アルメリア第二部カガリゼ旅行記〜世界最強の竜人に溺愛執着されてます。助けて!〜
雪明かり
序章 とんでもない祝時祭
第一話 二人だけの祝時祭
こちら『アルメリア王国物語』の第二部を『カガリゼ旅行記』という形で連載していくものとなります。序章は第一部と重複しておりますので既読の方は飛ばしてください(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
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「祝時祭?」
カガリが怪訝そうな声で繰り返す。
「そ、祝時祭。アルメリアの伝統で年が変わるちょっと前にっ!大切な人とご馳走を食べ、てっ!プレゼント交換とかっ、色々、なんか、してっ過ごす日だよっ!」
僕は彼に習った火おこしに苦戦しながら答えた。
「んなこた知ってるっつの。俺がどんだけ長いことアルメリアにいたと思ってんだよ」
そうだった。カガリは数千年前、僕と瓜二つのアゼルト陛下の時代より前からおおよそ千年アルメリアに滞在していたんだった。
「そんな昔からあったんだね祝時祭。……って、ダメ、もう付かない。僕に火起こしは無理だ」
僕は木の棒と板をほっぽり出して地面にひっくり返った。
「十年も我慢強く耐えて国支えてた奴とは思えねえ諦め様じゃねえか、ゼル。ほら、もっかいやってみろこの阿呆」
カガリが木の棒と板を再び差し出してくる。
「ちょっと休憩しようよ。そんなに焦ってもいいことないって。それに、僕が火を起こせなくたって『歴代最強の炎の王族』が真横に居るんだ。焚き火に困ることなんてないよ」
「お前なあ……旅に出て一層生意気になりやがってこんにゃろ……」
僕の名前はリゼルト・A・アルメリア。
『時の国』アルメリア王家最後の生き残り。『歴代最強の時の王族』。
この世界は五種族の力で回ってる。太陽の炎を宿す竜人族、水を愛する水人族、風に溶け噂を運ぶ霊人族、土に命を吹き込み操る獣人族。そして朝と夜を、全てを巡らせる時を司る仁族。
力を操れるのは極一部の『王族』で、彼、彼女らが先頭に立ち種族を総べてる。
今からおおよそ十年前。『時の王族』が治めた国『アルメリア』は元王弟だった僕の叔父上の手によって乗っ取られた。彼は『闇』の皇帝を手引きして、世界は一万何千年も前と同じように滅亡の危機に晒されてた。
その皇帝を討ち、闇に支配されてた北の大地を命溢れる巨木の森へ変えたのがこの冬の出来事。
コトを為せたのは今僕の隣で呆れ顔してるカガリが何千年も世界中を駆けずり回って南の全ての王族を集結させてくれたおかげだ。
真っ先に帝国軍に侵略されて孤軍奮闘してたアルメリアを救えたのも、彼の力あってのこと。感謝してもしたりない。
元々竜人族は縛りを嫌って世界を悠々と旅する種族だけど、僕もカガリも歴代最強の力を持つ。
初代アルメリア国王がかけていた封印が解けてアルメリア国民全員が微弱ながら時の力を扱えるようになった今、強すぎる力は無駄な争いを生む。ひと所に留まるのは良くない……なーんて建前で絶賛世界旅行中。
「おら、『僕に旅を教えて』つったのはどの口だ。駄々捏ねてねえでとっとと火起こしくらいできるようになりやがれこの阿呆。基礎中の基礎だぞ」
僕は渋々起き上がって板と棒を再び手に取った。両手で木の棒を回すように擦ってなんとか火種を作ろうとする。
「カガリがいるならいいじゃないか。火起こしより料理とか洗濯とかもっと色々さあ」
ブツクサ彼に向けて文句を言いながら手を動かすけど一向に煙のけの字も上がる気配がない。
と、その時。僕の手に大きく温かな手が重なった。背中にも温もりを感じる。僕はカガリに抱き込まれてた。顔に少し血が上る。
「ばあか。こうやって……」
カガリは手を添えたまま棒を持ち上げると小型ナイフを取り出して先を削りだした。
そして手を重ねたまま棒を擦る。そしたらすぐに小さな煙が上がり出した。
「先を尖らせて摩擦を強めんだよ」
「酷いじゃないか。先に教えてくれなきゃ分かる訳ないだろ」
僕がぶーたれると後から笑いを含んだ低くよく透る声が響いた。
「何から何まで教えるとは言ってないぜ?細々機転効かせられるクセに、んな簡単なこと思いつかねえでどうすんだよ。もし
僕は煙の上がった板の熱を移すべく細かな木屑を積んだ。ふーふーと息を吹きかけるとようやく木屑が火種になったのでその周囲に薪を組む。
「何もかも初めての初心者に意地悪だなあ。それに」
言葉を切って自分の頸を撫でる。正確にはそこについた『番の証』。カガリの歯型を。
「コレがある限り君が僕を見つけられないことなんてないんだから逸れる心配なんてないじゃないか」
そんなことを愚痴るとチョップが振り下ろされた。
「イテッ、暴力反対!」
振り向くとカガリが抱きしめてきた。
温かいなあ。彼の側は居心地がいい。
国を救う対価に僕を番にするなんて求められた時にはギョッとしたけど、今ならそんなに嫌じゃない。それどころか僕は完全にカガリに寄りかかってる。
まだ正式な番にはされてないらしいけどまあそれも受け入れてもいいかなって思うくらいには彼が好きだ。
……でも今はまだ、このふわふわした優しい気持ちを大事にしたい。
「もし俺が動けなくなったり、力使えねえ状況に追い込まれたらどうすんだ?凍えるぞ」
耳元で囁かれた言葉にぎくりとする。
そうだ。色々片が付いたからといって平和ボケしすぎだ。僕は。
事実、叔父上との戦いでカガリが倒れた時に僕は彼にほとんど何もできなかった。それどころかヘマを踏んで助け出された大失態を犯してるてる。
不安に襲われてカガリの上着をギュッと握った。
そんな僕の背中をカガリが優しく撫でてくれる。
「ま、そうそうねえけどな。もしもに備えるこた必要だっつー話。今まで力に頼りっぱで食事も洗濯もヘッタクソだが、んなもん後でいい」
確かに、最悪食事は保存食や山菜で賄ったりできるし、洗濯も身だしなみに気を使わなければ後回しでいい。
「今まで碌な移動さえしてこなかったんだ。旅で生き抜く最低限のラインは頭使って覚えてけ」
「うん……」
カガリの大きく温かい手が僕の髪を梳く。
「んで?祝時祭の話がなんだ?」
「あ」
忘れてた。
顔を上げるとカガリと目が合った。虹を帯びたどこまでも深く鮮やかな真紅の瞳。
「その……花が……」
「花?」
思わず見惚れてしどろもどろになる。
「風に……吹かれてる、花びらが……白くて、吹雪みたいだなって……冬を思い出したんだ。この十年……祝時祭なんてやってる余裕なかったから……」
「あー」
曖昧な僕の言葉も理解してくれたようでカガリはガシガシと頭を掻いた。
「この冬も、戦ったり草案作ったりなんだりしてたしな」
「うん……。その……来年はもう、僕は成人するし……」
その前にカガリとちょっとそれっぽくお祝いしたいな。
なんて言葉に出すのが恥ずかしくなってぽすんと彼の胸に顔を埋めた。
「やるか?祝時祭」
カガリから出てきた言葉に目をぱちくりさせる。
「いいの?」
思わずぱっと顔を上げた。すると想像以上に優しい目をした彼と視線が合い、顔が赤くなるのを感じた。
そもそも祝時祭にプレゼントやお祝いををねだったりするのは子供のすることだ。それ以外、一般的には、その、こ、恋人とするものだったりして……。
目を彷徨かせているとカガリにムニと頬を挟まれた。
「やりてえんだろ?プレゼント交換」
彼の顔が近づいてきてキュッと目を閉じる。すると額に柔らかい何かが触れた。
目を開けると愛し気に目を細めたカガリの顔がそこにあって、僕の気持ちはまたふわついた。
「うん……」
小さくこくりと頷くともう一度顔を引き寄せられて今度は優しく口付けされた。顔を挟む温かい手にうっとりしそうになるけど、まだ気恥ずかしさが勝って僕の顔にはますます血が上った。
側から見たらきっと耳まで赤くなって湯気が出てるに違いない。目を伏せて上げられない。
「……やべー顔」
「?なんか言った?」
「なんも言ってねえよ」
カガリがボソリと何か言った気がしたけど違ったらしい。
「つってもなんも用意がねえんだよな。街も遠いし……」
彼がまた頭を掻いてると僕は本来の目的をやっと思い出した。せっかく成人前最後の聖祝祭をするなら楽しみたいし、カガリにも楽しんで欲しい。
だから……
「ちょっと僕に考えがあるんだ」
そう言ってにっと笑った僕をカガリは怪訝そうな顔で見つめた。
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お読み下さりありがとうございます❀.(*´▽`*)❀.
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