいく中で、ようやく僕は合コンに騙されて参加していることに気づいた。
最悪だ。早く帰りたい。だからといって、ここでつまらなさそうにするのは、前にいる女子たちに失礼かもしれない。はたから見れば楽しそうに見えるように振る舞い、中沢たちと一緒にこの場が盛り上がるよう努めた。
すると女子三人が突然、メガジョッキのハイボールを頼み、両手でやっと持てるサイズのジョッキが並べられる。
「え、いつも頼んでんの?」
「ううん、でも今日は飲んじゃおっかなーって」
「いいね、めっちゃ楽しんでんじゃん」
そんなわけないだろ、と突っ込みそうになるのをどうにか抑える。恋愛経験が全くない僕でさえ、この状況が完全に脈なしだということくらい分かる。合コンに来ているのに、わざわざ大量に酒を飲む必要がないからだ。
脈はなかったようだけど、合コン自体は盛り上がって一時間が経った頃、目の前の女子が少しふらふらしているのが視界に入る。どうやら他の二人と比べると酒に弱いようで、飲むペースも遅い。僕は一息つき、とんとんっと彼女の方のテーブルを指で叩いた。彼女がこちらを見てから、僕は彼女のジョッキへと手を伸ばした。
「これ、僕の方に足しても良い?」
「良いけど、なんで?」
「きついでしょ、これ全部飲むの」
そう聞くと彼女は頷き、けっきょく残り全部を僕のジョッキに注いで、空になったジョッキをテーブルの端に寄せた。
「ありがと」
「うん。代わりに何飲む? ウーロン茶とか?」
「じゃあ、それで」
僕は頷き、ついでにグラスが空になっていた他の人たちにも何を追加するか聞き、店員さんを呼んで一緒に注文した。
それから一時間後にお開きになり、ひとまず連絡先だけ交換して解散となった。駅まで一緒に向かう中、僕は本屋に用があるからと、適当な理由をつけてその場を抜け出した。さすがにもう疲れた、テンションを合わせるのは。
言った手前、一応本屋に寄っておくかと向かっていると、誰かに肩を叩かれる。振り返ると、そこには前の席に座っていた女子だった。確か名前は、ハルさんと言っていた。
「どうしたの?」
「いやその、改めてお礼を言おうと思って。気づいてくれてありがと」
「いいよ、あれくらい。それにあれ、みんなで合わせてメガ頼んでたんでしょ? 脈なしとかそんなんで」
「え、気づいてたの?」
「あんなのわかりやすいでしょ」
「そっか。でもちょっと後悔してる」
「酒弱いから?」
「それもそうだけど、真人くんともっと話したいなって思ったから」
上目でこっちを見上げ、緩やかに口角を上げる。じっと見てくるけど、僕は目をそらして再び足を進めた。
「そっか。じゃあ、これから本屋行くから」
「いいよ、ついていく」
そう言って彼女は僕の隣に並び、僕は小さく息を吐いては方向転換した。
「わかった。駅までね」
本屋まで一緒に行くのはさすがに億劫だと、仕方がなく出た言葉だったけど、彼女は嬉しそうに一段と笑みを深めた。その様子に罪悪感を抱いたこともあり、それから休日は何をしているのかとか、大学であったことなどちゃんと会話し、電車が違うから駅で別れることになった。
電車に乗ると、すぐにハルさんから連絡が来た。その通知だけを見て、僕は無視してスマホをポケットにしまう。帰ってからも返信するつもりはない。
最寄り駅に着いたけど、ちょっと寄り道して川が流れる橋に向かう。車が行き交う大きな橋で、中間地点には小さなスペースにベンチが設けられていた。
ベンチには座らず、柵にもたれ掛かりながら橋から身を乗り出し、煙草を取り出しライターで火をつける。電灯で微かに映る、黒い川の流れをじいっと眺める。
喫煙していいのかはわからないけど、深夜だから良いかといつも勝手に納得させている。ここで一本だけ吸って帰るのが、いつの間にか日課になっていた。
彼女に魅力がないとか、僕にとってタイプじゃないとか、そういうことではなかった。ただ僕自身、恋愛というものに興味がなかった。
これまでも告白されたり、そういう流れになったりして恋人がいたことはあるけど、長く続くことはなかった。
他のコミュニティができたり、純粋に気持ちが冷めてしまったり、弱い存在になって立場を失ったり。
もしくは、死んでしまったり。
心や体、どちらかが疎遠になってしまえば簡単に途切れてしまう。
それは恋人だけではなく、友達や家族、ペットも同じ。
形あるものには、いつか終わりが来る。
それなら最初から何もない方が良く、わざわざ築き上げることを億劫だと僕は感じているのかもしれない。
吸い殻を放り、川に呑まれるまでの行く末を見届ける。深く息を吐き、帰路に着いた。駅から徒歩十分。新築のマンションや一軒家が増えていく中、僕の住んでいる家は木造二階建ての古い家だった。
一階では明かりが灯り、僕は笑みを作りながら鍵を開けて中へと入った。
「ただいま、ばあちゃん」
「お帰りまこちゃん。遅かったけど、ご飯食べてきたの?」
「うん、ちょっと飲みに行ってた。でも食べるよ」
「無理しなくて良いのよ?」
「してないよ、お腹空いてきたから」
「わかった。準備してくるから手洗ってきてね」
はーいと返事をし、洗面所で手を洗ってから居間に行くとすでにおかずが並べられていた。僕はご飯とみそ汁をよそってから席に着く。
「おいしそう。いただきます」
そう言ってまずポテトサラダに手を伸ばす。うちのは少し変わっていて、リンゴやミカンがカットされて入っている。高校時代に作ってもらった弁当に入っていた時は笑われることもあったけど、何と言われようとこのポテトサラダが僕は好きだった。茶碗が空になっておかわりしに行くと、おばあちゃんは目を丸くしてこっちを見る。
「おかわりするの? いっぱい食べるわね~」
「うん、ばあちゃんのご飯おいしいから」
「それなら良かったわ」
目じりに皺を寄せニコニコしていて、僕も笑みを返す。煮物や焼き魚で二杯目もぺろりと食べ終え、お腹をさすりながら小さく息を吐く。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
食器を台所まで持っていき、スポンジに洗剤をつけて皿を洗っていく。皿洗いは僕がいつもしていて、元々じいちゃんの役目だったものを引き継いだ形だった。
じいちゃんは僕が高校一年生の時に亡くなった。それからばあちゃんと僕の二人暮らし。僕がいないと、ばあちゃんは一人になってしまう。だから僕はなるべく家にいるようにしていて、そうするべきだと思っている。
ばあちゃんは僕の大切な家族なんだから。
次の日、大学の講義は夕方からで、それまで予定もなく家にいた。散歩でもしてこようかとカメラをバッグに入れて一階に降りると、居間で手芸をしているばあちゃんの様子が見える。
「トートバッグ?」
「そう、使ってたものが古くなったから」
慣れた手つきで針を通しながら、すでに完成しているトートバッグに刺繍を施していく。ピンクや黄色、様々な色の花がキャンバス地に咲いていく。僕はカバンから一眼レフカメラを取り出して構える。勝手に撮っているけど、最早いつものことだからかばあちゃんは何も言わずに手元を動かしていた。
一区切りがついたようで手を止め、夕方だからとお茶菓子の準備を始めた。ばあちゃんが紅茶を入れ、僕はそれと一緒にお菓子もテーブルに運んでいく。ばあちゃんは紅茶を飲んでほっと一息つき、僕は小説を読みながら片手にお菓子を摘まむ。食事の音と外から微かに聞こえる雑音。じいちゃんがいた頃から変わらない静けさに心が落ち着く。
「友達と遊びに行ったりしなくて良いの? せっかく学生なのに」
「良いんだよ。僕は写真を撮ったり、この家にいるのが好きだから」
子どものころから何度も聞かれた言葉に、バームクーヘンを頬張りながら僕はいつもと同じように答える。
そもそも、僕に友達なんていない。
会っていれば話す同級生はいるけど、わざわざ休日まで遊ぶような仲ではなく、そんな関係は友達とは到底言えない。
幼い頃から、友達は大切にしなければいけないと教わる。
だからこそ、僕には友達なんて必要なかった。
のんびり過ごし、そろそろ大学に行く準備をしようと椅子から立ち上がる。それを皮きりにばあちゃんはテレビをつけた。いつも見ているサスペンスドラマが始まる時間だった。その前の時間はニュースが流れていて横目で見ていると、とあるニュースに目が留まる。
開花病の二十代男性が亡くなるまでのドキュメンタリーが今夜放送されるというもの。
すぐに僕は目をそらし、ばあちゃんに一言告げて家を後にした。
こういったドキュメンタリーは苦手なんだと思う。特にこういった、人の死を取り扱うような内容は。視聴率が取れるから番組としては正しいのだろうけど、僕からしてみればエンタメに消化し、軽く扱っているように感じていた。
そういった意味では、開花病はメディアにとって扱いやすいネタなんだと思う。
開花病を発症すると心臓辺りから花が咲いていき、最終的には亡くなってしまう。その期間は人それぞれで、花の大きさに比例しているらしい。不治の病で、今のところささやかな延命治療しか発見されていない。
きれいな花を咲かせ、息絶える。
他人事だから感動できる、狂った情景。
そう思わずにはいられなかった。
大学に着いて講義室に向かうと、すぐに僕は違和感に気づいた。この時間であればまばらに席が埋まっているはずなのに、誰一人として学生がいなかった。もしやとスマホでメールを確認すると、ため息を吐かずにはいられなかった。休講のお知らせが二時間前に着ていたようで、理由は講師の体調不良。もっと早く決められただろうと思いつつ、それでもメールを確認していたか怪しい。SNSのグループトークも開いてみればみんなで共有していた。これはグループトークを非通知にしていた、僕の落ち度でもあると思い直し踵を返した。
せっかく来たけどこのまま帰るかと外に出ると、聞き覚えのある声に呼び止められる。聞こえないふりをしようかと思ったけど、駆け足で寄ってきては肩を組まれ、中沢に捕まった。
「真人って今日一コマだけだよな? もしかして休講になったの気づかずに来た?」
「そうだけど」
「ついてねーな。てか、あれからあの子とどうなったんだよ」
「あの子って?」
わざととぼけて誤魔化そうとするけど、彼はお構いなしに一段と顔をニヤつかせる。
「そりゃあの後二人で帰った子に決まってんだろ」
「いや何もないけど」
「なんでだよ。可愛かったし、完全に脈ありな感じだったじゃん」
「良いんだよ僕は。興味ないし」
「くそー。俺は誰からも返信来ないってのによ」
「わかんないけど、そのうち良い人見つかるよ」
「はあ。俺の運命の人はどこにいるんだか」
眉間に皺を寄せたり感傷に浸るように目を細めて天を仰いだりと、忙しそうに表情を変える。相変わらずだなと苦笑しつつ、とある言葉が引っかかる。
運命、か。
たぶん、運命という言葉はあまり好きじゃない。そんな不確かで、思い込みでしか成り立たないと思う。そんなものに、僕はもう狂わされたくない。
でも、ふと思ってしまった。
こんな僕でも、運命の出会いがあれば変わることもあるんだろうかと。
いつもの如く飲みに誘われたけど、用があると適当に言っておいてその場を去った。そのまま帰ってしまっても良かったんだけど、せっかくだから遠回りして散歩でもすることにした。
もう入学して一年が経ったとはいえ、広大なキャンパスゆえに全てを把握しているわけではなかった。せっかくだからまだ行ったことがない方に行ってみようと足を進めていると、敷地の隅で一面に広がる花壇を見かける。広場のベンチ付近にも花壇はあるけど、ここは花としてより大切に育てているのが窺える。
せっかくだからと、僕はカメラを取り出しファインダーを覗く。花壇全体を撮ってから、一つ一つの花を収めていく。丁寧に花の名前が書かれた札が置かれていた。マリーゴールド、ロベリア、ゼラニウム。フレーム内が色鮮やかに染まっていく。
僕が写真を撮るのは、ただ記録するため。
中学生の時、祖父に一眼レフカメラをもらった。当時は写真に興味はなかったけど、気づけば日常的にカメラを持つようになっていた。正直、撮るのが楽しいとか写真が好きとかではないんだと思う。
それでもなぜか、僕は見た景色を記録することに必要性を感じていた。
ただ記録するだけのつもりだったのに、いつの間にか集中してしまった。
だから気づけなかった。
「花、好きなの?」
花やぐような声。突然声をかけられたから、つい振り向いてしまったこともあるんだろう。
でも、なぜか僕はシャッターを切っていた。
まるで、そこに一輪の花が咲いているかのように。
「花みたい」
つい思ったことが口から零れ、とっさに口元を抑える。そっと見やると、目を丸くしている彼女。当たり前だ、こんな変なことを言われれば。謝って早く逃げ出そうとするけど、その前に彼女がふふっと笑った。
「いっそ、花になれたら良いのにね」
小首を傾げ、目いっぱい上がった口角。可憐で、周囲を華やかにするような笑顔。
それなのに、どうしてだろう。
今にも花が散ってしまいそうに、僕の瞳には物悲しく映るのは。
「この花ね、サークルで育ててるの」
白のロングスカートを折りたたんで横にしゃがむ。優しく触れながら花に視線を落とし、僕もつられるように目が行ってしまう。
「園芸サークルですか?」
「そうそう。私もその一員」
「だからこんなにきれいなんですね」
感心するように頷きながら、僕は花を見ていく。さっきまでカメラ越しで見ていた時から分かってはいたけど、改めて大切に育てられているのが伝わってくる。花に関する知識がないぶん特に理由とかはなく、あくまで感覚ではあるけど。
「写真、見ても良い?」
一歩、僕の方に近づいてカメラを覗いてくる。僕はびくっと肩を震わせてしまいつつ、さりげなくほんの少し肩を離す。
「良いですけど、面白くはないですよ?」
「うん、見たい」
あまりにもキラキラとした目で見てくるものだから、その圧に負けて首を縦に振ってしまった。カメラ自体は僕が操作しながら見せていくと、彼女は前のめりになって感心するように「すごい」と声を漏らす。
「こんなにきれいに写真って撮れるんだね。うちのサークルとは大違い」
「園芸サークルで写真撮るんですか?」
「うん。といってもSNSやホームページに載せるようだけど。こんな風にきれいな写真を撮れたら、もっと見てもらえるのかな」
打って変わって眉間に皺を寄せ、うーんと唸り声を出しながら考え込む。
「この写真なら使っても良いですよ」
「え、良いの?」
「はい。ただ記録するために撮っているだけなので」
「やった、ありがとう。でも、記録ってどういうこと?」
「まあ、そういう趣味ってだけです」
後頭部をかきながら視線をそらして答える。記録が趣味ってなんだよと我ながら思う。「ふーん」と彼女はそらした視線の先まで顔を覗いてきた。ふわりと髪が揺れ、微かにだけど花のような香りがした気がして、とっさに僕は息を止めていた。
「変わってて面白いね」
「面白い?」
つい聞き返してしまうけど、彼女はゆるりと目を細めるだけで、また写真へと視線を戻した。僕も何も言わずに他の写真も見せていくと、彼女は突然ハッとしたように目を丸くし、「良いこと思いついた」と言葉を零す。その瞬間、なぜか僕は嫌な予感がしていた。
「もしよかったら、サークル用に花の写真を撮ってくれない?」
肩を捕まれながら、じっと目を見られる。お願いというには多少の強引さがあり、僕はたじろいでしまった。
「いや、それはちょっと」
「お願い、何でもお礼するから」
断ろうとしても彼女は一切引く様子を見せず、目をいつまでも見つめながら頼み込んでくる。
何でもお礼する。そんなことを女性が軽々しく口にするものじゃない。これでもし付け込まれでもしたらどうするつもりなのだろうか。世の中、良い人間の方が少ないというのに。
そこでふと、良いことを思いついた。
「じゃあ、あなたを撮っても良いですか?」
見つめ返し、彼女はやや目を震わせる。
冗談のようなものだった。こんなことを急に男から言われれば嫌に決まっていて、ていよく断ることができるだろうと確信していた。
でも彼女は、ふふっと柔らかく笑い。
「いいよ」
まるで些細なお願いを受けるようにそう言った。だから僕は一瞬理解ができず固まった。
「え、良いんですか?」
彼女も冗談を言ったのかと思って聞き返すも、すぐに首を縦に振ってくる。まさか承諾されるとは思いもせず、僕は何て言葉を返したら良いか悩んでいると、彼女は立ち上がり、一歩二歩と下がる。
くるりと回り、スカートが花開くように揺れる。バランスを取るように手を広げ、浮かれた少女のよう。
「その代わり、私も花みたいにきれいに撮ってね」
手を後ろで組み、前かがみでこっちを見つめてくる彼女。まるでドラマのワンシーンのように惹きつけられ、気づけばまたシャッターを切っていた。
冗談だけど、嘘ではなかった。
彼女を撮りたいという思いは確かにあった。でもそれがどうしてなのか、正直なところ僕自身も分かっていない。
誰が見ても可愛いと思うほど容姿は整っていて、守ってあげたくなるような華奢なスタイルに、絹のようにきれいな黒髪。
でも惹かれているのは、そういった見てくれではないのかもしれない。
花のような笑み?
それもあるんだろうけど、それだけではない気がする。
分からない。
いや、そんな得体の知れない何かゆえになんだろうか。
写真は記録するためのもの。
それはきっと同じ。
それでも自発的に撮ろうと思える何かが生まれたのは、これが初めてのことだった。
花のように笑う君が好き ルキ @_ruki
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