第3話 何を考えているのか分からない人です
「アントアーネ、大丈夫かい?顔色が悪いね。もしかして体調が悪いのかい?」
急に私の顔を覗き込んできたラドル様。
「いいえ、特に体調に問題はありませんわ。最近特に、落ち込むことも多いので、そのせいかもしれませんね」
唯一味方だと思っていたあなたに、裏切られてきたのだ。体調の一つや二つ壊しても、不思議ではない。
「そうだったのだね…アントアーネ、後半年で卒業だ。これからは今まで以上に、アントアーネの傍にいるよ。僕はアントアーネさえ傍にいてくれたら、それで幸せなのだから。周りがなんと言おうと、僕がアントアーネを守るからね」
「ラドル様の気持ちは嬉しいのですが、あなたはいずれ伯爵家を継ぐ人間です。貴族学院は、貴族同士の関係をより強固なものにするための、大切な場所です。どうか私の事は気にせず、今まで通り令息たちとの関係を築いて下さい」
どうせ私たちは、近いうちに婚約を解消するのだ。だから大嫌いな私の傍に、あえていてもらう必要もない。私もラドル様と一緒に、いたくないし。
「その様な事を気にしているのかい?大丈夫だよ、僕は既に主要な貴族令息たちとは、関係をしっかり築いているからね。今は君の事を、最優先に考えたいのだよ。アントアーネは僕の大切な人だからね。少しでも君が穏やかに過ごせるように、僕が傍で支えたいのだよ」
この人、どこまで演技派なのかしら?半年前の私なら、泣いて喜んでいた言葉だろう。でも本性を知ってしまった今は、恐怖でしかない。
裏であんな事をしているくせに、どうしてこんな事が言えるのだろう。この人を見ていると、どんどん人間が信用できなくなってくるのだ。
「そうそう、今週末は、僕の家の領地に行かないかい?1週間ほど貴族学院をお休みしてさ。自然豊かな領地で過ごせばきっと、アントアーネの気持ちも少しは安らぐと思うんだ。以前はよく行っていたのに、最近は全然行っていなかっただろう?」
ラドル様の領地…
確かに昔はよく領地に遊びに行っていた。自然豊かで、とても素敵な場所だった。あの頃はよかったな。ラドル様と一緒に過ごす時間は、本当に幸せで、楽しくてたまらなかった。
あの頃は本当に幸せだった。でも、そんな楽しい日々は、1年前に奪われたのだ。急に私の悪い噂が流れだした瞬間から。
「ラドル様、申し訳ございません。貴族学院卒業まで、あと半年。この半年で、色々とお勉強をしておきたい事があるのです。それにわざわざ貴族学院をお休みしなくても、よろしいかと。貴族学院を卒業したら、あなた様と結婚する予定ですし」
「アントアーネは本当に真面目だね。僕たちはずっと貴族学院を休むことなく、真面目に通って来たのだ。1週間くらい休んでも、問題はないよ。それに最後に思い出を作りたいと、長期で休む人たちも多いしね。領地の使用人たちも、君に会えるのを楽しみにしているのだし。それに学生の内じゃないと、こんな風に自由には過ごせないし。
学院を卒業したら、僕も本格的に伯爵を継ぐ準備を進めないといけない。2人でゆっくり過ごせる時間も、中々取れないかもしれないしね。君の両親には、僕から伝えておくから」
「両親には私から話をいたしますので。それでは私はこれで失礼いたします。送って下さり、ありがとうございました」
ちょうど我が家に着いたので、ラドル様にお礼を言い馬車から降りた。
「待って、せっかくだから、君の家に寄って行ってもいいかな?もう少しだけ、アントアーネと一緒にいたんだ。少しくらい、いいだろう?」
「いえ…その…」
「アントアーネ、おかえりなさい。ラドル様も一緒にいらしたのね。さあ、どうぞ中に入ってください」
タイミング悪く、お母様がやって来たのだ。ラドル様の姿を見たお母様が、笑顔で案内してしまった。結局ラドル様とお茶をする事に…
「アントアーネ、半年前に熱を出してから、なんだか少し変だよ。何かあったのかい?」
何かあった?そんなもの、自分の胸に手を当てて考えてみてください!そう言いたいが、そんな事は言えない。
「何でもありませんわ、色々とあって、少し疲れているだけですわ。どうか気にしないで下さい」
「精神的に、色々ときているのだね。可哀そうに…大丈夫だよ。僕が何とかするから…君を苦しめる悪い奴から、僕が守るよ。だからどうか、もう何も気にしなくてもいい。そうだ、もし学院に行くのが嫌なら、しばらく貴族学院はお休みすればいいよ。僕が伯爵と夫人に話してあげるよ」
「いえ、そこまでして頂かなくても、大丈夫ですわ。どうか私の事は、放っておいてくださいませ」
急に何を言いだすのかと思ったら。もしかして私が学院を休んでいる間に、もっとひどい噂を流そうと企んでいるのかしら?どうして私をそこまで嫌うのだろう。私が一体、何をしたというの?
もうこれ以上、我慢できない。
早急に手を打たないと。
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