推さない活

@kei_aohata

推さない活

「向いてないんだよな」

「なにが」

「令和の推し活」

「それ向いてるとか向いてないとかあんの?」

「あるよ。推し活ってようは”人”に対する応援衝動だろ。だから仕事でもプライベートでもある程度パーソナルな要素が開示されている方がより好きになれるし、そのための情報がネットには溢れてる。それを見越して推される側も露出を増やしたり、逆に都合の悪いところはうまく印象操作するわけ。良い面でも悪い面でも双方が同じ認識を持っているから相乗効果で盛り上がるんだよ」

「お前、普段からそんな小難しいこと考えてんの」

「うるせえな。だがそもそも俺がなにかにハマるときって、基本的にそのときのその人が好きなんだよ」

「大抵そうだろ」

「いや違くて。たとえばアイドルにハマるやつって、MV見て曲聴きまくって最終現場にたどりついて、うちわだのキンブレだのタオルだのを振り回すだろ?」

「なんか異種混合っぽいけど、まあ概ね」

「でも俺、そこには行き着かないんだよ」

「単純にそれほど好きじゃないんじゃね?」

「急に刺すなよ。本当に好きは好きなんだよ、だからちょっと前まではテレビも雑誌もSNSも、ちっこいネットニュースなんかも全部追っかけて、もちろん本人を間近で見られる機会があれば飛んでいったさ。でも悲しいかな、どんな場面を見ても自分が夢中になった姿じゃないなって思うんだよ」

「なるほど…?」

「全然わかってないだろ、お前。多分だけど、俺は画面のなかで歌ったり踊ったりしてるその様子が好きなだけなんだ。その人のデビュー当時になんかこれっぽっちも興味ないし、普段なにしてなに考えてるとかも別に知りたくない。むしろ何でもかんでもSNSに載っけんのやめてくれって言いたい。ましてや実物に会いたいとか、マジで小指の先ほども思ったことないんだよ」

「マジで、一ミリも?」

「一ミリも」

「そりゃあ、周りと比べちゃ張り合いもなくなるわけだ」

「だろ」

「まあでも恋愛に置き換えるなら、相手の元恋人がまったく気にならないみたいなもんだろ。そう考えたらいいんじゃね」

「そんな都合よくいかないもんで」

「なんだよ」

「デビュー当時とかオーディション映像とかに興味ないのと同じ理由で、一年後には存在すら忘れてることもある、新しいことやったりイメチェンした姿に冷めちゃうんだよな」

「お前は推し活向いてない」

「俺もそう思う」

「てか人間を好きになることに向いてない。お前はあれだ、なんか爬虫類とか飼えばいいんじゃね、それか亀」

「なんで爬虫類とか亀とかハードル高いのばっかりなんだよ」

「ほら、あいつらって長生きだから日々の変化が少ないだろ。だから一度好きになれればずーっと同じ姿を眺めてられるじゃん」

「俺、トカゲが実家の縁側の下にいるだけで逃げ出すし、地元の池にいた亀ひっくり返して遊んだことあるから罪悪感がやばいんですけど」

「もう諦めろ、ひとりで生きていけ」

「なんか格好いいこと言って突き放さないでくれよ」

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